49.初めての勇者認定
部屋の空気が、わずかに変わった。
受付嬢が小さく息を呑む。
バルトロメオの目が一瞬だけ細くなった。
「……やはり、そうか」
低い声。
だが、そこに敵意はない。
重い確認のような響きだった。
「神崎ハルト。君がここに現れたということは――“厄災”が近いということだ」
「厄災?」
(ああ、はいはい)
(お約束のやつね)
バルトロメオが腕を組む。
「この世界では、過去に幾度か異界から勇者が降臨した記録がある」
「そしてそのたびに、国を滅ぼすほどの災厄が訪れた」
その言葉を聞いて――。
(女神も何か言ってたっけ、まあテンプレ展開だよね)
(つまり僕が来たってことは、またそういう時期ってわけか)
(やっぱり、特別な存在なんだ)
心の中で静かに笑った。
胸が熱くなる。
僕は選ばれた。
この世界を救うために。
「神崎ハルト。君の力は測定不能だった」
バルトロメオが真剣な表情で言う。
「我々の魔力量測定器では、君の力を測ることはできないようだ」
(そりゃそうさ)
胸がさらに熱くなった。
今までの苦労が全部報われる気がした。
三ヶ月の停滞。
宿屋での屈辱。
ギルドでの笑い声。
全部、意味があったんだ。
――準備期間だったんだ。
「一つ確認しておきたい」
バルトロメオが一歩前に出る。
「君の言う女神の加護というものは、何だ?」
「レベルアップシステムとスキル習得システムをもらったんだ」
得意げに説明する。
言葉が勝手に溢れてくる。
「経験値を得れば自動でレベルが上がるし」
「レベルが上がればスキルも習得できる」
バルトロメオが少し眉をひそめた。
「……レベル?」
「成長の証だよ。モンスターを倒すたびに経験値が上がっていく」
手を動かしながら説明する。
「スキルは剣技とか、あと魔法もあるよ。女神様がくれたシステムだ」
バルトロメオは沈黙した。
考え込むような表情。
そして――。
「ふむ……となれば、君の加護は加速度的に成長し、厄災に対抗できうる力を身につけることができる」
「まさに勇者にふさわしい力だ」
バルトロメオが頷いた。
受付嬢が息を呑む。
部屋の空気が、また変わる。
尊敬――畏敬。
そういったものが混ざった空気。
「ギルドとしては、君を保護しなければならない」
バルトロメオが真剣な顔で続けた。
「ただし――勇者の名を背負う者は同時に、国と民の責務を負う」
「責務、ね……」
軽く答える。
責務とか言われても、ピンとこない。
「君が望む望まぬに関わらず、この世界はあなたを中心に動き出す」
「だからこそ、まずは君を支える者が必要だ」
「支える者?」
「そうだ。パーティを組んでもらう」
その言葉に、胸が躍った。
(よし来た。僕にふさわしい仲間だ)
「君のような特異な力を扱うには、戦士、魔法使い、回復士の三人が最低限必要だ」
バルトロメオが指を折りながら説明する。
「我々が選抜する。全員、実力者だ」
実力者。
いい響きだ。
優秀な仲間。
僕を支える仲間。
(これで僕も、本当のパーティが組める)
バルトロメオは続けた。
「だが、誤解しないでほしい」
声のトーンが変わる。
「彼らは君の部下ではない」
「君と同等の仲間だ」
少し釘を刺すような口調だった。
真っ直ぐ僕を見ている。
(まあ、形式上はそうでも実質僕がリーダーだろ)
心の中で笑う。
勇者なんだから。
当然、僕が中心だ。
「彼らを導き、この国を救う覚悟はあるか?」
バルトロメオの声は厳しくも誠実だった。
まるで試すように、僕を見据えている。
「もちろん。最初からそのつもりだよ」
自信満々に答える。
胸を張る。
バルトロメオは数秒、沈黙した。
そして――頷いた。
「……よかろう」
「今日から君は正式に『勇者ハルト』として登録される」
「パーティメンバーは三日後に揃う。それまではギルド宿舎で待機してくれ」
「了解」
返事をして、部屋を出る。
⸻
廊下に出た瞬間――思わず飛び上がった。
「やった!」
小さく叫ぶ。
拳を握りしめる。
(ついに来た……やっと僕の番だ)
(異世界に来て三ヶ月、ずっと準備してきた)
(これで世界が、僕を認める)
手のひらに残る、水晶の温もりを感じる。
あの光。
あの驚きの表情。
全部、僕のためのものだった。
(レベル15。まだ始まりに過ぎない)
ステータス画面を開く。
青い光が目の前に広がる。
(仲間か、優秀なメンバーなら効率も上がるな)
廊下を歩く。
足取りが軽い。
周囲の冒険者たちが、なんとなくこっちを見ている気がした。
(僕がこの世界を導く――)
(本当の勇者として)
ギルドの扉を押し開ける。
外の光が眩しい。
でも今日は、その光さえも心地よかった。
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