越境攻撃-3
オマーン 国境警備隊駐屯地 10月10日 1610時
ツァハレムは間一髪の所で、飛んできたミサイルを避けた。ミサイルがアパッチから2メートルの所を掠めて行き、あと1秒ずれていたら自分たちは死んでいただろう。恐怖に駆られたベングリオンはIHADSSでミサイルが発射された位置を睨むと、機関砲を撃ち続けた。他のアパッチもそれに続いて、機関砲やロケットを発射する。
「おおっ、クソッタレ!なんてこった!」
ベングリオンは機関砲を撃ち続ける。ハイドラ70・ロケット弾の直撃を受けた倉庫が爆発し、SA-10やZSU-23が機関砲弾で穴だらけになる。駐機していたMi-8やKa-25が横倒しになり、ジープが爆発する。小さな駐屯地だったため、攻撃はものの10分で終わった。
「ふう、なんとか排除した。損害を確認・・・・」
ベングリオンは周囲を見回した。幸いにも、撃墜された僚機は無く、全機無事なようだ。だが、新手はすぐにやって来た。
『敵!2時方向!』
アブダビ空軍のパイロットが叫んだ。Mi-24が4機、真っ直ぐこちらへ向かってくる。ハインドはアパッチと比べて機動性は低いが、それでも強力な武装と強固な装甲でそれを補っている。
「スティンガーを使え!」
ベングリオンはMFDの兵装選択画面で『AIM92-STNG』を選び出した。スティンガーはAIM-9Xと違い、オフボアサイト機能が無くIHADSSでロックオンできないため、敵に対して正面を向ける必要がある。アパッチをハインドに正対させ、ロックオンした。
「Fox2!」
アブダビ空軍のアパッチはスティンガーを装備していないため、ヘルファイアでの攻撃となった。対戦車ミサイルでヘリを攻撃するのは奇妙に見えるが、ヘルファイアはレーザー誘導ができ、またTOWと違って飛翔速度も早いため、難しいことでは無かった。ハインドは対戦車ミサイルの直撃を受けて、爆発した。
オマーン 国境地帯 10月10日 1619時
攻撃ヘリが空域の安全を確保すると、地上部隊を載せたCV-22オスプレイやUH-60ブラックホークが着陸した。降り立った彼らの役目は巡航ミサイルの地上ランチャーや、その他攻撃目標をマーキングし、戦闘機部隊による空爆の誘導をすることだ。日が傾き始めているため、全員が夜間の戦闘に備えて暗視ゴーグルを装備している。
ロス、バーク、クラークはまずは地図と偵察衛星が撮影した画像を見た。これによると、オマーン国内にいくつかRK-55やCJ-10といった地上発射型巡航ミサイルが配備されているようだ。移動させられている可能性はあるが、破壊しておかなければならないことには変わりは無い。
「座標から考えたら、ここから北に15km程だな。少し手こずるかも・・・・」
ロスはCH-53からDPVが出てくるのを見た。助手席のサイドにはM2重機関銃が、後ろのガナー席の前にはMk-46グレネードランチャーが搭載されている。更に、後部の物入れになっているバッスルには、AT-4と予備弾薬も載せられている。
「こいつを使いな。長距離移動にはもってこいだろ」
ストークリー・ガードナーが予備の弾とガソリンの入ったジェリカンをDPVに載せ始めた。
「こんなもの、いつ持ってきたんだ?」
「昨日の定期便でだ。いずれは必要になると思ってさ」
「なるほど」
「じゃあ、俺達は一旦帰るからな。やばくなったら呼んでくれ」
CH-53Eが離陸し始めた。ブライアン・ニールセンとキャシー・ゲイツが去り際に手を降った。凄まじいダウンウォシュのため、少しの間、屈んでおかなければならなかった。
「さて、このターゲットでいいんだな?」
クラークが地図を広げた。肩からはグレネードランチャーを取り付けたFN-SCAR-Lを吊り下げている。
「そうだ。移動させられている可能性もあるが、ここを襲撃する。3方向から、つまり俺たちは南東側から、アブダビ陸軍部隊は南西側と西側から攻撃する。完全に逃げ道を塞いで、容赦なく叩き潰す。以上だ」
オマーン国内 10月10日 1624時
ミラージュ2000とF-16EがGBU-12を投下した。機体下に取り付けられたAN/AAQ-33スナイパーが目標であるスカッド・ミサイルにレーザーを照射し、爆弾を誘導する。爆弾のシーカー部分がレーザーを捉え、前後に取り付けられたカナードが動いて、正確にスカッドミサイルのランチャーへと突っ込んでいった。
次に狙われたのはガウリ2とDF-11だ。ミラージュ2000からアパシュ巡航ミサイルが発射され、次々と弾道ミサイルに命中し、破壊する。突然の攻撃にミサイル部隊は何の準備もできていなかった。強力な高性能爆薬がミサイルとランチャー、兵士もろともに吹き飛ばした。だが、奇妙なことに、攻撃されたのは主にオマーン軍施設だったにも関わらず、オマーン軍の兵士の死者はゼロだった。




