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⑥教授の講義

 異物の専門家であるエルモン教授のイベクバの講義が終了した。今回のイベクバは口から酸を吐き出すタイプらしい。偵察部隊である「ブラックファルコン(だせぇ!)」がもたらした情報だ。他の仲間はどう受け止めているのかわからないが、正直、俺は他にもあるのでは?と疑っている。討伐するのが自分たち部隊ではないからか奴等の偵察に真剣さを感じられない(会社内で言ったら滅茶苦茶怒られるから言わないが)。「敵」と「獲物」では攻撃方法も違うだろうに。

 ただ、「口から酸を出して攻撃する」のは確かだろうから、そこは対処方法を検討し処理しなければならない。幻影部屋のイベクバに「酸を吐いて攻撃する」を付け足す必要がある。また、幻影で装備する鎧等に酸耐性を付呪してある仕様に変更してシミュレーションしなければならない。防御技術であるアクオート流のマーガンの練習もか・・。

 それはアクオートという男が今から40年ぐらい前に編み出した技術で、凱力(アクオート流では内なる力をこう呼ぶ。他流派は違う単語を用いるがだいたい似たようなもんだ・・と俺は思っている)を空中に発し範囲防御を行う技だ。放たれた矢等の投擲物を空中で停止させるのだ。問題はイベクバが吐き出す唾が人間の反射神経の手に負えるものかどうかだが。技の発動が間に合わない可能性がある。また、おそらく数通りの使い方をしてくる。パーティ全体を狙い広範囲にダメージを与えるために吐き出す方法、一点集中で唾を飛ばす、もしくは前方に光線のように飛ばす場合もありえる。あらかじめ全てを考慮しておかなければ。「異物」と人間との能力差は大きいのだ。でなければ俺たちは肉も骨も全てグズグズに溶け落ちて屍をそこにさらすだろう。ロモス村の東の湿地帯が俺たちの墓場になる。ただ、戦士だけでなく後衛である魔法使いも戦士の防御技術の同等以上の効果をもたらす魔法をいくつか持っている。常時発動のブレス式、瞬間防御魔法、持続遮断魔法・・。それは、我々盾戦士が行う防御術よりはるかに永続性かつ強固だ。どうするかはリーダーのアザルが戦闘中は指示する。

「さて、講義終了したが、決断は明日再び集まって決めるのでいいか?」アザルが言い出した。

「私は受けても良いと思いますけどね」と魔術師ボルドゥが言った。

「俺が説明するまでもなく手ごわいぞ。半々だ」討伐できるか、全滅するかの勝率。

俺が口を開こうとするとベルが機先を制し、手のひらを俺の口の前に差し出した。

「あんたは言わなくてもわかってるよ、やる気満々じゃないか」疲れたような口調だった。昨日の見学が懲りたのだろう。

皆から笑いがこぼれる。そう言うことで、今回の議論に俺が言えることは何もなくなった。

「一回幻覚ルームで試してから判断しますか?」とグバダが見た目と正反対な静かな声で提案した。

彼は半獣人だ。戦士でもあり魔法使いでもある。俺の給料の1.2倍ぐらいもらってるんじゃないか?クソ。身長は2.3m。熊人か狼人かどちらかの血を引いているって話だが詳しくは知らない。端正な顔立ちをしているのでかなりモテるらしいが、そこもまぁ俺にはどうでもいい。問題は彼の戦闘能力がずば抜けているということだ。剣、盾、魔法全てを使いこなし、力もその体躯からずば抜けている。アザルよりも個体戦闘力は高いんじゃないか?と俺は思っているが、彼には致命的な弱点があった。

 痛みに弱かったのだ。盾で守り回復魔法により再生し隙を見て攻撃する。これが俺たちの基本だ。他のパーティは知らないが「痛みに耐える」のが不可欠。3年目の彼だが最初の割り当てられたのはアタッカーだった。

 しかし、アタッカーは俺たち盾戦士に守られているとは言え、後衛よりも反撃される可能性が高い。自分の痛みと引き換えに敵に致命傷を与えるのだ。何度か幻影戦をこなした結果、自らポジションの変更を願い出た。そして、コンバートされたポジションは「オール」と言うことになった。

これも彼の能力としては最適だろう。最後列の真ん中に位置し、普段は補助魔法、攻撃呪文、回復呪文を唱え、バックアタックや乱戦の際には盾と剣を持ち立ち回る。今では痛みにも大分慣れたようでパーティ仲間からの信頼も厚い。

「幻覚ルームはやめたほうがいいんじゃないかなぁ・・」と呟きだが提案だわからないとぼけた声を俺はあげたのだった・・・。

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