『尾行の心得、それは“目を合わせない・息を合わせない・話しかけない”』
──放課後。
(朝霧陽菜。君はいったい、何者なんだ……)
体育での“浮遊走法”と“カーブボールスリーポイント”を思い出す。
星司は放課後、校門で陽菜が出てくるのを待っていた。
(念のため言っておくけど、これはストーキングではない。観察である。超科学的調査だ)
──15時47分。陽菜、校門から出る。制服姿。髪、揺れてる。
(よし、尾行開始。影の民としての誇りにかけて、気配は消す)
──15時54分。商店街。
陽菜はパン屋に立ち寄り、**「メロンパン3つ」**を購入。
(それはもう地球人だよね……?)
が、星司は見逃さなかった。
パンを受け取る瞬間──手が3本あるように見えた。
(今、一瞬、空間に“補助腕”出てたぞ!? しかも透明な!)
──16時12分。文房具店。
陽菜「これください~♪」
店員「はい、色ペンですね〜。用途は?」
陽菜「えーと、“戦術式の再構成”に使います♡」
店員「えっ」
陽菜「あ、違います! “ノートまとめ”です!」
(遅ぇよ!! 取り繕いの順番が逆なんだよ!!)
──16時40分。公園。
陽菜はベンチに座って、パンをひとつ、ふたつ……三つ目まで完食した。
「ふぅ……やっぱりこの星の炭水化物は素晴らしいな……いや、普通においしい」
(ほぼ地球外生物の感想だよね!?)
──と、ここで突然。
陽菜のスマホが光り出した。
だがそれは、スマホというよりも──**“投影端末”**に近い。
「陽菜=コードΩ_72。今周期の監視報告を」
「っ!?」(木陰からの星司)
陽菜は少し戸惑った顔で、すぐさまスマホを伏せた。
「……ごめんなさい。間違い電話です!」
誰に言ってんだそれ!! しかも何そのコードネーム!!
──16時55分。
星司(心の声):
(陽菜はたしかに人間の皮をかぶってはいるが……中身が謎すぎる)
(でも、もしも……本当に“かつての敵”の関係者だったら──)
(いや、ない。ないよな。あんな天然……いや天然を装った刺客もいたけど……)
「──田所くん?」
「ひぃっ!!??」
背後から陽菜。
完全に気配ゼロだった。こっちが尾行されてたレベル。
「……えっと、ずっと私のあとをつけてた?(ニコニコ)」
「……うっ、うん。違うんだこれは宇宙的な理由があって──って言っちゃったああああ!!!」
「宇宙的な……ふーん?」
(ちょっと待て。今の“ふーん”……なんか聞き覚えがあるぞ?)
──脳裏に過去の記憶。
超銀河戦争時代、敵の将がよく言っていた。
「ふーん? エン=カリオン、お前って本当にバカ♡」
(やめろ……まさか、いやでも……)
>【観測メモ:朝霧陽菜】
>・手が一瞬三本(透明)→サイコマニピュレータ疑惑
>・端末が“通信”より“指令装置”に近い
>・語彙と語調が過去の敵幹部と微妙に一致
>【結論】
>──朝霧陽菜、ただ者ではない。
To be continued...!!