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越境攻撃-1

 オマーン上空 10月10日 1543時


 潜水艦が撃沈された頃、地上のミサイル基地を攻撃すべく戦闘機やヘリ、輸送機が越境しようとしていた。偵察衛星と諜報員から、オマーンの所々に巡航ミサイルや短距離弾道ミサイル基地が設営されていて、この基地からもミサイルが発射されていたという情報がもたらされていた。現在、オマーンとイエメンは無政府状態で、"アフダ・アル・ファジル"と呼ばれるテロリストの隠れ家となっていた。しばしば、サウジアラビアやイランがこの2カ国に空爆を行っていたが、効果はまるで現れていなかった。


 今回は、空挺部隊を使っての攻撃となるため、アブダビ空軍のC-130や"ウォーバーズ"のC-17が戦闘機の護衛を受けて飛行していた。オマーン軍は政府共々まともに機能していないため、戦闘機の護衛は不要かと思われていたが、そうは問屋が卸さなかった。


 オマーン上空 10月10日 1547時


「司令官、敵機の反応があります。オマーン空軍では無いようですが・・・・」

 原田がレーダースコープに映った輝点を見て、スタンリーの方を振り返った。オマーン空軍は、かつてはジャガー攻撃機を保有し、それらが退役した後は戦闘機不在が続いていた。それを補うために、ユーロファイター・タイフーンをイギリスから導入しようとしていたが、その後の政情不安により流れてしまった事がある。イギリスの不安は的中し、オマーンは激しい内戦状態となり、僅か3ヶ月で政権が倒れた後、事実上無政府状態となったが、その後、どのような状況になったか全く外に情報が出てこないが、テロリストや傭兵部隊の隠れ家になったのは想像に難くない。

「どれどれ・・・・3機のようだな。速度からすると、戦闘機だ。オマーン空軍は飛ばせる戦闘機を持っていないから、これはこの間、ユウを撃ち落とした連中の仲間かもしれない。戦闘機を向かわせろ」


 Su-27とF-15C、ミラージュ2000が2機、敵機を迎撃すべく、編隊から離れていった。レーダーで前方を捜索してみると、情報通り、3機の敵機が急接近している。


 接近中の3機はJF-17だった。この戦闘機は、中共が輸出用戦闘機として設計したものだが、採用したのはパキスタン空軍だけだった。だが、その後、FC-20としてJ-10の採用を始めると、JF-17はJ-7などと共に、中古市場へと流れていった。パキスタンはインドと対立をしている中国と同盟関係を結んでいる上に、近年はアフガニスタンから流入したタリバンなど、イスラム過激派に居場所を与え始めていることから、欧米諸国から急速に遠ざかっていった。アメリカはパキスタンへのF-16戦闘機の部品供給を停止し、更には経済制裁も行っている。


「いたぞ。12時方向に3機。IFF無反応。敵だ」

 コルチャックはR-77を選んだ。いちいちドッグファイトをして相手にしている余裕はない。

「ロックオン・・・・Fox1!」

 

 アブダビ空軍のミラージュがMICAを発射した。全部で飛んでいったミサイルは3発。その全てがJF-17に向けて飛んでいった。


 JF-17のパイロットはレーダーでロックされていることに気づくと、チャフを撒きながら旋回を始めた。敵機を探したが、どこにも見つからない。それでも、どんどんミサイルは接近してくる。アフターバーナーを全開にして、急上昇してみたが、全くもって無駄な抵抗で、エンジンのテールパイプを吹き飛ばされた。


 オマーン レーダーサイト 10月10日 1553時


 オマーンのレーダーサイトはつい4日前までは稼働していなかったが、ここに巣食った武装組織が一部を稼働させ始めたのだ。そのレーダーはUAEからやって来る飛行機の一部を捉えた。だが、それと同時にUAE空軍のF-16の編隊がAGM-88Eを次々と発射した。


 発射されたAGM-88Eは発信されているレーダー波を捉えると、マッハ2.9で飛んで行った。対地攻撃用のミサイルとしては、驚異的なスピードだ。旧式の対レーダーミサイル(HARM)はレーダーの発信源を一度見失うと、ロックオンが解除されてしまうが、この新型は一度発信源をロックオンすると、完全に記憶して、例えレーダーを切られたとしても正確に目標へ飛んで行く。


 最初に攻撃されたのは、空軍が使っていたアシュ・シヤフのレーダーサイトだ。レーダーにミサイルが次々と命中し、オマーンは空を見張る"目"を潰された。だが、このレーダーサイトにいたのはオマーン空軍の兵士ではなく、"赤い鳶"というテロ組織の戦闘員だった。彼らは爆発に巻き込まれ、その場にいた殆どが死傷した。レーダーサイトが壊滅したことにより、防空網に穴が空き、攻撃機が侵入する隙間が生まれた。

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