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58.~鬼塚剛~S級パーティとの邂逅


「鬼塚剛、か」


王都の一角、冒険者ギルド最上階。

S級専用フロアで、一人の男が資料を見つめていた。


レオンハルト。

S級パーティのリーダーにして、王国最強の盾剣士。


羊皮紙に記された文字を指でなぞる。

武闘会での戦闘記録。

魔法無効化の異能。

そして──素手で戦う異端の戦士。


「彼の力があれば、我々にも勝機があるかもしれない」


窓の外、朝靄に霞む街並みを眺める。


「会えるのが待ち遠しいな」


低く、穏やかな声が部屋に溶けた。



──その頃、鬼塚剛。


「ふっ……ふっ……」


朝日が部屋に差し込む中、俺──鬼塚剛は筋トレをしていた。


床に手をついて腕立て伏せ。

体が上下する。

汗が滴り落ちる。


魔人討伐への参加を決意したあと、俺にできることは体力作りだ。


付け焼き刃だが、柄にもなく走り込みまでやった。

旅ってなるとスタミナは大事だろうしな。


腕を曲げ、伸ばす。

筋肉が悲鳴を上げる。

まだまだ、気合いで身体を押し上げる。


そんな時、ノックの音。


「剛くん、手紙だよー!」


リリィの声。


部屋に入ってきた彼女は、封筒を振りながらニヤニヤしてる。


「やぁやぁ、精が出ますな!」


「……読むな」


「もう読んじゃった!」


リリィが封筒を開けて紙を取り出す。


「明後日お昼にギルドの会議室に集まるんだって。そこで顔合わせだね!」


「顔合わせ、か」


俺は腕立てを止め、体を起こした。

シャツの背中が汗で張り付く。


「S級か。どんな奴だ?」


「んふ、これがとんでもないイケメンなのよね〜!」


「ツラのことじゃねぇよ!」


「ごめんごめん」

リリィが笑いながら手を振る。


「えっとね、簡単に言うと今この国で一番強い人とその最強パーティだね!」


「へぇ、そりゃとんでもねえな」


「忙しくてあんまり街にはいないんだけどね」

 

リリィが少し真剣な顔になる。


「そんな人たちが全員集まって剛くんに会いにくるわけ。すごいことになっちゃったよね……」


「ま、そうかもな」


俺は立ち上がり、タオルで汗を拭いた。


「よし、飯食いに行こうぜ」


「うん! めっちゃお肉食べたい気分!」


「おっし、肉食いに行くか!」



そして顔合わせ当日。


俺たちは予定通りの時刻に冒険者ギルドに到着した。


昼の光が石畳を照らし、街は活気に満ちている。


ギルドの扉を開けると、受付嬢がすぐに気づいた。


「鬼塚さん、リリィさん、お待ちしておりました」

にっこり笑って立ち上がる。


「それでは会議室にご案内しますね」


冒険者ギルド三階、最奥部。


廊下は静かだ。

足音だけが反響する。


「こちらです」


第一会議室。

重厚な木の扉。

真鍮のプレートに文字が刻まれている。


「既にみなさんお揃いですよ。どうぞお入りください」


「おう」


ノックして扉を開けた。


コンコン。


「失礼しやす」


「失礼しまーす」


リリィが明るく続く。



中央の長テーブルを囲むように立つ、S級冒険者たち。

そしてテーブル上座には、ギルドマスター・バルトロメオ。


白髭を蓄えた老人が、威厳ある眼差しでこちらを見ている。


入室した瞬間──。


四人全員が、姿勢を正した。


空気が、ピンと張り詰める。


リーダーと思われる金髪の男が一歩前に出た。


いいガタイだ、鍛え上げられてる。

銀の鎧が朝日を反射している。

頬には古い傷跡。


「初めまして、鬼塚さん」


落ち着いた、低い声。


「私、こちらのパーティを率いておりますレオンハルトと申します」


丁寧に頭を下げた。

背筋が伸びている。


(……こいつ、マジもんだ)


圧が違う。

立ってるだけで威圧感がある。


「みんな、自己紹介を」


レオンハルトの声に、三人が順に前に出た。



目の下に剣型の紋様が入った赤髪の女性が名乗る。


「フィオラと申します。魔法剣士です」


琥珀色の瞳が、こちらをじっと見つめる。


「以後、お見知り置きを」


静かだが芯のある声。


次に、オレンジ髪の泣きぼくろの男が、少し緊張した面持ちで名乗った。


「自分、ジャックっていいます!」


アップバングの髪を掻きながら、ニカッと笑う。


「パーティでは一番新米で、基本なんでもやらせてもらってるっす!」


明るい。

人懐っこそうだ。


最後に、小さな癖っ毛の緑髪の女の子が名乗った。


「サラ。ヒーラーよ」


ぶっきらぼう。

だが少し緊張してそうだ。


「サラちゃん、初対面でそりゃまずいっすよ!」

ジャックが慌てる。


「うっさいわね! あんたも大概でしょ!」

サラが頬を膨らませた。


「あ、ああ……」

俺が少し戸惑う。


(なんだこの空気……)


想像してたのと違う。

もっとこう、ピリピリした雰囲気かと思ってたが──妙に和やかだ。


「はは、我が国の最強戦力のS級パーティだ」

バルトロメオが笑った。


そして、こちらに目配せをする。


「うっす、鬼塚剛。よろしく」


「リリィでーす!」

リリィが元気よく手を振る。


「リリィさん、ご無沙汰ですね」

レオンハルトが微笑んだ。


「知り合いか?」


「リリィ嬢には治療薬とか魔道具を結構工面してもらってるんすよ!」

ジャックが身を乗り出す。


「新しい魔法の開発に携わってもらったこともあるわ」

フィオラが静かに付け加える。


「え?」


俺は思わずリリィを見た。


「学者だっての!」


リリィが胸を張る。

そして肘で小突いてきた。



「さて、自己紹介も済んだところで」


バルトロメオの声が、場を引き締めた。


「早速本題に入らせていただくとする」


威厳がある。


一言で、空気が変わった。


全員の表情が真剣になる。

リリィも背筋を伸ばした。


俺も自然と姿勢を正していた。

 

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