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24.剣士との手合わせ


 翌日。


 リリィの家のダイニングテーブルで、俺は案内の紙を広げていた。


 朝日が窓から差し込んでくる。

 紙の表面が光を反射して、文字が浮かび上がる。


 『第三百回記念 王都武闘会』

 『日時:十日後 午前十時開会』

 『場所:王都大闘技場』

 『トーナメント形式 優勝賞金:金貨五百枚』


 「へー、これ年一の大会なんだな」

 「しかも三百回記念じゃねえか」


 俺は紙から目を上げた。


 「そうなの! ラッキーでしょ!」


 リリィがピースサインを作る。

 満面の笑みだ。


 「お、賞金あるよなー」


 もう一度紙を見る。


 「って、額デカくね!?」


 金貨五百枚。

 冒険者の依頼報酬で言えば、Aランク依頼数十回に匹敵する額だ。


 「あったりまえじゃーん!」


 リリィが胸を張る。


 「歴史と伝統のあるちゃんとした大会って言ったでしょ?」

「ここで優勝することって、すごい名誉なことなんだよ」


 リリィが身を乗り出してくる。


 「会場大きかったでしょ?」

 「あれが毎年満員になるほどの大興行だかんね〜」


 にやにやと笑いながら顔を近づける。


 「びびった? ねえ、びびった?」


 「はぁ?」


 俺は鼻で笑った。


 「バカ言え、こんな面白い大会あってたまるかよ!」

 

 「盛り上がってきたなおい!」

 「どんなやつとやれんのか楽しみだぜ」


 リリィがノートを開いた。


 「ちなみに、絶対出るだろうなって人もいるよ?」


 ペンでノートを指差す。


 「いっつも決勝争ってる優勝候補筆頭が二人」


 「一人は元S級冒険者で、今は魔法学園で教職をしてる天才大魔導士アルヴィン・グランツ」


 「もう一人は生粋の武闘家ね」


 リリィが説明を続ける。


 「魔法と武道を組み合わせた独自の戦闘スタイルで、道場の師範さんの武神ダリウス・ジンガ」

 「二人はライバルで、毎年バッチバチよ!」


 リリィが拳を握って、火花を散らすジェスチャー。


 「お、S級の対戦か」


 俺は笑った。


 「面白そうだ」


 「うん」


 リリィが頷く。


 (まぁ、魔導士さんが剛くんと当たったらご愁傷様ね……)


 心の中でそう思いながら、苦笑いを浮かべた。


 「のんびりしてらんねえな」


 俺は立ち上がった。


 「筋トレでもするか!」


「まってまって!」


 リリィが慌てて俺の腕を掴んだ。


 「ん?」


 「ちゃんと対策練らないとヤバくない!?」


 真剣な顔だ。


 「対策ったってな」


 俺は肩をすくめた。


 「筋トレしかなくねえか?」

 「結局、殴り合いになるんだから」


 「さっきの二人は優勝候補筆頭だけど」


 リリィが身を乗り出す。


 「もちろん皆、相当な実力者たちよ」

「あわよくば彼らを倒して優勝を勝ち取れる可能性のある猛者ばかりよ!?」


 リリィが息を吸った。


 「あと、一番気掛かりなのが……」


 「なんだよ」


 「剣士は、まずくない?」


 その言葉に、俺は動きを止めた。


 「……そうか、剣士いんのか」


 (ナイフくれえしか相手にしたことなかったな)


 前世でも、刃物持った相手は何度か経験したが。

 本格的な剣士は、初めてだ。


 「強化魔法使えないから、ズッパシ切れちゃうよ!?」


 リリィが両手を振る。


 「流石に何か対策しないと……」


 少し考えてから、顔を上げた。


 「ちょっと知り合いに掛け合ってみるよ」


 「おう、助かる」


 俺は頷いた。


 「とりあえず今日は、体鍛えとくか」



 ――――



 翌日。


 リリィの家の庭に、一人の男が立っていた。


 三十代半ば。

 長身で細身。

 だが、筋肉は引き締まっている。


 黒いコートに、腰には剣。

 顔立ちは整っている。

 知的な印象を与える目つき。


「初めまして」


 男が一礼した。


 「A級剣士のブロードです」

 「よろしくお願いします」


 丁寧な口調。

 礼儀正しい。


 「ブロードは時々パパの用心棒してくれてるの!」


 リリィが嬉しそうに説明する。


 「鬼塚剛だ」


 俺は頭を下げた。


 「悪いな、わざわざ付き合ってもらって」


 「いえいえ」


 ブロードが微笑む。


 「リリィお嬢さんの頼みとあらば、むしろ光栄の限りですよ」


 視線が俺に向く。


 「剣士相手の実戦経験がないのですよね?」

 「基礎からお教えしましょうか」


 「いや」


 俺は首を振った。


 「身体で覚える派だ」


 拳を鳴らす。


 「早速だが、手合わせしてくれ」

 「魔法はなしで頼む」


 ブロードが少し驚いた顔をした。

 だが、すぐに笑顔に戻る。


 「かしこまりました」

 「では、参ります」


 ブロードが剣を抜いた。


 刃が朝日を反射して、鈍く光る。


 リリィは少し離れた場所で見守っている。


 (指示通り、ブロードには剛くんは回復魔法も身体強化も使えないこと言ってないけど……)

 (大丈夫なの〜!?)

 (不安!!)


 心の中で叫びながら、拳を握りしめた。



 ブロードが構える。


 両手でしっかりと剣を握りこちらに突きつけてくる。

 足を前後に開き、重心を低くする。


 (なるほど、こういう距離感ね)


 俺も構える。

 拳を握り、膝を軽く曲げる。


「ハァッ!!」


 ブロードが踏み込んできた。


 剣が、一閃。

 速い。


 強化なしでも、動きは洗練されている。


 俺は後ろに跳ぶ。


 剣先が、俺の鼻先を掠めた。


 (ギリギリの距離を保つ)


 もう一歩下がる。

 ブロードが追ってくる。


 剣が、何度も繰り出される。


 縦、横、斜め──。


 全部避ける。


 (間合いはわかってきたな)

 (回り込んでみるか)


 俺は素早く横に動いた。

 左、右、左──。


 フットワークで翻弄する。

 ブロードが追いつけない。


 「ならば!」


 ブロードが回転した。


 剣が円を描く。

 全方位を斬り裂く一撃。


 「あぶね!」


 俺は身体を反らした。


 紙一重。


 剣が、俺のシャツを掠める。

 布が裂ける音。


 だが──その瞬間。


 俺は即座に懐に潜り込んだ。


 剣の間合いの内側。


 ブロードの顔が驚愕に染まる。


 俺はブロードの剣を持つ手首を掴んだ。

 がっちりと両手で押さえ込む。


 「そこまでそこまで!」


 リリィの声が響いた。


「もー、冷や汗出るわ!」


 俺はブロードの手を離した。

 一歩下がる。


 ブロードが、感心したように頷いた。


「お見事です」


 剣を鞘に納める。


 「剣士との対決が初めてとは思えない」


「いや、ありがとな」


 俺は首を回した。


 「もっとじっくり剣の間合いを掴まないとな」


 ブロードが少し考える素振りを見せた。


「剣を受けることができれば、戦い方の幅も広がりますよ?」

「ガントレットなど、試されてみてはいかがですか?」


「性に合わないんだよな」


 俺は拳を見た。


 「だが、拳ぶっ壊しちまうのはまずいな」

 「とりあえずで布でも巻いとくか」

 

 「リリィ、拳に巻く帯とか持ってねえか?」


 「あ、うん!ちょっと待ってて!」

 数分後、リリィが頑丈そうな布製の帯を持ってきた。

 「これでいい?」


 「おう、充分だ」

 拳に帯を巻く。

 

 ブロードに向き直る。


 「試合まで付き合ってくれよ」


 「もちろんです」


 ブロードが笑顔で頷いた。


 それから数日間。


 俺はブロードと、手合わせを続けた。


 剣の間合い。

 踏み込むタイミング。

 避け方、捌き方。


 全部、身体に叩き込んだ。


 ブロードは優秀な教師だった。

 無駄な説明はしない。

 ただ、何度も何度も剣を振るう。


 俺も、何度も何度も避ける。


 そうしてブロードとの修行期間を終えた。

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