表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/71

Unti-Submarine Warfare-3

 ペルシャ湾 10月10日 1501時


 貨物船"レインボー・ドルフィン"号はマダガスカルから韓国へ向かっていた。この船には、マカダミアナッツ、カカオ豆、バナナといった様々な農作物が載せられていて、約80人の乗組員がいた。日はやや傾き始め、既に西日が眩しく感じる。最近、アラブ首長国連邦(UAE)が空爆に晒され、戦争状態になっていることから、船員たちの休養として計画していたドバイ寄港を急遽取り止めにしたのだ。ここペルシャ湾では、まだ戦争の気配はない。船員たちはこの日最後の作業をしながら、のんびりと過ごしていた。


「標的確認。1時方向の商船。1番、2番発射管に装填!潜望鏡上げ!」

潜水艦の船員が叫びながら慌ただしく走り回る。VA-111シクヴァル魚雷が発射管に2発、送り込まれた。この魚雷はロケットモーター推進式であることから、魚雷というよりはミサイルのような外見をしている。潜水艦による水上船に対する攻撃が行われるのは、1982年のフォークランド戦争以来のことだ。

「装填完了!標的を再度確認せよ!」

「標的確認!速度、約4ノット!面舵14度!前進微速!」

 潜望鏡には無防備に海上を漂う貨物船が見えた。これならば外しようがない。

「1番、2番注水!」

「注水開始!」

 発射管の中に海水が吸い込まれ、ゴボゴボという音を立てた。もし、軍艦が近くにいたのならば、魚雷攻撃が始まるということに気づいただろう。しかし、その半径780km以内には潜水艦と貨物船以外、何もいなかった。

「再度標的確認!方位修正・・・・発射!」

「発射!」


 魚雷発射管から魚雷が発射された。特急列車が通過しているような音を立てて、貨物船に向かっていく。


 レインボー・ドルフィン号の船員たちはあと1分ほどで凶悪な魚雷が接近していることには、当然のごとく気づいていなかった。当直にいる船員は周囲を見渡し、他の船や飛行機が近づいていないかどうか見ていた。勿論、周囲には何もなく、事故なんぞ起こりようが無い。しかし、微かに水中で動くものが見えたような気がした。サメか何かだろうと、それを見ていた水夫は思ったが、それは間違いだった。


 凄まじい衝撃が貨物船を揺さぶった。船長は初め、暗礁に乗り上げたかクジラにぶつかったかと思った。だが、海図によると、ここに暗礁は無いし、ソナーでクジラがいないことも確認していた。一体、何が起きたんだ?

「被害状況知らせ!」

 船長が船内放送で確認した

『船体後部に破損!浸水しています!』

「一体、何が起きた!?」

『不明です!まるで、何かが爆発したような・・・・』

 更なる爆発が船を揺さぶった。やがて、船体が傾いていく。

「総員、脱出!脱出!」


 ペルシャ湾 10月10日 1509時


 世界一周旅行のクルージングをしていた豪華客船"アトランティック・ダイヤモンド号"は大勢の金持ちを乗せ、ドバイへと向かっていたが戦争危険地域となったため、寄港が取りやめになった時は、多くの乗客たちからクレームが噴出した。船長は落ち着いてUAEが今、置かれている状況を説明すると、なんとか納得してくれたようだ。船長は、早くこんな危険な海域から早く逃げ出したかったが、そうはいかなかった。


 乗客であるフランスに籍を置いている多国籍企業の経営者が、水平線の向こうに何か光るものを見た。やがて、それはどんどん接近してくる。最初のうちは、それは飛行機かと思っていた。


 それは飛行機などではなく、SS-N-12"サンドボックス"ことP-500対艦ミサイルだった。3発のミサイルは一気に加速して豪華客船へと向かった。


 ペルシャ湾 10月10日 1519時


「クソッタレ!最悪だ!早く、救難ヘリを寄越してくれ!」

 炎上する貨物船を上空から見ていたバリー・ベックウィズが叫ぶ。

「おい、何か見つけたか!?」

「いや、だがミサイルが飛んできた方向はわかる。ここから7時の方向だ!そっちへ向かうか!?」

 スレーターは潜水艦の捜索を優先するか、それとも救難を優先するか決めかねていた。

「潜水艦を排除したいのはやまやまだが、放っておく訳にはいかんだろ!」

「畜生!畜生!」


 アル・ダフラ空軍基地 10月10日 1521時

 

 UH-60やCV-22、CH-53が次々と離陸した。だが、これだけでは到底足りるはずもなく、潜水艦攻撃を予定していたAS-532も急遽、現場へと向かった。

「現場はどうなっている?救助にはどれくらい向かった?」

 ニールセンが無線で状況を確認する。

『沿岸警備隊、海軍、空軍が一気に出動を始めました。貨物船も客船も撃沈されたので、とても間に合いません!』

「畜生!なんてこった!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ