48.初めての冒険者登録
ギルドの支援金がなくなってしまった。
銀貨を数える。残りわずか。
気乗りしないけど、ギルドに行かなくてはならない。
扉を開けようとして――躊躇した。
また笑われるかもしれない。
なるべく誰にも悟られないよう、人の少なそうな時間を狙って受付嬢からお金をもらった。
視線を感じる。
でも見ないようにした。
銀貨を受け取り、急いでギルドを出る。
(まぁこれは勇者として準備に必要な期間だ)
(僕への投資みたいなものだ)
そう自分に言い聞かせる。
⸻
そして僕はまた二週間、狩りに勤しんだ。
とはいっても僕も一応人間だ。
休日を作らないと、体を壊したら本末転倒だしね。
最低でも週に三日は休みを作ることにした。
調子の悪い日は早めに休息を取る。
疲れたら無理しない。
効率的にやるんだ。
そうしてこの世界に来て一ヶ月が経った。
レベルは13。
『神崎ハルト Lv13』
それなりに成長はしている。
いまのところ順調だね。
⸻
それはいいのだが、問題が起こった。
ギルドの支援金が一ヶ月までで打ち切りだったのだ。
宿代が払えなくなる。
どうしよう。
そんな事態になってしまって、どうも何もする気になれず、二、三日ベッドの上で悶々としていた。
天井を見つめる。
頭の中で色々考える。
でも答えは出ない。
コンコン。
ノックの音。
宿屋のおばあちゃんが宿代をもらいに来た。
扉が開く。
「あ、あの……すいません、お金なくて……」
声が小さくなる。
おばあちゃんはニコッと笑った。
優しい笑顔。
「冒険者さんね。最初は大変よね」
「そうそう、空いてる部屋のお掃除、お願いできる?」
「あ、はい。あの、お金……」
「いいのよ。時々お掃除手伝ってくれる?」
「はい!」
(ついてる)
なんとか宿から出て行かなくて済むことになった。
(この世界は優しい人もいるな。やっぱり現実と違う)
(現実では理解されなかったけど、ここでは僕を認めてくれる)
胸の奥が少し温かくなった。
⸻
それからさらに二ヶ月が経った。
レベルは15。
『神崎ハルト Lv15』
週の二、三日は狩りに行って、残りの時間は効率的に経験値を稼ぐ方法を考えていた。
部屋でステータス画面を眺める。
どうすれば早くレベルが上がるか。
考える。
でも――いい案は浮かばない。
それと、ごくたまに掃除をお願いされて、それを適当にこなして生活していた。
⸻
コンコン。
ノックが鳴る。
「はい」
おばあちゃんが神妙な面持ちで入ってきた。
いつもの優しい笑顔がない。
「神崎くん、さすがにそろそろ出ていってもらえないかね?」
「え、急に言われても……」
心臓が跳ねた。
「ごめんね。うちもあんまり長いこと神崎くんを養っていける余裕はないのよ」
「あ、はい……」
何も言えなかった。
「あと神崎くんにはね、もっと合うお仕事があるかもしれないよ?」
(何言ってるんだこのばあちゃん)
「いえ、僕の役目なので」
「そうかい……。荷造り手伝うから、明日冒険者ギルドで相談してみるといいよ」
「はい……」
おばあちゃんが出ていく。
扉が閉まる。
一人きりになった部屋で、ベッドに座り込んだ。
⸻
翌日、僕は宿を出た。
荷物はほとんどない。
おばあちゃんが見送ってくれた。
「頑張ってね」
その言葉が、妙に重く感じた。
⸻
冒険者ギルド。
なんとなく面倒だった。
でももう行くしかなかった。
周りを見渡しながらギルドに入る。
前にいた受付嬢がいなくなってた。
(辞めたのかな?)
知ってる人は誰もいない。
少しだけ――安心した。
受付嬢に声をかけた。
「あの、冒険者登録お願いします」
「かしこまりました。では登録にあたって魔力測定を行ってもらいます」
僕は受付嬢の後について測定室に入った。
小さな部屋。
中央に水晶が置かれている。
「それでは手をかざして、魔力を込めてください」
(こうかな)
手のひらを水晶にかざす。
意識を集中する。
次の瞬間――。
水晶が眩しく輝いた。
部屋全体が光に包まれる。
受付嬢が驚いている。
目を見開いて、口を開けたまま固まっている。
「この反応は……! こちらでしばらくお待ちいただけますでしょうか!」
慌てて部屋を出ていく。
(きたきた。この受付嬢の反応、間違いない)
胸が高鳴る。
ようやく。
ようやく、僕の力が認められる。
⸻
しばらくすると、受付嬢が戻ってきた。
「お、お待たせしました!」
「遅いよ。待ちくたびれちゃった」
受付嬢の後ろから、ムキムキの貫禄のあるおじさんがやってきた。
筋肉質な体。傷だらけの顔。鋭い目つき。
ただ立っているだけで、圧がある。
「はじめまして。私は冒険者ギルドを運営している、バルトロメオ・グレイソンというものです」
低く、落ち着いた声。
(ギルドマスターか)
「神崎さん」
バルトロメオが真っ直ぐ僕を見た。
「率直にお聞きするが――君は勇者かね?」
その言葉を聞いた瞬間。
全身に電流が走った。
(これまで耐えてたのは無駄じゃなかった)
(やっと僕のすごさがわかりそうな奴が来た!)
全身が震える。
喉が焼ける。
言葉が勝手に溢れた。
「うん、そうだよ」
胸を張って答えた。
「僕が女神の祝福を受けた勇者だ」
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