夢、焼き尽くされて
火の手が天まで届き、夜の闇を赤く染めていた。
遠くからでも、その熱気が肌を刺すほどだった――村が燃えている。
家の中にいた俺はすぐに気づいた。ここにはもう誰もいない。
父さんと母さんは、きっと先に村へ向かったに違いない。火を止めようとして…。
息を切らしながら、俺――レイは全力で走った。
家の壁にかかっていた剣を手に、握りしめて。
「待ってて、父さん…母さん…俺も行く!」
けれど、村の境界にたどり着いた瞬間、俺の足は止まった。
世界が静止したかのようだった。
村が…完全に焼き尽くされていた。
残ったのは灰と瓦礫、そして倒れた人々の冷たい身体だけ。
「…こんなの、ひどすぎる…誰が、こんな…」
恐怖と怒りが入り混じる中、俺は震える声でつぶやいた。
ゆっくりと足を進め、崩れた家々の間を歩く。
何もない。家も、店も、声も――すべてが死んでいた。
「ふざけやがって…どこのどいつだ…見つけたら、絶対に生かしちゃおかねぇ!」
怒りに任せて叫ぼうとしたとき、目に映ったのは――旗だった。
燃えていない。無傷のまま、堂々と立っている。
それは…帝国の紋章だった。
拳を強く握りしめた。
「そうか…またお前か、アルメイダの女神。手引きしてくれたんだな。感謝するよ。」
今、俺はすべてを悟った。この復讐は、俺一人のものじゃない。
これは…定められた道なんだ。
「いいだろう、帝国の犬ども。覚悟しろ。お前らの地獄は、これから始まる。」
怒りを胸にしまい、俺はゆっくりと踵を返した。
「もう村には、救えるものは何もない…家に戻ろう。」
だが――地獄は終わっていなかった。
家に戻ると、膝が崩れ落ちた。
アレンは…両腕を失っていた。目も、見えない。
ジゼルはもっと酷い。毒で体が麻痺し、目も見えず、内臓までも奪われていた。
その姿に、俺は思わず吐きそうになった。
世界が崩れた。
「クソッ!絶対に許さねぇ…!地獄を見せてやる!」
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翌日、二人は静かに息を引き取った。
でも、俺は――静かになれなかった。
「安心しろ。俺が、必ず復讐する。お前たちは無駄死になんかじゃない。」
だが、俺は痛感していた。今の俺は、あまりにも…弱い。
だが、方法はある。
早く力を手に入れる手段が――禁忌の秘宝、アエゴのアーティファクト。
代償は大きい。だが、場所は知っている。
前世で、俺は情報屋だった。
この世界の闇は、すべて知っている。
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翌朝、俺は二人の墓に花を添え、家を出た。
両親の残した金を手に、帝国の影に覆われたスラム街へと向かう。
そこには…かつての“仲間”がいる。
「ゲームに戻る時が来た。」
「そして、俺の平穏を壊した奴らに…永遠の後悔を刻んでやる。」
俺の言葉には、一片の嘘もない。
そしてそれが――奴らの破滅の始まりだった。