嘘の鏡(うそのかがみ)
レイは、自分の目でジュリエットの死を見届けた。
世界は一瞬で崩れ去った――だが、その傷の奥には、燃え上がる決意があった。
「このクソ皇帝ども……待ってろよ。俺が強くなったら、お前らを必ず滅ぼしてやる……苦しませてやる!」
怒りを吐き出した後、レイは深く息を吸い、荷物の準備を始めた。
次の目的地は明確だった――世界の果てにある墓所、ホライゾン・トゥームストーン。
旅は馬車でマンギル王国へ向かうことから始まった。
その後、アルベルナス領を横断し、メルゾーザの森を抜ける。
そこからは七日七晩、歩き続けてアヌイカ大陸にたどり着いた。
そこでレイは、ブラットの遺物――ホライゾン・トゥームストーンに眠るとされる謎の宝を探し始めた。
一日中探し回ったが……成果はゼロだった。
結局、レイは古びた宿に泊まることにした。
その夜、彼は全神経を耳に集中させ、わずかな情報の囁きすら聞き逃さぬようにした。
――そして、ついに掴んだ。
ホライゾン・トゥームストーンは……血のような赤い月と霧の夜にしか現れないという。
謎の崖のそばに。
だが霧も月も現れないまま、一週間が過ぎた。苛立ったレイは、直接崖の様子を見に行くことにした。
暗い奈落の縁で、レイは力いっぱい石を投げ落とした。
――ズン、と鈍い音が響いたその瞬間。
霧が現れた。月が赤く染まった。
空気は一変し、不気味な重圧があたりを包む。
徐々に、墓所の姿が浮かび上がってくる。
錆びた柵、ひび割れた墓石、そして胸を押し潰すような重苦しさ。
ホライゾン・トゥームストーンが完全に姿を現した。
レイは戦闘の準備を整えた……だが、何も起きない。
静寂が支配する中、やがて――
霧の奥から黒煙が渦巻き、集まり……
一人の人影を形作った。
それは――レイ自身に、酷似していた。
「やあ。アーティファクト・ブラットが欲しいんだろ?あげるよ。」
レイの体が強張る。
これは――嘘の遺物。油断は禁物だ。
しかし、行動する前に――
ドガッ
腹に強烈な一撃。レイは吹き飛ばされ、墓石の端に叩きつけられた。激痛が走る。
必死に回復魔法を使い、体勢を立て直す。
再び立ち上がり――構える。
……しかしまたもや、強烈な一撃。
口から血が溢れる。
立ち上がる。倒れる。立ち上がる。倒れる。
圧倒的に不利な戦い。
だがレイは諦めない。希望が霞んでも、傷だらけになっても、
彼は挑み続けた。攻撃を続けた。
――そして、ついに。
レイは瀕死の状態になっていた。




