表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

1 Undead(2)

 車の行きかう道路の向こう側には、公民館のような黒い大きな建物があった。ふいに藤野は、その建物から人が数人出てくるのを見た。先頭の3人は、見覚えのある人たちだった。自分の両親と兄貴が、それぞれ胸に小さな箱を抱え、晴れ晴れとしたような、泣き濡れたような、みな同じ表情で歩いていく。

 想像通り、とまではいかないが、十分に悟った。

(葬式が・・・終わってる・・・?)

 じゃあ俺は誰なんだろう、と藤野は思った。



「全くさ、走馬灯にもお目にかかれなかったんだぜ。あっけなかったなぁ」

「情緒的な説明のあとに、それかい」

 俺と藤野は町の小さな図書館に移動し、その隅で医学やUMAの本をめくりながら話していた。

「俺が思うに、お前はゾンビに近いんじゃないかな。葬式とのタイミングがまだ全然説明つかないけど・・・」

「棺おけに入ったの、本当は俺じゃなかったりして」

「あー、間違われて葬られて、それでこの世に恨みが残った・・・って、ないない」

 この現代でそうそう死体を間違うものか。

 それに変な言い方だが、藤野はかなりきれいだった。

「多分、死に方が良かったんだろうな」

「そっか、ボロボログチャグチャで復活しなくて良かったー」

「いや、でもだからっていきなり待ち伏せするのはやめろよな・・・」

「ははは、ごめん悪かった」

 藤野に声をかけられたとき、俺は塾へ行く途中だった。家を出てすぐの角でわっとおどかされ、俺はびっくりしつつも、しばらく付き合うと答えたのだった。早めに行って自習するつもりでいたから良かったものの、あと30分もすれば授業が始まってしまう。今日は休めない。

「・・・俺、あと30分で行くわ。明日なら学校も休みだし出歩けるんだけど、待てるか?」

 それとも、俺のいない間に死んでしまうのだろうか。不安に思いながら尋ねたのに、藤野はきょとんとして言った。

「あ、そっか。俺、真田と一夜を共にする気でいた」

「阿呆。あと、その言い方・・・気色悪い」

「あんまり親身になってくれるからつい。でもどこにいればいいかなあ」

「河原の橋の下だったら、人目につかないかも。草むらだけどな。野良猫に気をつけろよ」

 俺の提案に、藤野は少し考えたあと、うなずいた。

「分かった。また明日な」


-つづく-

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ