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70.群れをなす魔物


 前方に、影が見えた。

靄の奥から浮かび上がる輪郭。


最初は、さっきの灰色の魔物かと思った。

だが──違う。


デカい。

体躯が一回り以上ある。人間の一・五倍はあるだろう。


そして目が違う。

虚ろじゃない。

血走っている。


明確な意思を持った、獣の目だ。


「剛くん、まずいよ!」

リリィが叫んだ。


「でっかいのがいる! しかも後ろにさっきのが──いっぱい!」


デカい奴の背後に、影が蠢いていた。


「あー、あー、あー……」


虚ろな目の魔物たち。

十体以上。


だが、さっきとは一点だけ違う。


全員の首から、光る糸が伸びていた。

その糸の束を──デカい奴が握っている。


まるで、飼い主だ。

操り人形の糸を握る、主人。


デカい奴の血走った目が、ゆっくりとこちらを見回した。

品定めするような視線。


獲物を選ぶような、冷たい目。


その視線が──止まった。

サラの位置で。


「っ……」


サラが息を呑む気配がした。


レオンハルトが一歩前に出た。

銀の盾が、サラを覆い隠すように構えられる。

視線を遮った。


「警戒を怠るな」


低く、鋭い声。

全員が頷いた。


空気が張り詰める。


「──来るぞ!」


レオンハルトが叫んだ瞬間だった。


デカい奴が腕を上げた。

そして──こちらを指差す。


「あ」


たった一言。

それが合図だった。


虚ろな魔物たちが、一斉に飛びかかってきた。


「あー、あー」


壊れた人形みたいな声が重なり合う。

十体以上が、波のように押し寄せる。


「ブレス・オブ・ライト!」

サラが杖を掲げた。


淡い光が全員を包み、体が軽くなる。


「アイシクルバインド!」

ジャックが地面に手をかざした。


氷が大地から隆起し、魔物たちの足を絡め取る。

バキバキと音を立てて、動きが止まった。


フィオラが踏み込んだ。

剣に冷気を纏わせ、横薙ぎの一閃──。


だが。


先頭の魔物が、上体を反らした。

刃が空を切る。


「!」


フィオラの目が見開かれた。


その刹那、魔物の口が開いた。

青白い光が喉の奥で渦巻く。


コオオオオォォォ


光線が放たれた。

至近距離。


「うっ……!」


フィオラが咄嗟に剣を盾にした。

だが、衝撃を殺しきれない。

体が後方へ弾き飛ばされる。


「フィオラ!」

レオンハルトが叫んだ。


盾が光を放つ。

レオンハルトが突進した。


ドンッッ!!


光の盾が、魔法の力で膨張する。

巨大な光の壁となり、魔物たちを捉えた。


バキン!


足元の氷が砕け散る。

魔物たちが後方へ激しく弾き飛ばされた。

地面を転がり、靄の中に消えていく。


「フィオラ、無事か!」

レオンハルトが駆け寄る。


「……大丈夫」

フィオラが立ち上がった。


声は平静だが、鼻から一筋、血が流れていた。


「少し、目が回る程度です」


「回復するね!」

サラが杖を向けた。


呪文が紡がれ、緑色の光がフィオラを包む。

出血が止まり、顔色が戻っていく。


「こいつら、身体強化受けてるっすね!」

ジャックが叫んだ。

短剣を構え、周囲を警戒している。


「ああ、しかも強力だ」

レオンハルトが頷いた。

盾を構え直す。


「また来るよ!」

リリィの声。


弾き飛ばされた魔物たちが、体勢を立て直していた。

靄の中から、再び影が迫ってくる。


「あー、あー」

壊れた声が重なる。


魔物たちが襲いかかった。


レオンハルトが正面で受け止める。

三体が同時に飛びかかる。


盾で弾き、上方へ跳ね上げた。

宙を舞う魔物たち。


その瞬間、レオンハルトの体が回転した。

銀の剣が弧を描く。


シュパッ、シュパッ、シュパッ!


三つの頭が、同時に裂けた。

黒い粒となって霧散していく。


だが──横から漏れる影があった。


左から一体、サラを狙う。


フィオラが割り込んだ。

剣に雷が纏う。紫電が走る。

さっきより速い。


シュシュシュッ!


連続の斬撃が魔物を刻んだ。

切り裂かれた体が、黒い粒に変わる。


右からも一体。

ジャックが対応した。


短剣を逆手に構え、滑り込むように接近する。


シャッ!


鋭い一閃。

首が半分、切り裂かれた。

黒い液体が吹き出す。


だが──。


魔物は止まらなかった。

残った体が、自分の首を掴んだ。


そして──引きちぎった。


「なっ……!」

ジャックが目を見開く。


引きちぎった頭を、魔物がサラに向けて投げつけた。

速い。

剛速球だ。


コオオオオォォォ


飛んでくる頭の口から、青白い光が渦巻いている。


「っ!」

サラが咄嗟に杖を構えた。


呪文が唇から零れる。

光の壁が展開された。


ドンッ!


頭が弾き飛ばされる。


ジャックが跳躍した。

弾き飛ばされた頭を、空中で短剣が捌く。


真っ二つに裂け、黒い粒となって消えた。


「サラちゃん!」

ジャックが着地しながら振り返る。


サラの鼻から、血が流れていた。

弾いた瞬間、光を浴びたのだろう。


「……大丈夫」


サラが呪文を唱えた。

自分の体を緑の光が包む。


出血が止まり、顔色が戻る。


「平気だから」


強がりの声。

でも、少し震えていた。


虚ろな魔物は、全て倒した。

靄の中に、黒い粒だけが漂っている。


だが──。


デカい奴は、まだそこにいた。


血走った目が、じっとこちらを見ている。

動かない。


ただ、鋭い視線で観察している。


手に握られていた光る糸は、もう消えていた。

操っていた人形を全て失って──それでも、奴は微動だにしない。


品定めするような目。

獲物を見極める、捕食者の目。


空気が、さらに重くなった。

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