表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/72

14.追放


 気づいたら、ベッドの上にいた。


体が鉛のように重い。

頭にもやがかかったようで、思考がまとまらない。


ぼんやりと天井を見上げる。

木造の、簡素な天井。


(ここは……?)


記憶を手繰り寄せる。

どれくらい気を失っていたのか。

パーティはどうなった?

オーガは――


何も分からない。


起き上がろうとした時、扉が開いた。


「あ、よかった!」

ルナだった。

安堵の表情を浮かべている。


「鬼塚さん、目を覚まされたんですね!」


「……どのくらい寝てた?」

喉がカラカラだった。声が掠れる。


「丸二日は起きなかったんですよ」

ルナが水差しを持ってきてくれた。


冷たい水が喉を潤す。


「心配しました……」


「二日……」


水を飲み干してから、俺は聞いた。


「オーガはどうなった?」


ルナの表情が曇る。


「……討伐には、失敗しました」


「……は?」


耳を疑った。


「お前らが負けたってのか? 圧倒してたじゃねぇか」

「何があったんだ?」


「それが……」


ルナが言葉を濁す。


「私も、間違いなく圧倒していたと思っていたのですが……」


俯きながら、震え声で続けた。


「鬼塚さんが倒れた後、オーガが……急に、本気を出したんです」


「本気……?」


「はい……黒い炎が復活して、力も、速さも、全てが桁違いになって……」


「神崎さんも、ガルドさんも、セリアさんも、一瞬で吹き飛ばされて……」


「私が逃げましょうと叫んで、鬼塚さんを担いで、なんとか……」


ルナの目に涙が浮かんでいた。


「ごめんなさい……私、力不足で……」


ガチャ。


扉が開いた。

神崎が入ってきた。


「やあ、起きたのかい?」


軽い口調だが――

神崎の腕には包帯が巻かれていた。

顔にも生々しい傷跡がある。


「呑気に二日も寝やがって」


冷たい目で俺を見下ろす。


「話がある。来いよ」


「鬼塚さんは、まだ起きたばかりなんです!」

ルナが立ち上がった。

「無茶はよくないかと……」


「こいつのせいで、僕たちは散々な目に遭ってるんだよ!」

神崎が声を荒げた。


「二日寝かせてやってるだけでも、ありがたいと思ってくれないかな?」


「早く来いよ」


そう言い残して出て行った。


重い体を引きずってホールに向かうと、ガルドとセリアがいた。

ガルドの額には包帯。

セリアの腕は三角巾で吊られている。


二人とも、不機嫌そうな顔をしていた。


(……マジで、ボコられたんだな)


「悪いな、早々にぶっ倒れて」

俺は頭を下げた。

「どうなった?」


「どうなった、だと?」

神崎が鼻で笑った。


「この空気で察してもらえないかな?」


テーブルを叩く。


「失敗だよ! 足手纏いの誰かさんのせいでね!」


「……」


「お前が囮として役立たずだったせいで、僕が前に出ることになったんだよ」

神崎が俺を睨みつける。


「おかげで、こんな怪我だ」


「お前のせいで回復が分散したのよ」

セリアが冷たく言い放つ。

「ルナがあんたの治療に魔力を使ったせいで回復が足りなかったわ」


「いえ、そんなことは!」

ルナが必死に反論する。


「私は、戦闘中も全力で回復を……」


「あんたは黙ってて!」

セリアがルナを睨みつけた。


「……」

ルナが黙り込む。


「それに二日も寝込むとか、軟弱にもほどがあるわ」

「私たちは半日で復帰したのに」

「ほんと愚図ね」


セリアが鼻で笑った。


「つーか、お前のツラ見ると、むしゃくしゃするぜ」

ガルドが拳でテーブルを叩いた。

「もっと持ち堪えろよ! オーガにボコられたのも、全部お前のせいだ」


「……」

俺は何も言えなかった。


「率直に言うと」

神崎が俺を見た。


「もう君、パーティやめてくれないかな?」


「いや、やめろ」

「クビだ」


「……」


「足手纏いなんだよ」


「魔法が使えない奴は、やっぱり無理だったね」

神崎が嘲笑を浮かべる。


「正直、いない方がマシだね」


「お前がいなければ、楽に倒せたのに」

セリアが冷たく言った。

「荷物持ちなんて、誰でもできるわ」


「……そうかよ」

俺は拳を握りしめた。

「悪かったな」


チャリン。


神崎が銀貨一枚を投げた。

床に転がる。


「荷物持ちの報酬だよ」

「お疲れさま」


神崎が笑った。


俺は銀貨を拾わずに、そそくさと立ち去った。

どうでもよかった。


むしろ、速攻ぶっ倒れて迷惑かけて、パーティにいられるような図々しい真似はできない。


何より――

不甲斐ない自分が、許せなかった。


拳を握りしめる。


(……俺、何やってんだ)


「鬼塚さん!」

ルナの声が後ろから聞こえた。


「待ってください!」


俺は立ち止まらなかった。

歩き続ける。


「本当に、鬼塚さんのせいではないんです!」

ルナが必死に叫ぶ。

「でも、みんな聞いてくれなくて……」


「やめてくれ」

俺は立ち止まった。


「惨めになる」


「でも……」


「世話になった」


俺はまた歩き出した。


ルナの声が遠くなる。


もう、何も考えられなかった。

ただ歩いた。


宿を出て、街を歩く。

行く当てもない。

考えることもない。


ただ、歩いた。


夕暮れの街。

人々が行き交う。

笑顔で話している。

家族で歩いている。

冒険者が酒場で笑っている。


俺は――

一人だった。


ベンチに座る。

空を見上げる。

茜色に染まっていく。


(俺、何やってんだ)


異世界に来て、もうすぐ二ヶ月。

女神に転生させられて、冒険者になって、パーティに入って――

そして、クビになった。


「……最悪だな」


何のために、ここにいる?

何のために、生き返った?


分からない。


空が暗くなっていく。

星が見えてきた。


俺は、ベンチに座ったまま、夜を迎えた。

 

【読者の皆様へのお願い】



ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もし「面白かった」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけたら



下にある【☆☆☆☆☆】から作品への評価をお願いいたします。



面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちもん大丈夫です!



ブックマーク登録もあわせてお願いします!



「評価」が更新の原動力になります。何卒よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ