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Cruise Missile

 ペルシャ湾 10月10日 0311時


「標的確認・・・最終安全装置解除。発射10秒前・・・・・4、3、2、1、発射!」

 潜水艦の中で、艦長と副長がキーを同時に回した。シュルシュルという音が鳴り、ミサイルが発射される。このオスカーⅡ級ミサイル原潜は瞬く間に世界に拡散した兵器のひとつで、巡航ミサイルを搭載できることから、特にテロリストの手に渡ると厄介なことになるため、ロシアやイスラエルは特殊部隊を派遣して破壊する、という事を頻繁に行っているが、原潜を発見して破壊するのは非常に難しい。特に、現在はこうした兵器を隠す場所は無限にあり、発見するのは困難だ。


 発射されたのは3-K10巡航ミサイルだ。このミサイルはNATOコードネームAS-15"ケント"として知られるKh-55"グラニート"の潜水艦発射型だ。ミサイルは全部で12発。慣性誘導で海上を飛び、地上上空に到達すると予め入力されたデータを元にする地形画像誘導に切り替わった。


 アラブ首長国連邦 シャルージャ首長国 10月10日 0321時


 攻撃が始まったときは深夜だったので、最初の1発目が着弾するまで、誰もそれに気付かなかった。ミサイルはまず、レイヤ発電所とワジット発電所に命中し、市内一帯に停電を起こした。そのせいで、クウェート病院やアル・カシミ病院に入院していた人工呼吸器を付けていた患者が死亡した。また、ガルフ・メディカル大学やシャルージャ国際空港にも着弾し、多くの犠牲者が出た。更に、ミサイルは多くの高層マンションを直撃し、一般市民が大勢死傷した。


 アラブ首長国連邦 ドバイ共和国 10月10日 0325時


 ドバイにもミサイルが襲来した。パーム・シュメイラにミサイルが着弾し、また、エミレーツ・グランドホテルやドバイ・モールなども直撃を受け、特にホテルには多くの外国人観光客が宿泊していたことから、犠牲者はうなぎ登りになった。


 アル・ダフラ空軍基地 10月10日 0341時


 突然、空襲警報が鳴り響き、佐藤は飛び起きた。眼鏡を掴み、耐Gスーツを探したが、ここが救護室だということに気がついた。そういえば、今日、医者のゴーサインが出るまで飛行停止中だっけ。そう思った瞬間、ベッドから派手に転げ落ちてしまった。クソッ。


 F/A-18とF-16、ユーロファイターがエンジンを回し始めた。ミサイルと燃料、増槽は既に搭載されており、あとはエンジンを回して飛び上がるだけだった。F-15EとSu-27、MiG-29はすぐにミサイルの搭載と燃料の補給が始められた。


『こちらウォーバード2、離陸許可を願う』

「ウォーバード隊、離陸を許可します。ご武運を」

 最初にホーネットとファイティング・ファルコン。続いて、ユーロファイターが離陸する。フランカーやストライクイーグルは丁度、エンジンをスタートさせ始めたところだった。


「あと3時間、我慢していればすぐに飛べたのですよ。それなのに・・・・」

 佐藤が転げ落ちた時の音を聞いて、原田はパッと目を覚ました。すぐに軍医を呼ぶと、後ろからベアハッグをして患者が逃げ出さないように拘束していた。幸い、何事もなかったので、夜明け過ぎにはフライトに参加して良いと軍医に言われた。

「すまん。どうも条件反射で飛び起きてしまったようだ」

「それにしても、サイレンで起きたとはいえ、よくそんなに反射的に動けるわね・・・」

 様子を見に来たリー・ミンは呆れ顔だ。

「空自で何年もアラート待機をしていれば、嫌でもこうなるさ。考えるよりも、先に体が反応する。ところで、何事なんだ」

「ドバイとシャルージャが空爆されたの。爆撃機じゃないみたいだけど・・・・」

「巡航ミサイルか。だとしたら、厄介だな。タウラスやハブナップなら戦闘機から発射できるし、トマホークなら海上、潜水艦、地上のどこからでも攻撃できる」

「よう、飛びたくて暴れたのか?」ロスが様子を見にやって来た。

「サイレンで飛び起きただけだよ。条件反射ってやつだな」

「やれやれ」

「もう大丈夫だ。逃げ出したりはしないから、3人とも持ち場に戻ってくれ」


 シャルージャ共和国上空 10月10日 0402時


 シャルージャの上空を"ウォーバーズ"のF/A-18Cとユーロファイターが偵察飛行している。F-16は少し高空から援護している。

「これは酷い。何もかもメチャクチャだ」

 シュナイダーが下の様子を見て言った。あちこちで火の手が上がり、建物は徹底的に破壊されている。

『SHARPを搭載していればよかったが、そんな時間がなかったのが残念だ・・・・』

 コガワは少し機体を傾けて下の様子を見た。通りは瓦礫で埋め尽くされ、消防車や救急車は移動するのに苦労しているようだ。

「一体、どこから飛んできたんだ?爆撃機でないとしたら・・・」

『だとしたら、地上発射ランチャーか潜水艦だな。どっちも片付けるのが難しい』

「くそう。どうする?」

『一度引き上げよう。今後の事は司令官の指示次第だな』

「了解だ。RTB」

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