21話
街のベンチで二人きり。
並んで座って休んでた。
午後の日差しが暖かい。
通りを人が行き交う。
リリィが真剣な顔で剛を見た。
「ねえ、剛くん」
「ん?」
「一つ、聞いていい?」
少し躊躇う様子。
「剛くんって、何者なの?」
剛が少し黙る。視線を逸らす。
「剛くんみたいな能力、見たことも聞いたこともない」
リリィが身を乗り出す。
「突如現れた魔法無効体質のびっくり人間!」
笑顔で顔を近ける。
「ねえねえ! 本当は何者なの!?」
キラキラした目で見つめる。
剛はしばらく考えてから、口を開いた。
「……転生者だ」
「転生……!?」
リリィが目を見開く。
「別の世界から来た」
空を見上げる。
「女神ってやつに、転生させられた」
「女神……」
リリィが息を呑む。
「チート能力とかスキルがどうとか、散々勧められたけど全部断った」
「そしたら、この能力だけ勝手に付いてきた」
「魔力0なのも、たぶんそれが理由だ」
リリィが固まる。
数秒の沈黙。
「じゃあ、剛くんって……勇者なの!?」
突然大きな声。
「は? 勇者?」
剛が顔をしかめる。
「女神様から転生を受けたってことは勇者だよ!」
リリィが興奮した様子で言う。
「昔からね、女神様の力で特別な力を持った人が現れることはあったんだ」
手を振りながら説明する。
「大昔はそれこそ魔王との戦争みたいな時に、突如として現れてたんだって!」
「そうなのか?」
剛が首を傾げる。
「まぁ、でも違ぇよ。勇者は別にいる」
「うーん、それはそうだけど」
リリィが考え込む。
「神崎って人でしょ? 勇者パーティはいつも噂になってる」
顎に手を当てる。
「その人も特別な能力持ってるのかな?」
「多分な」
剛が答える。
「女神の加護がどうとか言ってた」
「へぇ……」
「どんな人なの? その神崎って」
リリィが聞く。
「性格は最悪だったな」
剛が即答する。
「依頼が上手くいくと自分の手柄、失敗すると人のせい」
腕を組む。
「勇者様だから特別、みたいな態度でよ」
「市民にも横柄だし、仲間も完全に見下してた」
鼻で笑う。
「あと、口だけは達者」
「簡単に言うと、傲慢なクソガキだな」
「うわぁ……」
リリィが引く。
「まぁ、どうでもいいけどな」
「あいつのことは、もう関係ねぇし」
剛はふと思い出した。
「そういえばスキルがどうとか言ってたな」
「俺の世界のくだらねぇ妄想の影響でも受けてたんじゃねぇかな」
リリィが目を輝かせた。
「面白い……!」
「……は?」
「転生者が二人」
立ち上がる。
「これって前代未聞だよ!」
ノートを取り出す。ペンを走らせる。
「これ、研究対象として最高よ!」
キラキラした目。完全に研究者の顔だ。
「女神様に転生されたってことは、何か使命を託されたの?」
「いや? なんにも」
剛が肩をすくめる。
「何させたかったんだろうな。いい加減な女神だぜ」
苦笑する。
「えー、なにそれ! 全然意味わかんないじゃん!」
リリィが楽しそうに笑った。
「これから世界に何か悪いことが起こるってことなのかな?」
「どうなんだろうな」
剛が空を見上げる。
雲が流れている。
リリィが突然、剛の前に立った。
「決めた!」
「ん?」
「私をあなたの相方にしてよ!」
真っ直ぐな目。
「相方?」
「うん」
リリィが頷く。
「剛くんの能力がわかってる私だからこそ、できることがあると思うんだ!」
胸に手を当てる。
「ついでにあなたの能力、研究させて」
ニコッと笑う。
「それに、剛くんがこれからどんな活躍するのか、すっごく興味あるの!」
リリィが手を差し出す。
「ね、いいでしょ?」
剛は少し考えてから、その手を握った。
「……まあ、悪くねぇな」
むしろ嬉しかった。
「やった!」
リリィがにっこり笑う。
「あ、そうだ」
リリィが何か思い出した様子。
「相方ってことは、色々サポートするってことよね」
「サポート?」
「うん。情報とか、装備とか」
リリィが指を折る。
「あと、闘技場の参加費とか宿代とか」
「……金か」
剛が苦笑する。
「そういや、俺全然稼いでねぇな」
「でしょ?」
リリィが笑う。
「だから、私が出すわ」
「資金援助ってやつ」
「……いいのか?」
「もちろん」
リリィが頷く。
「その代わり、剛くんの能力、研究させてね」
「あと、活躍を間近で見させて」
ニコッと笑う。
「Win-Winでしょ?」
剛は頷いた。
「ああ、わかった」
「じゃあ、頼むわ」
「任せて!」
「それじゃあ、次は闘技場に行ってみない?」
「闘技場?」
「うん!」
リリィが目を輝かせる。
「ちょうど武闘会開催前だから受付してるかも」
剛の腕を掴む。
「そこで力試ししてみようよ!」
剛は頷いた。
「いいじゃねぇか」
立ち上がる。
「行ってみっか!」
拳を鳴らす。
「武闘会か」
口元が緩む。
そういうの、好きなんだよな。
久しぶりに、血が騒ぐ。
リリィが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、決まりね!」
二人は街を歩き出した。
闘技場へ向かう。
剛の足取りは軽かった。
空が青い。
風が心地いい。
また新しい一歩を踏み出す感覚に、高揚した。




