ここから、すべてを始めよう!
「うふふふ……レイって、本当に利用しやすいわね」
耳を突き刺すような声。エレノラだ。
「レイ!お前は本当に子として失格だ!」
父の声。もちろん、この悪夢には欠かせない存在。
「クククク……妻に裏切られた気分はどうだ?クククク!」
処刑の場で俺の頭を踏みつけた、王子の気色悪い笑い声。
「我が娘を陥れたな?判決は下った。死刑だ。」
俺に死を告げた王の声。
「うわあああっ!!」
飛び起きた。
胸が苦しく、全身が汗に濡れ、息が乱れる。あれは……夢じゃない。記憶だ。癒えぬ傷。でも、もしかしたら——感謝すべきなのかもしれない。この痛みが、復讐心を燃やし続けてくれる限り、俺は決して折れない。たとえ、もう一度死んだとしても。
……だけど、今は。
この新しい身体と、新しい家族に慣れなければ。
「レイ、ご飯よ〜」
部屋の外から優しい声が響く。ジゼル・アッシュベルト。新しい母。穏やかで的確な性格の、有名な錬金術師。
別の部屋では、誰かが魔道具をいじりながら踊っていた。アレン・アッシュベルト。新しい父。風変わりだが優秀な魔術研究者。
俺の名前は——レイ・アッシュベルト。二人の一人息子。魔力も戦闘能力も、生まれ持っていない。この体は、空っぽの缶のようだ。でも、だからこそ……
俺は自分自身を、一から作り直せる。技術も、生きる意味も、すべてこの空の器に刻み込める。そして、それって……ちょっとカッコいいと思う。
一番大切なのは——今回は、拒絶されなかった。受け入れてくれたんだ。
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「レイ、今日は元素魔法の研究をしてみよう」
俺は戸惑いながらも頷いた。前世なら、簡単なことだ。でも今は、何もかもが違う。
体は反応が遅く、何度試しても……
失敗。
完全なる失敗だった。
この弱い体では、魔法操作を甘く見てはいけなかった。魔力制御には経験や意志だけじゃ足りない。技術的理解、計算の精密さ、そして感情の分離が必要だ。少しでも狂えば、魔力が暴走して、気絶や怪我につながる。
「じゃあレイ、今日は基礎のマナ操作を学ぼうか」
アレンは怒らなかった。昔と違って、眼鏡を直しながら、優しく教えてくれた。
魔法を操るのは、体内を流れる大河の流れを制御するようなもの。流れを安定させ、強さを調整し、乱流を避ける。言葉にすれば簡単だが、実際はとても難しい。
前の体なら、息一つで魔力を操れた。でも今は、慎重に、丁寧に、一つ一つ確かめながら進まなければならない。
……なのに、不思議と楽しい。
競争もない。プレッシャーもない。順位も気にしなくていい。
ただ、温かな家族と、小さな実験室で、失敗を恐れずに学べる場所。
もし、この復讐が終わったなら……
——きっと、俺はここで生きていたい。
この家族と。静かな幸せの中で。
第7話の執筆は、今回かなり時間がかかってしまいました。
なぜかというと……突然、自分の文体がいつもと変わってしまって、すごく柔らかくなっていたんです。
自分でも「なんでこんなに違うの!?」って戸惑ってしまって……。
実はこの話、すでに3回も書き直しています。最初の2回は「これはひどい……」と感じるほどしっくりこなくて、3回目でようやく「これだ、自分のスタイルだ!」と納得できました。
そんなわけで、更新が遅れてしまって本当にすみませんでした。
正直に言うと、物語の展開についてもすごく悩んで、夜も眠れないほどオーバーシンキングしてました……。
それでも、皆さんに楽しんでいただけたら本当に嬉しいです!
あっ、それと!最近Twitter(X)のアカウントも作ったので、ぜひフォローしてくれると喜びます!
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いつも読んでくれて、本当にありがとうございます!