1.新幹線の切符を買う
今日は3月11日月曜日、時間は19時を少し過ぎた頃。俺はJR横浜駅のみどりの窓口に来ている。今度の日曜日、3月17日に大阪のとあるライブハウスで行われるライブを見るため、新幹線の切符を買いに来ているのだ。
なぜそうなったのか?この辺りの経緯は後で説明するとして、1人で大阪行くのも、新幹線の切符を買うのも初めてで少し緊張している。
新幹線の切符買うくらい何て事ないだろうと思ってきたのだが…
あ、順番が来たようだ
「大阪までお願いします」
「えっと…」
「横浜から大阪まででよろしいでしょうか?」
「新幹線使いますか?新横浜から新大阪でよろしいですか?1名様ですか?いつ乗車しますか?片道ですか?」
お、おっと…
自分で新幹線の切符を買ったことが無かった俺は窓口の人が言った怒涛の質問にたじろいでしまいそうになる。ここは何とか気持ちを立て直して
「大阪の心斎橋まで行きたいんですけど。1人です」
「それじゃ、新幹線で新大阪まで行って地下鉄に乗った方が便利だと思いますけど、乗車券は横浜市内から大阪市内にしておきますけど良いですか?」
「新幹線は新横浜から新大阪までご乗車でよろしいですか?」
「はい」
何か途中理解が追いつかず聞き取れなかった部分もあり、俺はとりあえず「はい」と答えるしかなかったが、窓口の人からすぐに次の質問がやってきた。
「いつ出発ですか?」
「今度の日曜日です」
「今度の日曜日は… 3月17日で間違いないですね?」
「指定席取りますか?新幹線の出発時間のご希望はありますか?」
18時より少し前にはライブハウスに到着したいが、新幹線の出発時間までは気にしていなかったことに気付く。新大阪着17時くらいで大丈夫だろうと考えて
「新大阪に17時頃到着するやつが良いんですけど」
「それなら… のぞみ41号が新横浜14時48分発で新大阪着が17時」
「指定席ですが… ちょっと混んでいて窓側は満席、通路側は今のところ空いてますが、座席のご希望ありますか?」
窓側空いてないのか、通路側でもどこでも良いか…
正直、新幹線の座席なんてあまり気にしていなかったので、どこでもいいと思ったが、座席の希望とはそういう意味ではない事を俺はこの時良くわかっていなかった。
「通路側で大丈夫です」
「13号車の7Dが取れますけど、これで良いですか?」
「はい」
「お帰りは?」
「新大阪からの新幹線、今取って行かれますか?」
「はい… ちょっと待ってください」
帰りは何時になるんだろうか…
行きの事も何となくしか考えていなかったが、帰りはもっと考えていなかった事にまた気づいてしまう。ライブが18時30分スタートで、2時間とすると20時30分終了なら、21時30分頃に出発する新幹線に乗れれば大丈夫だろうか
「新大阪21時30分頃出発の新幹線でお願いします」
「新大阪発で東京行きの最終が21時24分になるんですけど、それで良いですか?」
「それと、いつご乗車になりますか?」
「そ、それで大丈夫です。あ、行きと同じ日です」
「のぞみ64号、新大阪21時24分発で新横浜23時27分着ですね」
「今調べてみますので、ちょっと待ってください」
大阪から横浜までの距離を考えると新幹線の最終は21時24分になるのか…
ライブが押すと危ない、時間を気にしてないと新幹線に乗り遅れるかもしれない…
ふと見ると、端末を操作している窓口の人が、ちょっとイライラしているように思えるのは気のせいではない。俺が何もわかっていなくて時間がかかっているというのは、他の窓口の雰囲気を見ても明らかだ。
カタカタと操作している窓口の人がちょっと困った顔で
「日曜日の最終は混んでるのでね…」
「指定席だと、通路側は16号車の12Cしか空いてないですけど良いですか?窓側は満席で、あとは3列席の真ん中になります」
「あ、はい、通路側のそれで大丈夫です」
「それじゃ、発券します」
「支払いは現金?クレジットカード?」
「クレジットカードで」
この時点で窓口に来てから約15分が経過、切符買うだけでかなり手間取ってしまった。
窓口の人が端末を操作して切符が出てくるのを待ちがら、俺は支払いに使うクレジットカードを用意。何とかライブへ行くための交通手段は抑えることが出来た事にホッとする。
「こっちが行きの分の乗車券と新幹線特急券、のぞみ41号14時48分新横浜発で新大阪には17時着、座席が13号車7D」
「そしてこっちが帰りの分の乗車券と新幹線特急券、のぞみ64号21時24分新大阪発で新横浜には23時27分着、座席が16号車12C」
「乗車券は両方とも横浜市内から大阪市内までにしてます」
「併せて28,380円です。クレジットカード一括で良いですか?」
「あ、はい」
窓口の人にクレジットカードを渡して決済してもらうと、伝票にサインを求められる。サインを書きながら、ふと思う。
ライブ見に行くだけで3万円の出費だと何回も行けないよな…
横浜から大阪まで新幹線往復で約3万円というのが頭の中を何度も巡る。サインを終えて、窓口の人に伝票とペンを返すと
「はい、それじゃ気を付けて行ってきてください」
「それと、次からは後ろの台にある申込用紙に記入してくださると早く出来ますよ」
2枚の切符と利用控え、支払いに使ったクレジットカードを受け取ると、窓口の人が言っていた言葉の意味を気にすることもなく、みどりの窓口を後にした。大阪までの交通手段を手に入れた事と、日曜日のライブが待ち遠しくて気持ちが高まった俺は、初めての遠征が波乱の連続となる事をこの時は知る由もなかった。