47.初めてのウルフ討伐
今日も街の近くでスライムを狩った。
「横薙ぎ!」
青白い軌跡。スライムが弾ける。
『経験値+10』
また狩る。
「強突き!」
『経験値+10』
たくさん狩ったけど、さすがになかなかレベルアップしなくなってきた。
経験値バーの伸びが鈍い。必要経験値が増えているんだ。
それでも――夕暮れまでにレベルが8に上がった。
『レベルアップ! Lv7→Lv8』
『習得魔法:ライトヒール(新規)』
回復魔法だ!
間違いなく回復魔法だ!
(これなら昨日のウルフも楽に倒せるかもしれない)
⸻
僕はまた、孤立しているウルフを標的に攻撃を仕掛けてみた。
距離を詰める。
「強突き!」
剣が青白く光り、ウルフの体を貫く。
「ギャウッ!」
ダメージは入ってるが、一撃とはいかなかった。
ウルフが牙を剥く。
地面を蹴って迫ってくる。
「痛っっ!」
また噛みつかれた。牙が腕に食い込む。
でも――昨日よりは痛くない。
レベルが上がったからか、身体強化が強くなったのか。
「離せよ! ホーリーライト!」
光がウルフを包む。
ウルフが苦しそうに体を震わせ――そして力尽きた。
「やった!」
『経験値+50』
『レベルアップ! Lv8→Lv9』
レベルも上がった。
経験値効率はスライムよりマシだ。
(これからはスライムだけじゃなく、ウルフも狩りの対象にしよう)
⸻
日は完全に落ちかけていた。
西の空が赤黒く染まっている。
草原にウルフの群れが現れ始めた。
小さいウルフの中に――大きな個体が混じっている。
明らかに他より一回り大きい。
筋肉質で、鋭い目つき。牙も長い。
僕のレベルは9。回復もある。
(このくらいのレベルで、普通、街周辺は攻略できるはず)
(よし、やってやろうかな)
孤立している単体に狙いを定める。
大きいし、凶暴そうな顔をしている。
(見た目こそ迫力あるけど、所詮、街周辺の初級狩場のモンスターだろ)
思い切ってスキルをぶつけた。
「強突き!」
剣が大きなウルフの体に突き刺さる。
「グァッ!」
でも――倒れない。
大きいウルフがこちらを睨む。
唸りをあげる。
「グルルルルルルル……」
低く、威嚇するような音。
そして――。
「グァウ!!」
飛びかかってきた。
すごい迫力だ。
さっきのウルフとは比べ物にならない。
怖い。手が震える。
「横薙ぎ!」
必死に剣を振るう。
でも――交わされた。
次の瞬間、腕に激痛。
「いだあぁぁ!!!!」
噛まれた。ウルフが首をブンブン振り回す。
体が揺さぶられる。視界が回る。
頭が真っ白だ。
ただ剣を振り回す。
「わあああああ!!」
「強突き! 強突き! 強突き!!」
何度も何度もスキルを発動する。
剣が光る。ウルフの体に刺さる。血が飛び散る。
ようやく――大きいウルフは息絶えた。
ドサリ。
重い音を立てて倒れる。
「はぁ……はぁ……」
息が上がる。全身が震えている。
『経験値+100』
『レベルアップ! Lv9→Lv10』
レベルが10になった。
「ライトヒール……」
淡い光が体を包む。
傷口がわずかに癒える。
でも――ほんの少しだけ。
ステータスを確認した。
『HP:140/200』
(え、これだけしか減ってない?)
(あんなに痛かったのに……)
腕を見る。血が滲んでいる。服が裂けている。
でも、HPの数値はそこまで減っていない。
(とりあえず、ギルドに帰ろう)
⸻
大きいウルフの恐ろしい形相。
噛まれた痛み。
それが頭の中で反復する。
何度も、何度も。
歩きながら、手が震えていることに気づいた。
(まあ、こんなの想定内だ。)
⸻
ギルドについた。
レベルも上がったし、今日は測定をするんだ。
そう思って受付に向かおうとしたら――。
「おっ、昨日のわんこの歯のガキじゃねえか!」
酔っ払いだ。昨日の男。
「今日も集めてきたんかー??」
ゲラゲラ笑っている。
「……」
何も言えなかった。声が出ない。
「ちょっと、駆け出しの子いじめないでくださいよ!!」
受付嬢が割って入った。
酔っ払いが手を振る。
「はは、わりぃわりぃ」
笑いながら去っていく。
受付嬢が僕に向き直った。
「しばらくの支援金出しますね。めげずに頑張ってね」
銀貨数枚を手渡される。
二週間分は寝泊まりできるくらいの額だった。
銀貨の冷たさが指に刺さった。ありがたいはずなのに、胸の奥が熱くなる。
「……どうも」
小さく答えて、僕はギルドを去った。
魔力測定がどうとか、どうでもよかった。
(別にいつでも実力があれば認めさせられる)
(じっくり準備してやってやるさ)
⸻
そして今日も夕食を済ませ、ベッドに横たわる。
大きなウルフの恐ろしい形相が脳裏に浮かぶ。
腕の痛みが蘇る。ズキズキと疼く。
(とはいえ今日は普通のウルフを倒せるようになった)
(回復も覚えたし、ほんと完璧)
(順調すぎて怖いや。女神も僕を選ぶのはさすがだよね)
そうだ。順調なんだ。
僕は強くなっている。
そう思いながら、目を閉じた。
僕はとてもいい気分で眠りについた。
⸻
翌日も、またその翌日も、昼食を済ませてから狩りをした。
夜は早めに帰ることにした。
(大きいウルフは効率が悪い)
(今あれを相手にするのは愚行だね)
普通のウルフとスライムを狩る。
レベルが上がる。
でも――伸びが鈍い。
必要経験値がどんどん増えていく。
そんな日々を繰り返し、二週間が過ぎた。
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