34.準決勝開幕
翌朝。
目が覚めると、体が軽かった。
絶好調だ。
ベッドから起き上がり、窓へ向かう。
カーテンを開けると、朝日が部屋に差し込んできた。
窓を開ける。
朝の空気が部屋に流れ込んでくる。
冷たくて、気持ちいい。
深く息を吸う。
今日は準決勝。
相手は──エドガー・フォンブルーク。
王国騎士団所属の剣士。
(負けねえよ)
今日は、リリィがすでに朝食を用意していた。
「おはよー! 剛くん!」
にっこり笑っている。
エプロン姿。髪を後ろで結んでいる。
「おう」
テーブルに座る。
パン、スープ、目玉焼き。温かい。湯気が立ち上っていた。
「まずは準決勝だね!」
リリィが向かいに座った。
少し緊張した顔。
「エドガー、強いよ」
「ああ」
俺はパンを口に運んだ。
「でも、剛くんなら大丈夫」
リリィが笑顔で言う。
「当たり前だろ。ぬかりはねえ」
スープを飲む。
野菜の旨味が染み渡る。体が温まっていく。
リリィは俺の食べる様子をじっと見ていた。
心配そうな目。でも、信じてくれている。
その視線が、背中を押してくれる。
「美味いよ」
「ほんと? よかった」
リリィがほっとした表情を浮かべた。
朝食を済ませ、準備を整える。
赤い拳帯をしっかりと巻く。きつく、確実に。
布が肌に食い込む。
鏡を見る。
金髪のリーゼント。今日もキマってる。
(よし)
「行くか!」
「うん!」
俺たちは家を出て、闘技場へ向かった。
街はすでに活気に満ちていた。
石畳の道を歩く。
朝の光が建物の壁を照らしている。
商店が次々と開店していく。
店主たちが掃除をし、看板を出し、商品を並べていた。
武闘会を楽しみにしている人々の声が、あちこちから聞こえてくる。
「まずは準決勝だ!」
「特に鬼塚 vs エドガー、楽しみだな!」
「どっちが勝つかな?」
「俺は鬼塚に賭けるぜ」
「いやいや、エドガーは王国騎士団だぞ? 格が違う」
「でも鬼塚、ガルドをボコボコにしただろ?」
人々が興奮気味に話している。
武闘会が、街全体の話題になっていた。
俺は人混みをかき分けて進む。
リリィが俺の後ろをついてくる。
闘技場が見えてきた。
巨大な石造りの建造物。
円形の壁が、朝日を浴びて輝いている。
すでに観客たちが列を作っていた。
今日も満員だろう。
入場口に向かう。
警備員が冒険者カードを確認する。
「鬼塚剛選手ですね。どうぞ」
丁寧に頭を下げる。
「じゃあたしは観客席で応援してるからね!」
リリィが俺の腕を掴んだ。
「絶対勝ってね」
「おう」
リリィが笑顔で手を振る。
その姿が人混みに消えていった。
中へ入る。
控室へ向かう廊下は薄暗く、静かだった。
松明の明かりだけが、石の壁を照らしている。
自分の足音だけが廊下に響く。
コツ、コツ、コツ。
規則正しいリズム。
心臓の鼓動も、それに合わせるように落ち着いていく。
控室に入ると、誰もいなかった。
ベンチに座る。
冷たい木の感触が背中に伝わる。
深く、息を吸う。
(エドガー・フォンブルーク)
正統派の剣士。
王国騎士団。
洗練された技術。
情報はある。
でも、実際に戦ってみないと分からない。
(まあ、いい)
(どんな奴だろうが、ぶっ潰す)
しばらくして、ノックの音。
扉が開く。
係員が顔を出した。
「鬼塚選手、もうすぐ入場です」
「おう」
立ち上がる。
拳帯をもう一度確認する。
右手、左手。問題ない。
廊下を歩く。
係員が先導してくれる。
鉄の扉が、目の前にある。
向こうから、観客の歓声が聞こえてきた。
地響きのような音。
期待と興奮が入り混じった声。
心臓が高鳴る。
血が騒ぐ。
拳が疼く。
(いくぞ)
扉がゆっくりと開き始めた。
ギギギ……と重い音。
光が差し込んでくる。
そして──歓声が、一気に押し寄せてきた。
「うおおおおお!!」
「鬼塚だ! 鬼塚が来たぞ!!」
「鬼塚! 鬼塚!」
観客たちが立ち上がって叫んでいる。
拳を振り上げている。
俺はリングに向かって、ゆっくりと歩き出した。
砂の感触が足裏に伝わる。
一歩、一歩。
視線は真っ直ぐ前。
リングの中央へ。
対面の入場口を見る。
まだ開いていない。
アナウンスが響いた。
『西の門より──“不屈の拳”鬼塚剛!』
歓声がさらに大きくなる。
『初戦にて優勝候補筆頭アルヴィンを撃破!』
『二回戦にて元勇者パーティ戦士ガルドを圧倒!』
『果たして準決勝、王国騎士団の剣技を打ち破ることができるのか!』
観客が沸いた。
⸻
そして──対面の扉が開く。
『東の門より──“白銀の剣”エドガー・フォンブルーク!』
銀色の鎧を纏った男が現れた。
長身。
腰には細身の剣。
金髪を短く切り揃え、青い瞳がこちらを見据えている。
『王国騎士団エドガー! その剣技は王国随一!』
『正統派剣術の申し子、エドガー・フォンブルーク!』
歓声が爆発する。
「エドガー! エドガー!」
「王国騎士団!」
「流石の存在感だ!」
静かに、しかし堂々と歩みを進めてくる。
俺たちは、リングの中央で向き合った。
距離、三メートル。
エドガーが口を開いた。
「鬼塚剛」
落ち着いた声。
「君の戦いを見せてもらった」
「アルヴィンを倒し、ガルドを圧倒した」
「見事だ」
礼儀正しい。騎士らしい。
「だが──」
エドガーが剣に手をかけた。
「私は負けない」
「王国騎士団の名にかけて」
静かな闘志。
俺は拳を握りしめる。
「上等だ」
「かかってこい」
審判が中央に立つ。
「両者、準備はいいか」
俺は頷く。
エドガーも頷く。
審判が手を上げた。
「それでは──」
一瞬の静寂。
観客が息を呑む。
「試合、始め!」
ガァン!!
銅鑼が鳴り響いた。
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