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57.静岡チャレンジ

2日目行きますか…

9時55分にホテルをチェックアウト、外に出ると少し雲は多めだが温かく過ごしやすい。さて、本日は京橋グリーンガーデンで彼女が出演するフリーライブに参戦。11時スタートで出演時間は2番手の11時30分頃からとの情報が入っている。今回のフリーライブ、出演者4組が1ステージのみ演奏と言う、いつもと違う構成だ。


大阪環状線で京橋駅を目指している途中であることに気付く。それは綺麗に桜の花が咲いている。日頃の忙しさに加え、遠征とライブの事しか考えてないから、季節の感覚が無くなるのも当然。だが、車窓から覗く桜と、桜まつりだろうか、多くの人が集まっている光景を見る事でギリギリ季節感を取り戻せた。のか。


何て考えてた直後の10時45分、電車は京橋駅に到着。会場は何度か行ってるから地図や案内板に頼らなくても辿り着ける。俗にいう体が覚えているってやつだが、初めて来た時は歩いてる時間よりも案内板や地図を見てる時間の方が長かった感覚だ。全部を知ったわけではないが、何となく大阪を知ってきたんだと、勝手に思っている。そう、勝手に思ってる。


フリーライブ会場に到着して辺りを見渡すと、ちょっと様子が違う。それは、会場の異常な混雑。とんでも無い人がステージ付近に集まってるだけでなく、モール内の至る所に多くの人が滞在。付近で開催している桜まつりの影響だろう、何とかステージが見える場所だけは確保しなければ。と思った10時54分。


彼女のステージが始まっても状況は変わらず、どころか明らかに人が増えている。ステージ上の彼女はかすかに目視可能、演奏や歌声はしっかり聴こえるという状況。そんな彼女の歌声は、俺達ファンやステージ前に集まった人達だけでなく、桜まつりに訪れたのだろう通りすがりの人達にも響いているようだ。


でも、この1年彼女のライブを見ていると、すぐ受け入れる人と、受け入れない人が両極端だとわかる。俺は受け入れた方の人だが、月日が経ち何度もライブを見ていると、そういうものなんだろうと落ち着いてきた。特にフリーライブを見ていると、その傾向を色濃く感じる。


と、ライブに集中できず、客観的に色々考えてしまうほど人が多いという事実。ギリギリ楽しめるという状況たが、何だか複雑な気分。もっと前方で良い環境で聴きたかったが、こういうのも含めてフリーライブなんだと理解できるようになってきた。


時間は12時6分、彼女の出演が終わると3組目が始める前に物販の列へと並ぶ。いつもは列が落ち着くのを待つのだが、もうすぐ大阪を出発しなけなればならない。それに、もう1つのチャレンジが待っている。ちょっと、いや、かなり時間を使う事を見込んでいるから、早めに大阪を出発したい。だが、物販には俺の前に10人ほど並んでいる。若干の焦りが走る。


意外にに列はスムーズに進み、15分ほどで順番が回ってくる。彼女と今日のライブの感想を手短に話すと、横浜での再会をお互いに誓った。そして最後は「無理せず気を付けて帰ってくださいね」と彼女のやさしさを存分に貰って、物販を後にする。時間は12時25分、既に3組目が2曲目を終えた所だ。


物販横の柱付近に集まってた大阪のファン達と短い挨拶を交わし、相変わらず人の多いライブ会場を抜けて京橋駅へ向かう。時間は昼を過ぎたが、朝ごはんを食べて来たため、お腹は空いていない。ホテルはほぼ満室で、タイミングを間違えると朝食行列に並ぶところだったが、その混雑直前に朝食を食べられてホッとしている。そういう理由でお腹は空いてない。


青春18きっぷでJR京橋駅の有人改札を通る。ここの駅は単純に見えて複雑だ。大阪環状線で大阪方面の電車に乗るだけなら、案内通りに行けばすぐに乗り場へ到着する。だが、ここは東西線の駅でもあり、乗り換え方向と改札方向に移動する乗客が複雑に入り組んで交差する。特に、今日みたいなイベントがあると余計に。


京橋駅を出発したのは12時40分、ここからは大阪駅へ向かい、いつもように普通列車乗り継いで横浜駅を目指す。が、ここから先は特に何も起きないので、豊橋駅到着まで話を進める。


16時42分、3分遅れで豊橋駅に到着。いつもより人が多く、乗り換え時の椅子取りゲームはベリーハードモードを極めたが、何とか豊橋駅までは到着できた。勿論ここから浜松駅へ向かうのだが、慌てても座れないし、体をほぐす意味でも、30数分立って行こうと決意。出発の直前に乗り込んだ。


16時45分、かなり混雑した浜松行き普通列車が3分遅れで出発すると、すぐにスマートフォンを操作。DX-ICで浜松駅から静岡駅まで新幹線自由席を予約。これから始まるチャレンジのお膳立てだ。


17時18分、電車は浜松駅に2分遅れで到着。途中で1分ほど回復したものの、このくらいの遅れは仕方ない。慌てて熱海行きへ乗り換える人達、その流れに逆らうかのように改札口へ向かう俺。と言いつつもそんなに余裕があるわけではなく、ちょっと急ぎ目で改札口へ向かう。


青春18きっぷで在来線から新幹線に乗り換えるのはちょっと面倒。一旦有人改札を抜けて新幹線改札口へ向かわなければならない。今回みたいに乗り換え時間が短いと厄介だ。ま、ヤツが言うには新幹線乗り換え口の有人窓口を使う事もできるらしいが、混んでると迷惑になるとの事。格安きっぷ利用者は大人しく手間のかかるルートを選択しますよ。


時間は17時25分、こだま号は浜松駅を出発。この新幹線、数分前から浜松駅に停車し、通過する新幹線を待ってから出発する。だが、在来線ホームから新幹線が到着する姿を見ると、停車時間があるとわかっていても慌ててしまう。今回みたいに混雑プラス遅れのダブルパンチだと余計にだ。


自由席は空いている。20数分の休憩時間で英気を養い、スマートフォンを充電し、これから始まるチャレンジに備える。さて、今回のチャレンジは前回実行しようと思ったが、時間の都合で行けなかった静岡の名物ハンバーグを食べてくるというミッション。かなり並ぶということと、静岡駅ではなく新静岡駅の駅ビルまで行かなければならないという情報。一応、調べてはきたが、実際行ってみないと何とも言えない。


と、考えている間に17時52分、新幹線は静岡駅に到着。下車するとチャレンジスタートだ。まずは新幹線の改札口を出て、駅のコンコースを抜けていく。その先にある地下へ降りる階段、下って行くと地下通路だ。と、ここまでは問題ない。一応、事前に地図で確認しているが、初めての場所でたどり着けるのか不安が過ぎる。いつも初めての場所へ行くと不安が過ぎるが、こればかりは慣れないようだ。


地下道に入ると天井付近に案内板がある。これを見ながら新静岡駅へ向かって行くが、方向が正しいのか良くわからない。すると、突然階段が現れて地下道は終わりを告げる。地上に出て現在地を確認すると、間違ってないようだ。その後、少し歩いて交差点を右へ折れる。さらに少し進むと駅ビルが見えるはずだが見当たらず。うーむ。


地図で調べてみようと思ったが、人の流れが同じ方向に向いているのに気付く。少し先へ行くと、交差点の先が新静岡駅の駅ビルだった。地図で調べた時には道は単純で駅ビルと言う事もあり、わかりやすいと思ったが、結局迷ってしまった。


時間を確認すると、18時12分。大変なのはここからだった。新静岡駅の駅ビルに到着できたのも束の間、混雑するエスカレータで5階へ上る。今日はどこに行っても人が多い印象、御多分に漏れず静岡に来ても人が多く、5階に到着するまで数分の時間を要してしまった。


エスカレータを上ったすぐ目の前、意外にも店はあっさり見つかった。が、その安堵感を打ち破る凄い人。この人達全員ハンバーグ目当てかと、恐る恐る店の前へ行ってみると、並んでいるのではなく番号を貰って適当に待っているようだ。なぜ、そう思ったか、店の入り口に番号を発券する機械を見つけたからだよ。


ということで、早速発券しようと表示を見ると、54組待ち、時間にして約120分待ちだと。って、正気の沙汰ではない。それに120分って入店時間だよな、ということは入店は20時過ぎ、そこから注文して食事して会計したら。いやいや、そんなこと考えてる時間は無い。発券しないと、後ろにも人が並んでる。


ということで、678番と書かれた紙を受け取り、発券機の前を離れる。その後は駅ビル内をウロウロしても、なかなか時間が過ぎず。19時15分になって店前に戻ると650番が呼ばれている。本当に大丈夫か、帰れるのか。不安になって時間を調べてみた。


横浜に普通列車で帰るには21時14分発の電車が最終。そうなると、ここを20時55分頃に出ないと危ない。新幹線を使うともう少し遅くても大丈夫みたいだが、20時55分出発は死守だ。と、考えながら結局時は過ぎ、俺の番号が呼ばれたのは、20時17分。待ち時間はほぼ正確だった。


周りは家族で来ている人が多く、1人何て俺くらいかと思ってたが、実際にはチラホラ1人客はいるようだ。ま、有名だからだろう。何てやってる時間はない、席に着いてからも戦いだ。事前に教えてもらったハンバーグにライスとスープとドリンクのセット、ドリンクはホットコーヒー。これだけ注文して後は待つのみ。あ、ソースはオニオンソースで。


す、凄い…

待つこと約15分、運ばれてきたジュージューの鉄板には大きな肉の塊が1つ。ちょっとメニューに載っていたものとは違うが、これから店員が半分に切るらしい。俺は店員に言われる通り、紙のチラシのようなものの端を持ち上げて、その時を待つ。


店員によって鉄板上でナイフを入れ2つになった肉の塊、鉄板で肉の内側を追い加熱するように押し付ける。さらにオニオンソースがかかると、ジューという音とともに立ち上る湯気と匂いが空腹の中枢を貫く。なるほど、メニューに載ってた画像はこの状態の光景か。


少し待って湯気が落ち着いた頃、一口食べてみる。ザ・肉だ。100%の牛肉ハンバーグに舌だけでなく脳も心も支配された。こんなに美味しいハンバーグなら何百グラム食べても。いやいや、味わってる時間は無い。今の時間を確認すると20時37分、危険水域に入っている。


お腹が空いていたから出来たのだろう、こんな事をしたのは初めてだ。熱々の鉄板上にあるハンバーグ、野菜をご飯と共に一気に食べ、スープを飲み干す。食後にと指定したホットコーヒーも急いで飲むと退店準備だ。支払いを済ませて店の外出ると、まだ多くの人が待っていた。が、急いで静岡駅に戻らなければならない。


エスカレータを使って1階へ下り、新静岡駅の駅ビルを出たのは20時59分、タイムリミットを告げるアラートランプが灯り始めた。記憶を頼りに横断歩道を渡って右へ。地下へと続く階段を見つけ、人を避けながら降りて、静岡駅を目指して地下道を歩く。が、途中で静岡駅の表示が無くなり、見たことが無い場所に戸惑う。どうやら間違ったらしい。ランプ点灯だけでなく、警報もなり始めた21時4分。


すぐに来た道を戻って、静岡駅の方向を確認。人の流れに惑わされず、しっかりと案内板を見ながら静岡駅を目指す。静岡駅の構内に到着したのは21時9分。あと5分。週末を楽しんで帰宅する人達だろうか、多くの人が行き交う静岡駅。在来線の改札口まで行くと、有人改札には数人の行列。あの、ちょっと。


前の人の対応が終わらず、後ろで青春18きっぷを持ってスタンバイする俺。焦りに焦るが、時は無情にも過ぎていく。その状況を見たのかわからないが、もう1人の駅員が出てきて青春18きっぷ対応を開始。俺も改札を抜けるが、この時点で21時13分。あと1分。


もう少し頑張るんだ…

階段を駆け上がる途中で、熱海行きの電車が発車するアナウンス。心の中で、待ってくれと、叫びながら階段を駆けあがると、発車の笛が鳴る。その刹那、俺は扉が閉まるギリギリで車内へと飛び込んだ。何て、かっこいいこと言ってみるが、単なる駆け込み乗車だ。良くない良くない。


キレに切れた息を整えながら、電車に乗りながら思う。今回は時間的にギリギリのチャレンジになってしまったのが心残りだ。ゆっくりと美味しいハンバーグを味わえる時間を作るべきだったと。しかし、このチャレンジも始めたばかり。次は何をしようか。


この後は、熱海駅で電車を乗り換え、横浜駅に到着したのは、もうすぐ日付が変わる23時49分。土日の約44時間を使って大阪へ遠征し、ライブを楽しんだ週末も、もうすぐ終わり。明日はまた辛い月曜日になりそうだが、次の遠征、次のライブ、次のチャレンジの事を考えると楽しみの方が大きい。と、遠征の余韻に浸りながら家路につく。


そして翌日、週末の件を会社で話していると、何やら周囲から俺は「遠征通」と呼ばれている事を知った。

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