「この子、データベースにないんですけど!?」
──放課後・図書室。
「……あった、これだ。太陽系文化史年表」
「……ちょっと待て、何を調べようとしてるの君」
田所星司は、陽菜に引きずられるように図書室の端っこの棚へ来ていた。
彼女の手元には分厚い文化史の資料集。
「これの、紀元前23,000年あたりって載ってるかな?」
「いや地球の文字文明すら始まってない頃だよ!?何調べんの!?」
「んー……“惑星遺跡”とか、“周期干渉の痕跡”とか?」
「完全に宇宙文明調査員の発言なんですけど!?地球の女子高生の辞書に“周期干渉”って単語ねえよ!?」
陽菜は無表情で言い返す。
「でも田所くん、昨日“時空振動が5回”とか言ってたじゃん?」
「ギャグのつもりだったのに……ノリで言ったら学術調査始まった……!」
星司は、内心焦っていた。
(おかしい。こいつ、どんどん“地球人じゃない言語”に適応してきてる。まさか……)
「……君、実は記憶戻りかけてない?とか言わないよね?」
「え?」
陽菜はピクリと反応した。
「え、なにそれ。まさか私が“星司くんのかつての仲間”とか“記憶を封印された異星の巫女”とか、そういうテンプレを疑ってるわけ?」
「えっ、ちょっとその返し自体がテンプレ回避ムーブっぽくて逆に怪しい!!」
星司は席から立ち上がり、持っていた**ミニスキャナ型情報解析装置(=消しゴム)**を取り出す。
「……陽菜、ちょっとだけ顔見せてもらっていい?」
「ちょっと何その“ドキドキ展開風に見せかけたガチスキャン”やめて」
「今から顔面データを7000種族の生態パターンと照合するから」
「やめろ変態!」
ぺしっ!
スキャナ(消しゴム)は陽菜の手で叩き落とされた。
「はっきり言うけど、私ほんとに“ただの女子高生”だからね?」
「“ただの”って強調するやつに限ってただのじゃないって銀河条約で──」
「はいはい、じゃあ証拠見せてあげる」
陽菜はランドセル……じゃなかったスクールバッグをがさごそ漁ると、1冊のスケッチブックを取り出した。
「これ。私が小学生のころから描いてたノート」
「えっ、証拠が“幼少期の思い出”?急にエモいやつ!?」
パラパラとめくられたページには──
宇宙戦艦の設計図、未知の文字列、エネルギー粒子の拡散図
「…………」
「……ね、普通の小学生でしょ?」
「おかしいだろぉぉおおおお!!!」
星司の脳内、再びアラート。
【危険:陽菜=異常文化汚染対象候補】
【観察レベル:Δ(デルタ)からβ(ベータ)へ昇格】
(やっぱりこの子……地球人としては明らかにアウトライン超えてる……!
俺の知識に“ついてこれてる”じゃなくて、“先にこっちを追い詰めてきてる”……!)
陽菜は星司の思考を読むように、にこっと笑った。
「ねえ田所くん。もしかしてさ、私のこと“何か”だと思ってない?」
「いやいやいやいやいや、ただの、あの、ちょっと変わった趣味の、普通の──」
「大丈夫だよ。私も君のこと、全然“普通”だと思ってないから
「お前ェーーーー!!!!!」
To be continued...!!