表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

再び歩む、その理由

ドサッ…


レイは奈落の底へと落ち、そのまま数日間、意識を失っていた。


そして──かつて死を迎えた時と同じように、彼の前にまばゆい光が差し込んでくる。


「……死んだのか……? くそっ、まだ復讐を果たしてないのに……」


そう呟き、レイは寂しげに目を伏せた。しかし、その静寂を破ったのは、どこか懐かしい声だった。


「落ち込むなよ、バカ。ここに来たのは死んだからじゃない。七つの罪のアーティファクトを全て取り込んだせいで、これは“移行”に過ぎないの」


その声は、優しく、どこまでも美しかった。


「まさか……本当か!? アルメイダ……?」


「うんうん、安心して。もうすぐ目覚めるわよ。それまでの間……記憶を失って転生したジュリエットでも覗いてみる?」


「は? ジュリエットが転生? そんな……どうして?」


「ふふっ、宇宙にはね、何兆という世界と銀河があるの。……ううん、何兆じゃ足りないくらい。地球もその一つ。そして、この世界も同じ」


「……嘘みたいだな」


「本当よ。そして死んだ魂はここで選別され、ランダムに他の世界で新たに生まれるの。でもね、レイ。あなたの魂は、もう何兆回も選別してきた。だから、また会っても私は驚かない」


「そりゃ……すごいな。でも、どうして俺は十八歳になってから意識が戻ったんだ? 今この時点で」


「それはね……数十億年に一度の、特殊なケースなの。あなたは、その“選ばれた例外”ってこと」


「……マジかよ……」


話がどんどん深まる中、レイの身体が突然、眩い光に包まれる。


「時間切れね。行ってらっしゃい、レイ」


「……っ!」


言葉を交わす暇もなく、レイの意識は現実へと引き戻された。


──ガバッ。


レイは、あの奈落の底で目を覚ます。


「いてて……背骨も足も、折れてるな……」


だが、次の瞬間。


リカバリー。


彼の体は、まるで何事もなかったかのように癒されていく。


「……? リカバリー魔法……? 俺、こんなの使えたか……?」


不思議に思いながらも、自身のアーティファクトに目を向けると、思わず声を上げた。


「こ、これは……!? 七つのアーティファクトが……一つに……!?」


その名は──ヌエックス(Nuex)。


英語で言えば、The Artifact of the Seven Deadly Sins。


その瞬間から、彼はさまざまな魔法を自動的に習得していた。飛行、身体強化、暗視──あらゆる能力が、彼のものに。


「やっ……やった……やっと……!!」


「やっと、あの忌まわしき帝国に復讐できるっ!!」


レイの叫びは、深い奈落の底からすら響き渡るほど、力強かった。


──そして、何も考えず、彼は飛び立った。


そう、帝国へ向かって。


……しかし、レイは大きな事実を忘れていた。


──アルヴァリオ大陸と帝国の間には、25年以上かかる距離が存在することを。


結果。


レイは、海のど真ん中に墜落した。


「ちくしょう……そうだった……帝国までの距離、完全に忘れてた……」


「……魔力、もうゼロだし……しばらく、ここで漂流だな……」


そして彼は、果てしない孤独の時間を迎える──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ