Wild Weasel&Bombing-2
オマーン国内 10月10日 2003時
ヒラタとコガワが乗ったF-16CJとF/A-18Cは翼にAGM-154JSOWを2発ずつ搭載して越境した。既にレーダーサイトの多くが破壊されてしまっているため、敵機に出くわすことはなく、越境することが出来た。今度の標的はオマーン国内の廃空港で、そこから敵の戦闘機や爆撃機が飛来していることが確認されていたのだ。AS-37マーテル対レーダーミサイルを搭載したミラージュ2000Dが先鋒を努め、AGM-142ハブナップを翼に吊るしたF-16Eが飛行場施設の破壊を担当する。だが、敵の戦闘機はまだこちらに向かってきた。
MiG-23が爆発して墜落していく。僚機を失ったパイロットは慌てて反転して逃れようとしたが、ミサイルに捕まってしまい、空中で脱出した。この2機を撃墜したのは、F-15Cから発射されたAAM-4こと99式空対空誘導弾だ。後ろから付いてきていた3番機のミラージュ2000Cはドッグファイトに持ち込もうとアフターバーナーに点火し、猛追してきた。レーダー誘導ミサイルを使うには近づき過ぎたのだ。しかし、R-550マジック短射程空対空ミサイルを使うには遠い。しかし、今度は佐藤の僚機を務めているコルチャックはヘルメット照準装置越しに正対する敵機を睨んだ。小さなディスプレイに緑色の目標指示キューが現れ、ミラージュを追いかけ始めた。やがて、断続的な電子音が聞こえてきた。ロックオンだ。
「Fox2」
R-27T1が発射され、ミラージュを追いかけ始める。ロシア製の赤外線誘導式中射程空対空ミサイルは、西側の短射程空対空ミサイルと中射程空対空ミサイルの中間くらいの射程で、悪く言えば中途半端だが、良く言えばこの2つの隙間を埋めてくれる存在だ。ミラージュは急上昇、急下降、急旋回を繰り返しフレアをばら撒いて逃れようとする。しかし、ミサイルは騙されなかった。テールパイプの熱源を捉え、その中にそのまま飛び込んで爆発した。コックピットから小さな火の手が一瞬、上がってすぐに消えた。どうやら、パイロットは運良く脱出できたようだ。F-15Cがほぼレーダーだけを頼りにしているのに対して、Su-27やMiG-29はIRSTが搭載されているので、HMDとMFDに白黒の赤外線画像を投影し、敵を『目視』することが出来た。そのため、特に夜間でのドッグファイトに力を発揮した。
オマーン国内 10月10日 2012時
「ターゲットまで15マイル。目標を選定」
F-15Eの後席では、ケイシー・ロックウェルがMFDの周りのボタンをあちこち押して、画面をFLIR画像からGPSマップに切り替えた。
「ターゲットの座標を再度確認。オン、データリンク」
今回のターゲットは、コンクリートで強化された掩体壕と滑走路だ。これらは、つい3週間前までは存在していなかったものであり、アブダビやドバイを攻撃する攻撃機や戦闘機のために造られたことは明白だ。ロックウェルは4つのターゲットを選び出し、最後にもう一度、確認した。後ろから付いてきているアブダビ空軍のF-16とシュナイダーの乗るタイフーンには、DWS-39やAGM-142が搭載されている。
「発射10秒前・・・・3、2、1、発射!」
スタンドオフ兵器が次々に空中に放り出された。長射程の空対地ミサイルはロケットエンジンから真っ赤な炎を吹き上げ、指定された標的へと向かった。DWS-39はグライダーのように滑空し、内蔵されたGPSによる誘導で標的である滑走路を目指した。
DSW-39がオーバーヘッドアピローチするかのように滑走路の上を低空飛行すると、小爆弾をばら撒いた。アスファルトの表面で小さな爆発が無数に発生し、砂漠の上に造られた急ごしらえの滑走路が穴だらけになって使い物にならなくなった。敵はまだ対空兵器を配備していなかったのか、反撃は全く無かった。
アブダビ・オマーン国境付近 10月10日 2014時
地上部隊は小高い丘から、林のように立っている対空兵器を見つけた。SA-11やZSU-23-4などスタンダードなものから、最新型のSA-21まである。ここに戦闘機が突っ込んだら、忽ち蜂の巣にされてしまうだろう。アブダビ陸軍特殊部隊の隊長が、他の兵士たちに攻撃位置に着くように命じた。
ロス、バーク、クラークの3人はジャベリン対戦車ミサイルを担いで攻撃位置についた。
「こちら"タランチュラ"。攻撃準備よし」
『"タランチュラ"了解。攻撃30秒前・・・・・』
地上部隊が対戦車ミサイルやロケット砲を発射した直後、数発のミサイルが撃ち上げられた。どうやら、ほんの少しだけ遅かったらしい。しかし、殆どのランチャーはミサイルを発射する前に爆発し、使い物にならなくなった。
「くそっ、なんてこった。撃ち漏らした」
ロスはDPVに乗り込みながら、ミサイルが赤い軌跡を描きながら飛んで行くのを見て言った。
「戦闘機部隊に警告しろ。ミサイルの大群が飛んでいったとな」
バークは、飛んで行くミサイルを呆然と見上げながら、一人ごちた。




