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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

サイラスと皇帝 シオカライ

作者: ふみふみ
掲載日:2025/11/22

「シオ!サイラス様がご帰還よー」

あまり大きな声を出すことのないルビ姐さんがウキウキとした口調で廊下から僕に声をかけてきた。

磨いていた短剣をそこらへんに放り投げてサイラスさんのお迎えに僕は駆け出した。

4か月ぶりにサイラスさんに会える!

まず、お茶を持っていかなくちゃ。

料理場で茶器をお盆に乗せる。

鏡をみて自分の頭や身だしなみをチェックする。

ここは娼館だから、鏡は料理場にもあって便利だ。


そして、自分のきれいな顔を一瞥してサイラスさんの部屋に急ぐ。


サイラスさんはすでに部屋にいた。ちょうど、上着を脱ごうとしていた。

間に合った。サイラスさんの服の着脱は小姓の僕の役目だ。

茶器をテーブルに置いて、

サイラスさんの上着を脱ぐのを手伝う。

サイラスさんの上着は重い。弾や剣を防ぐための鉄板が入っているとのことだ。

続いてブラウスも脱ぐので、それも受け取る。

そのあと、サイラスさんの後ろに回って、

丈夫な鱗皮の下着を脱がせにかかる。サイラスさんは

この下着は絶対外では脱ぐことがないそうだ。

サラマンドラとかいう竜の皮で作っているそうで、

暑さや寒さを全く感じさせないとか。


これまたなにでできているかわからないのだけれども、

その皮の下着をサイラスさんの筋肉質な体にぴったり合わせるための

軽いけれど切れたのを見たことがない紐を解きつつ、

下着じゃなくてこれ鎧だろ、って思う。


鱗皮の下履きの後ろの紐を解くと、

するっと、すべての下着が床に落ちる。


僕はそれを見届けて、床に散らばった鎧の下着を集めて、かごに入れる。

サイラスさんは、ふーっと大きく息を吐いてから、

僕に振り向く。

僕は一枚の布でできたワンピースを渡すと、

サイラスさんはがさっと頭からかぶって、剣がついているベルトを腰に回す。

僕は前方に回って、腰に合うようにベルトを止める。

どうですか?という合図のために僕はサイラスさんを見る。


すると、僕に柔らかく微笑んでから、僕から離れ、顔をソファのクッションに埋めるようにして

ソファに倒れこむ。

「しお、お茶飲んだら、風呂頼みたい」

僕は頷いて、お茶を入れる用意を始める。

サイラスさんに入れた最後のお茶は冬のお茶だったけれど、

もう、夏も近い。お茶は花の香りのする夏のお茶だ。

少しぬるい温度で入れる。


お茶をテーブルに置いて、僕はサイラスさんの入浴の準備に取り掛かる。

隣の部屋にお風呂があるので、それに湯を入れる。

サイラスさんがいつ帰ってきてもいいように、毎日お風呂場は磨いているから、

湯を入れるだけ。

月下の楼にはサイラスさん用に3つの部屋がある。

暖炉付きの居間と主寝室、そして僕の部屋。すべて続きになっている。

風呂場から戻ってみると、サイラスさんがソファに座ってお茶をすすっていた。

明るさをもう少し足そうと、僕は窓を全開に開け放とうと窓枠に手をかけたの、サイラスさんが止めた。

「しお、まぶしすぎるのはよくないからそのままでよい。」

僕は頷く。

サイラスさんはソファを立って、お風呂場に向かった。

僕はタオルやら香油やらを用意するために一緒にふろ場に向かう。

今日の香油は何を使おうかと、棚を前に考えていると、

後ろでざぶんと湯につかった音がした。

サイラスさんはさっき帯刀した剣を猫足バスに立てかけ、いつのまにか、また裸になってていたのだ。

短い赤い髪を後ろに流しながら、気持ちよさそうに目をつぶった。

窓には細い木枠がはめ込まれていて、日差しが直接入ってこない。木枠の隙間からきらきらと光りが差し込み、風のぐあいなのか、光が時々揺らぐ。

サイラスさんの髪はその光の加減で光彩が変化する。じっとしているサイラスさんは多分、お湯加減に満足しているのだろう。

僕は小姓としてなかなかの働きぶりをしている、とちょっと嬉しくなる。


「シオ、私がいない間の楼はどうだった?」

僕はちょっと考えてから、ゆっくりと頷く。

「ふーん。シオが問題ないというなら、よかろう。」


僕はサイラスさんの頭に香油を塗ったり、タオルを用意したりして、

サイラスさんの入浴を手伝い、その後、サイラスさんが居間に戻ってくると、

食事の用意のために料理場へと向かった。


料理場は今日も賑やかだ。そんなに大きくない料理場に

結構大きな人が二人もいればちょっと狭く感じるものだ。

「シオカライ、夕食の用意はできているよ!

閣下に召し上がっていただきな!」

大きな体のチョコナさんが僕を見て、すぐ声をかけてくれた。

チョコナさんよりさらに大きなショコナさんが振り向いて、

ウィンクをしながら言う。

「閣下は運がいい。今日はすごく生きのいい魚が手にはいったからな。」

僕は混ぜ返す。

「閣下はいつでも運がいいんだよ。そうでなくちゃ戦場で生き残れないでしょ。」

「ちがいにない。」

チョコナさんもご機嫌に笑っている。

僕は大きなお盆を両手に料理場を出て、すぐ、自室に戻った。

サイラスさんがお腹がすかせているに違いないから。でもゆっくりと歩く。

お盆のおいしそうな料理がこぼれてしまわないように。








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