2 Night(1)
藤野と別れて塾で授業を受けていたが、俺は落ち着かなかった。
周りには何人か、昨日の通夜に来た奴らがいる。本当はあいつ生きてるんだぜ、と言ったらどうなるのだろうか。正確には死んでいるわけだが。
何より気になるのは、藤野はどう過ごしているのかだ。
気色悪い、とさっき笑い飛ばしたのが嘘になるほど、あまりに気がかりで、帰って飯を食っていても上の空だった。あいつに飯は要るのだろうか、とか。
そんな心配を払拭するべく、次の日俺は朝イチで河原に向かった。 ドキドキしながら草むらをかき分け・・・るまでもなく、藤野は見通しの良い更地のところで見つかった。ちょっと幸せそうに寝ていた。
息をしているのをちゃんと確認してから、俺は藤野を蹴った。
「っだ!」
「オハヨウさん」
「・・・死人を手荒に扱うなよぉ」
不満を垂れながら、藤野は体を起こした。頭をガシガシかいて、俺を見上げる。
「こんなとこで寝てたら、誰かに見つかるだろうが」
「でもまだ早いしさ。え、6時? さっき寝たばっかりに思える」
「ふうん・・・夜は何してたんだ」
「歌ってたよ」
「歌ってたぁ?」
「遭難した人が歌って救助を待った、とかあるじゃん。いや関係はないけど。好きだったアジカンとかミスチルとか、飽きたら学校で習ったやつとか、君が代とか、飽きたら童謡とか・・・。もちろん、聞かれないようには気をつけたからな」
・・・つまりあれだな。寂しかったんだな。
「だったらいいけど」
「ああ。いやー・・・つい、川口のこととか思い出してさ、正直。元気にしてるのかなあ」
いや、おととい会ってるだろ。
「マナホな、お前の通夜にちゃんと来てたぞ」
「え、マジで?」
「うん。泣いてた。良い奴だったのに・・・って」
「そうなんだ・・・くわー、勿体ねー!なんで死んだんだろ、俺っ」
「だからマナホもな、わりとお前を嫌ってなかったみたいで・・・うっ、その目は」
「真田って、前は、川口さんって呼んでなかったっけ」
――そうだっけか?
「てか、おとといもそうだった気がするんだけど。一体いつの間にそんなにお近づきになってやがる」
-つづく-