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Abu Dhabi Flag Day2-2

 アラビア湾上空 10月10日 0907時


 演習は一時中断となった。実弾射撃訓練が国籍不明機の監視という思わぬ実戦になってしまった。標的用の無人機は安全のため、自爆・墜落させられた。アブダビ空軍と傭兵部隊の戦闘機が当該空域に向かう。暫くすると、レーダースコープに反応が出た。IFFとトランスポンダーを調べてみたが、全く反応が無い。民間機でも無さそうだ。

「こちらウォーバード1、国籍不明機(アンノウン)2機確認。IFFには反応無し。トランスポンダーも出していないみたいだ。何を考えているんだ、こいつは?」

『ウォーバード1、目視できますか?』

原田が訊く。

「ネガティブ。だが、あと2分で目視(タリホー)できるはずだ。反応によるとこいつはデカイな・・・・」


 暫く飛んでいると、不明機らしきものが見えてきた。佐藤の僚機の位置にはアル=カディーリのF-16Eがいる。そして、見えた。航空自衛官だった時にたまに目撃したIl-20"メイ"のようだ。しかし、なぜこんな所に?ロシア空軍がこんな所で何をしているのだろう?もう1機はIl-38だ。一体、何が起きているんだ?

「あー、あー。飛行中のロシア機へ。こちらはアブダビ空軍だ。ここでは実弾射撃演習が行われており、大変危険である。よって、すぐに退去することを勧告する。繰り返す・・・・」

アル=カディーリが警告を開始した。しかし、当然のごとくそのロシア機のパイロットは無視して、返事もしない。

 佐藤は注意深くロシア機を観察した。確かに、ロシア軍の国籍マークと機体ナンバーが描かれている。

『ちょっとビビらせていいか?俺がやってみても?』

 コルチャックが提案した。確かに、フランカーが現れてロシア語で警告されたら、このロシア空軍のパイロットは驚くに違いない。

 アル=カディーリが司令部に何事か訊ねた。そして、スタンリーとも交信する。やがて、コルチャックの提案は通ったらしい。

『(国籍不明機へ、こちらウォーバード。民間軍事会社だ。そちらの所属と目的を明らかにせよ)』

 無言。

『おいおい、何だこいつ。完全無視かよ。警告射撃をしてもいいか?』

 シュナイダーが提案する。しかし、ふと、2つの小さな高速で飛ぶ飛行機が彼らを後ろから追い越していく。その飛行機は扁平で全体的に角ばっており、また、翼の下に何もぶら下げていない。その姿を見て、その場にいたパイロットたちは愕然となった。


『Su-57だ!Su-57を2機確認!』

 その言葉にスタンリーは愕然となった。まさか、聞き間違いに違いない。

「ウォーバード2、もう一度言ってくれ。本当にSu-57なのか!?」

『間違いない!Su-57だ!クソッ!反転している!なんてこった!ウォーバード1が狙われている!クソッ、ユウ、早く逃げろ・・・・』

 やや間があって雑音。

「ウォーバード2、どうなったんだ!?報告せよ!」

『ウォーバード1が敵機に追われている・・・・クソッ、奴がミサイルを発射した!クソッタレ!逃げるんだ!』

 再び雑音。

『ゴッドアイ!緊急事態だ!ウォーバード1が撃たれた!繰り返す!ウォーバード1が被弾!』


 アラビア湾上空 10月10日 0909時


 佐藤は必死でF-15を飛ばした。エンジンを全開にして、最大推力で逃げる。しかし、Su-57はどこまでも食らいついてくる。やがて、レーダー照射の警告音はロックされた時の音に変わり、すぐにミサイルアラートが鳴った。佐藤は機体を最大限のスピードで最高の機動を発揮させて逃げようとした。チャフとフレアもすぐにばら撒く。しかし、数秒後、凄まじい衝撃が全身を駆け抜けた。様々な警告音がコックピットに鳴り響く。

「くそっ・・・エンジンがイカれた。フラップもラダーも反応しない。計器も死んでる」

『脱出しろ、ウォーバード1!脱出するんだ!』

 佐藤は後ろを見た。機体の所々が燃え、燃料が漏れている。引火して爆発するのは時間の問題だ。諦めてインジェクション・レバーを引いた。凄まじい衝撃とともに、ロケットモーターの付いた椅子ごと外へ放り出された。パラシュートが開き、ふわふわと空中を漂う。


「誰かパラシュートを確認したか?誰か奴の脱出を見たか?」

『こちらウォーバード6。待ってくれ・・・・シュート確認!奴はまだ生きている!急いでオスプレイとアパッチをこっちに飛ばしてくれ!それから・・・・くそう!』

「どうした!?」

『今度はUAE空軍のミラージュとF-16が撃たれた!あっ、まただ!奴め、撃ち落としてやる!』

『待て・・・・・奴ら、撤退していくぞ。どういうことだ?』

 カジンスキーが敵の様子を見て言う。確かに、先程まで一気に攻勢を仕掛けていた割には、敵はあっさりと空域から離れていく。

「いいからユウの救出を援護しろ!急ぐんだ!」

 スタンリーは怒りをぶちまけたが、無線を切ってすぐにそれを後悔した。ヘリがやって来るまで、自分にもどうすることもできない。おまけに、背後の席で戦況をモニターしている原田は自分以上に気が気でない状態のはずだ。

尚、本当はキリル文字で警告のセリフを書き、尚且つカタカナで読みのルビをふりたかったのですが断念しましたorz

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