1 Undead (1)
・ゾンビというタイトルなのでジャンルはホラーですが、あんまり、というか全く怖くありません。
期待しちゃってる人は読まないでください。
・生死に関する言葉が軽ーくゆるーく出てきますが、
決して軽く考えているわけではありません。
「ふ、藤野・・・お前、死んだだろ・・・?」
やっとで声を絞り出し、俺は藤野を指差した。我ながら、逃げ出さないとは見上げた根性である。
「俺は確かに昨日、通夜に行ったはず・・・」
「ああ、1回死んだんだけど、」
藤野はそこで言葉を切り、にやり、と微笑んだ。
おい不気味だぞ。
「――生き返った」
「はあ?」
これまで幾多と、15年という短い人生ながら色々な経験をしてきた。
だが、事故で死んだ友人に翌日出くわすのは初めてだ。
自分の説明をする前に、藤野は言った。
「真田ってさ、幽霊信じてないって言ってたよな」
「ああ、騒ぎ立てるほどのもんじゃないとは言った。信じてない、じゃなくて」
あれは中学の野外活動だったか。夜になってお化けだ何だとワイワイやってるものだから、「それはお化けに失礼だと思うけど」と俺がぽつりと言ったら、何故かえらくウケた。というか俺が怖がられた。そのことを言っているらしい。
「周り、本当に墓地だったし、うるさくしちゃダメだろ」
「それだよ、その冷静な客観性だよ。だから真田に会いに来たんだ」
「・・・全然分からない。大体お前、幽霊には見えないよ?『生き返った』ってどういうことだよ」
俺が訊くと藤野は、自分でも信じがたいんだけど、と言って話し始めた。
昨日の今頃、藤野はトラックに轢かれて死んだ。急に飛び出した藤野も悪かったのだが、バンパーに吹っ飛ばされて、頭を打って即死。あっという間だった。
その後の取調べやら葬式やらについては、全く覚えていないという。
しかし、ついさっきになって、突然目を覚ました。体が重くだるく、なんとなく肌寒い。カラオケ店に居過ぎたようなそんな感覚に呻いたあと、辺りを見回すと、そこは薄暗くじめじめした路地裏だった。
低めのビルに挟まれた、雑草と換気扇がひしめくアスファルトに藤野は倒れていた。死んだときと同じ制服を着て、濁った水たまりに足を突っ込んでいた。袖から伸びる腕はいつもより血色が悪い。とりあえずここがどこなのかを知りたくて、藤野はゆっくりと起き上がった。
細く差し込む夕日に誘われるようにして路地を抜けると、大通りに出た。近所なのかもしれないが、来たことはない。
-つづく-