46.初めての魔法
それから僕は夢中でスライムを倒しまくった。
「はぁっ!」
剣を振り下ろす。
「横薙ぎ!」
スキルが発動し、青白い軌跡を描く。
スライムが次々と弾けていく。
『+10』『+10』『+10』
数字が積み重なっていく快感。
ピロリン♪
またレベルアップの音。
そしてついに――Lv5になった!
『神崎ハルト Lv5』
『HP:150/150』
『MP:75/75』
『STR:18 DEX:14 INT:14』
『習得スキル:強突き』
新しいスキルだ!
そして――。
『習得魔法:ホーリーライト』
『パッシブスキル:身体強化』
魔法!
ついに魔法を習得した!
すごい。かなり疲れてたのに、身体強化のおかげで少し楽になった。
体が軽い。呼吸が深くなる。
これはパッシブスキルみたいだ。常時発動してる。
ステータス画面を眺めながら、思わず笑みがこぼれた。
(やっぱり僕には才能がある)
(選ばれただけのことはあるな)
⸻
そうしているうちに日が暮れてきた。
西の空がオレンジ色に染まっている。
草原の雰囲気が変わった。
スライムがいなくなり、代わりに――ウルフが現れ始めた。
灰色の毛並み。鋭い牙。赤く光る目。
明らかにスライムより強そうだ。
でも、僕ももうLv5だ。
魔法も試したいし、一体だけ相手にして帰るか。
一匹、離れて佇んでいるウルフに狙いを定める。
「ホーリーライト!」
手のひらから光が放たれた。
眩しい。温かい。
光がウルフの体を包み込む。
「ガルルルッ!!」
ウルフが苦しそうに吠えた。体を震わせている。
効いてる!
でも――次の瞬間。
ウルフが咄嗟に反撃に出た。
地面を蹴って跳躍する。
速い!
「うわっ!」
腕に激痛が走った。
ウルフが噛みついている。
牙が肉に食い込む。
「痛っ!!」
必死に剣を振るう。何度も何度も刺す。
ズブッ、ズブッ。
ウルフが離れない。
「離れろ! 離れろ!!」
力を振り絞って――。
「強突き!」
スキルが発動する。
剣が青白く光り、ウルフの体を貫いた。
ガクリ。
ウルフの体が力を失う。
地面に倒れ込んだ。動かない。
『経験値+50』
『レベルアップ! Lv5→Lv6』
なんとか倒した。
息が荒い。心臓が激しく打っている。
腕を見る。血が滲んでいる。服が裂けている。
咄嗟に声が出たけど――HPはあまり減ってない。
『HP:142/160』
(身体強化のおかげかな?)
(なんか変だな……いや、システムだからか)
それでも少し痛い。じんじんと痛みが続いている。
疲れた。今日は帰ろう。
⸻
ふと思いついた。
(ドロップアイテムとかってないのかな?)
ゲームなら素材が手に入るはずだ。
一応、ウルフの牙を取ろうとした。
口を開ける。
牙に手をかける。
引っ張る。
メキメキ。
肉を抉る気持ち悪い感触。
生暖かい。ぬるぬるしている。
鳥肌が立った。吐き気がする。
でも我慢して、なんとか一本抜き取った。
血で濡れた牙。
(素材を取って売却するシステムかもしれない)
ウルフの牙を持って、冒険者ギルドに向かった。
⸻
さっそく冒険者ギルドの受付嬢にウルフの牙を差し出す。
「これ、お金に変えられる?」
受付嬢が牙を手に取る。眉をひそめた。
「えっと……これは犬の歯ですか?」
「いや、ウルフの牙なんだけど」
「そうですかね……」
困惑している。
その時。
後ろから冒険者らしき男が声をかけてきた。
大柄な体格。酒臭い息。
「坊主、こりゃ近くの野犬の牙だろ?」
ゲラゲラと笑う。
「誰も欲しがらねえって」
周囲の冒険者たちも笑っている。
視線が刺さる。
顔が熱くなった。
手のひらが汗ばんでいる。
黙ってギルドを出た。
扉が閉まる音が、やけに大きく聞こえた。
(わかってるよ。試しに聞いてみただけだろ?)
(たかだか冒険者風情が、ほんと頭悪いな)
⸻
「あの!」
受付嬢が追いかけてきた。息を切らしている。
「お金に困ってますか?」
「……」
「駆け出し冒険者には支援制度があって、宿に泊まれるお金を支給してるのですが……」
「ご利用になられますか?」
なんだか胸が痛い。
施しを受けるみたいで、プライドが傷つく。
(情けをかけられるのは嫌だ)
(でもお金がなければどうにもならない。)
僕は支援を受けることにした。
⸻
お金を少しもらって、ボロ宿に泊まった。
簡単な食事。硬いパンとスープだけ。
寝床は狭くて、マットレスが薄い。
それでも、屋根があるだけマシか。
ベッドに横になる。
天井を見上げる。
シミだらけの天井。
(なんだか痛いやつばっかだな)
(ま、初日で僕の凄さを見抜ける奴なんていないよな)
今日だけでLv6になれた。
スキルも、魔法も覚えた。
ステータスも順調に上がってる。
(魔力測定って言ってたっけ? レベル上げた後に受けて、ちょっとビビらせてやろうかな)
でも冒険者ギルドはちょっと面倒くさいな。
(明日はまず狩りから始めよう)
目を閉じる。
疲労が一気に押し寄せてきた。
すぐに、眠りに落ちた。
⸻
翌昼。
目が覚めると、体が痛かった。
筋肉痛だ。
腕、足、背中――全身が軋む。
でも、起きられないほどじゃない。
ゆっくりと体を起こす。
窓から日が差し込んでいる。
(ちょっと筋肉痛だけど、いける)
顔を洗って、身支度を整える。
宿の食堂で簡単な昼食を済ませた。
さあ、お昼ご飯を食べて狩り開始だ!
扉を開けて、街へ出る。
青空が広がっている。
(今日も、レベルを上げるぞ)
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