表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

新しい世界への生まれ変わり(4)

今日はロスト学園の最後の日だ。

別れの時には、泣く者もいれば、抱き合う者もいて、平気なふりをする者もいる。

俺?俺はパーティー会場の隅で静かに寄りかかり、できるだけプロフェッショナルな姿勢を保っていた。感情に流されるタイプじゃないし。

それに、情報屋である俺は…感情をコントロールできなければならない。


だが、そんな賑やかな卒業パーティーの中、突然誰かが俺に近づいてきた。


エレノーラ・デル・フィズだった。


そう、あのエレノーラ——フィズ公爵家の娘。

学業成績はほぼ完璧、性格は社交的で、学年中で知らぬ者はいない。まさに理想の女性、誰にも手の届かない存在。


「…あ、あの…あなた、レイさんですよね?」

彼女は少し息を切らしながら声をかけてきた。


「ええ。私はレイ・アーン。お会いできて光栄です、エレノーラ様。」

俺は自然とフォーマルモードに切り替わり、情報屋としての反射で返した。

…だが、彼女の様子が妙だった。目が輝き、頬が赤い。

…恋してる人の顔だ、これ。


「あ…う、うん。よろしく、私はエレノーラ…」

彼女はどこかぎこちなく、緊張していた。


俺は黙ったまま内心で疑問を巡らせた。

これは何かの任務か?秘密の情報伝達か?まさか、俺に接触してくるってことは…


「…あ、あの、レイさん。少し、お時間いいですか?」


「もちろん。」


「ここはちょっと騒がしいから…裏庭で話せますか?」


俺はうなずいた。まだ任務の可能性を考えていた。

もしかして貴族家にスカウトされるのかもしれない。


だが、裏庭に着いた瞬間——


「け、結婚してくださいっ!!」


……頭が真っ白になった。


これは夢か?

いや、さっき何かアルコールでも口にしたか?

それとも…この異世界、甘やかしすぎでは?


地球では童貞のまま死んだ俺が、学園一の美少女に突然プロポーズされるなんて…!


「…な、なんで急に?」

俺は現実感を保とうと必死に聞いた。


エレノーラはうつむき、顔を真っ赤にしていた。


「お、母様に言われたの。卒業の日に相手を見つけなさいって…。早く婚約しないと他の人に取られちゃうって…」


ああ、なるほどな。貴族家の中には、卒業と同時に縁談を進める家もある。

…でも、なぜ俺なんだ?


「…愛のない結婚で大丈夫なのか?将来うまくいかなくなるかもしれないだろ?」


「だ、大丈夫です!母様が言ってた。愛は時間と共に育つって!」


彼女の目はまっすぐで、言葉に迷いがなかった。

そしてなぜか…俺の心臓は高鳴っていた。

拒否する理由が見つからない。いや、むしろ——


「……わかった。受け入れよう。」


そしてその日を境に、俺たちの関係は急速に深まった。


結婚式の日がやってきた。

王城の大広間には、貴族たち、名士たち、そして同級生たちが集まっていた。

レイ・アーンという小貴族の息子と、名門フィズ家の令嬢エレノーラ・デル・フィズとの突然の結婚を祝福するために。


まさか自分が祭壇の前に立つとは思わなかった。

まるで夢のようだったが、俺の意識ははっきりしていた。


結婚式から一週間後。俺たちは完璧な夫婦のような生活を送っていた。

俺は生活費を稼ぐ——つまり、情報を集めたり、流通の仕事を手伝ったり、ロスト学園出身者らしい任務をこなしていた。

エレノーラは家を守り、ときどき庭いじりをして、そして俺たちの子供を育てていた…


…子供?ああ、養子だ。

下町の村から引き取った子供で、俺たちの絆の象徴として迎えた。血は繋がっていないが、すでに本当の家族のようだった。


俺は幸せだった。いや、幸せすぎた。

地球ではただの普通の男で、童貞のまま死んだ俺が——

今は学園一の美女と結婚して、快適な家を持ち、穏やかな日々を過ごしている…。


くそ、泣きたくなるほどだ。


これが、俺と愛しきエレノーラの物語の要約だ。


……この幸せが、永遠に続くと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ