表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/33

準備

朝の空気はとても心地よく、小鳥たちのさえずりが優しく響いていた。風は柔らかく頬を撫で、世界が少しだけ優しくなったように感じる。


そんな静かなひとときの中、ぼんやりと空を見上げていた俺のもとに、ジュリエットが近づいてきた。


「おはよう、レイ。何してるの?」

「いや、特に何も。ただ……アーティファクトがどこにあるか、考えてただけさ」


俺の答えに、ジュリエットは軽く頷いた。


「そうなんだ。で、これからの予定は?」

「未来のことはあまり考えてない。今はただ、力を手に入れることだけを考えてる」

「それが一番大事よね。私たち、まずは強くならなきゃ」


朝の柔らかな日差しの中、俺たちはしばらく他愛のない会話を楽しんだ。


***


だが、いくら親しくなっても、俺の中に残る“遠慮”の感情は消えていなかった。タダで彼女の家に住まわせてもらっていることに、さすがに気が引けてくる。


――ちゃんと、自分の気持ちを伝えなきゃな。


そう決意し、ジュリエットの前に立った俺は、少し緊張しながら切り出す。


「あのさ、ジュリエット。実は……」

「な、なに!?ま、まさか……私のことが好きとか!?」

「……は?」


いきなり顔を赤くしながら叫ぶジュリエットに、俺は一瞬フリーズした。


「ち、違うって!そういうんじゃない!俺は……ここで働かせてもらえないかって話をしようとしてたんだ」

「あ、そういうこと……てっきり告白かと思って焦ったわ。だって、ほら、よく小説とかでありがちじゃない?」

「まぎらわしい反応やめろ……」


俺はため息をつきながら言った。


「とにかく、タダで居候してるのが気まずくてさ。働けるなら、何でもやるよ。メイドでも何でもいい」

「ふふっ、実はちょうど一人、使用人が逃げちゃってね。そこに入ってくれる?」

「もちろん。助かるよ」


***


翌日、俺は支給された制服を手にしていた。だが、どういうわけか他の使用人たちとは少し違うデザインだ。少し目立つ……が、俺は気にしなかった。


「それで、ジュリエット。アーティファクトの場所は分かったのか?」

「ずいぶん急ね。復讐心が強いのかしら?」

「当たり前だ。もう、時間を無駄にはできない」


ジュリエットは少し黙ってから、静かに語り始めた。


――アーティファクトは「呪われた悪魔の洞窟」と呼ばれる、シャウン洞窟にある。そこはアシュター大陸、魔王が生まれたという、忌まわしき地。


「なるほど……ありがとう、ジュリエット。三日後、そこへ向かう」

「もし良ければ……私も一緒に行っていい?」

「構わないけど、俺がモンスターに食われても泣くなよ?」

「泣かないよっ!」


冗談を交えつつ、俺たちは旅の準備を始めた――それぞれの決意を胸に抱えながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ