表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/33

知られざる真実

「はぁ……なんでテレポートのこと、忘れてたんだろ……」

レイは弱々しく呟いた。果てしない青い海に、彼の身体はただ漂っていた。


マナは戻らず、身体はほぼ感覚を失い、意識も朦朧としていた。


生き延びる可能性? ゼロに近い。


「……もう寝よっか……」

そう囁いて、レイは目を閉じた。


──光が来た。

眩しく、痛いほどに強烈な光。


それは、彼が最初に死んだ時と同じだった。


「くそっ……まさか、サメにでも食われたか?」

レイは苛立ち混じりに呟いた。


しかし、次に耳に届いた声は──あまりにも聞き覚えがあり、そして血が煮えたぎるほどの怒りを呼び起こした。


「どういう意味、それ?」


レイの目が見開かれる。


「……エレノラ⁈ 何を言った⁈」


白すぎるほどの純白のドレスを纏った少女が、傲慢な笑みを浮かべて立っていた。


「他に何があるの? 私はあなたの妻でしょ?」


「戯言を言うな!!」

レイは叫ぶ。「お前は浮気して、俺の信頼を裏切って──殺されるのを黙って見ていたんだぞ!」


エレノラは気だるそうにため息をつく。

「ああ、そのことね……ごめん? でもさ、そんなことで根に持つなんて、ちょっと女々しくない?」


レイは拳を握り締めた。「黙れ……この裏切り女。」


──突然、まばゆかった世界が崩れ落ちた。

闇が全てを飲み込んでいく。


すべてが消える直前、エレノラの声が震えていた。絶望に満ちた、弱々しい声で。


「お願い……レイ。私を……殺して……」



レイは飛び起きた。荒い呼吸をしながら、周囲を見回す。


そこは──白い砂浜と、見慣れない木々が広がる孤島だった。


「なんで……あの女の夢なんか見たんだ?」

文句を呟きながら立ち上がる。

海から流れ着いた少量の食糧がまだ残っており、それでなんとか命を繋げそうだった。


──だが、その時。何かを見つける。


人影があった。何人かは杖を持ち、何人かはローブを着ていた。

中には──見覚えのある顔も。


アルン家。帝国。かつての支配者たち。


彼らは何かの儀式を囲んでいた。


レイは身を伏せ、耳を澄ませた。


「遅かれ早かれ、この世界は“R”という存在に滅ぼされるだろう」

司祭の声が低く響く。


「Rだと? それは何者だ、答えろ、無能な司祭め!」

皇帝が怒鳴る。


「分かりません。しかし備えねばなりません……

もしかすると、“勇者召喚プロトコル”の発動が必要かと……」


「そんなものは不要だ!」

アルン家の長が否定する。

「我らの力で十分だ。外の力など借りぬ!」


「膝で物を考えてるのか貴様は!?」

皇帝が毒づく。


──口論が始まる。

罵声が飛び交い、エゴがぶつかり合う。


その時──


ズズッ……


暗黒のオーラが空間を包む。司祭が静かに手を上げた。


「……静粛に。」


「は、はい……」


「勇者を召喚します。ですが……材料が必要です。」


「材料……?」


「人間の死体です。魂の転移に使うため。」



---


信じられなかった。


「つまり……異世界の勇者たちは……

死体を使った儀式で召喚されていたってことか……?」


レイの身体が震える。

怒り、嫌悪、そして吐き気。


「今すぐ、奴ら全員を……殺せるかもしれない……けど……」

周囲を見渡す。

敵の数が多すぎた。力が足りない。


「……勇者が来るまで待とう。

まとめて全員、地獄に叩き落としてやる……」


レイは手早く食料を盗み、音を立てずにその場を離れた。


貴族たちは大きな船に乗り、本土へ向かっていく。


レイはその船の底に、次元空間を創り出した。

フックの魔法で船に固定し、影に溶け込む。


──誰にも気づかれずに。


「……どこまでも汚れてやがるな、帝国……」

彼は冷たく囁いた。


「だが……俺は、もっと汚いぞ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ