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異世界恋愛系(短編)

聖女への嫌がらせで断罪されましたが、濡れ衣です。仕方がないので氷魔法をぶっぱなしてから、元雪だるま(現理想のイケメン)と駆け落ちしたいと思います。

「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。規定により、1000文字以内の作品となっております。

「ヴェロニカ、君との婚約は破棄させてもらう。聖女への不敬の数々を思えば当然だろう」


 王宮の夜会にて、王太子が唐突に宣言した。


「暇さえあれば聖女に氷魔法をぶつける。公式行事はおろか、非公式の茶会にさえ聖女の参加を許さない。窓も暖炉もない小屋に押し込め、食事は冷え切ったもののみ。何か反論はあるか?」

「すべて事実でございます。しかし」

「見苦しい。謝罪すらできないとは。お前と話すことは何もない。連れて行け」


 衛兵に囲まれた。()()()()()


 その時、幼げな高い声が響いた。


「ヴェロニカ様!」

「聖女様、いけません! お命にかかわります!」


 小さな影が駆け寄ってくる。自分の状況も忘れて、悲鳴をあげた。


 だって聖女様は「雪だるま」なのだ。暖かい室内にいてはとけて(死んで)しまう。


「彼らは私の命を対価に、聖女召喚をやり直すつもりなのです。お逃げくださいませ!」

「小賢しい。二人とも殺してしまえ!」


 魔法で暴風雪(ブリザード)を呼び、目眩(めくら)ましをしつつ攻撃をかわす。だがあまりにも数が多い。


「観念しろ!」


 衛兵の剣が振り下ろされた。もはやこれまでか。けれど、想像していた衝撃はない。


 代わりに雪だるまが真っ二つになり、床に転がっていた。


「聖女様!」


 理不尽な婚約を受け入れた時から、召喚(誘拐)される聖女様を守ると決めたのに。


 力が暴走し、辺りが白く染まる。構うものか、いっそこのまま……。


「大丈夫、わたしはここにいるよ」


 甘い低音とともに、後ろから抱きしめられた。振り返れば、見知らぬ美しい男がひとり。なぜか胸がときめく。


「召喚の際に、力を喰われてしまってね。一時的に幼生になっていた。あなたのおかげで、成体に戻ることができたよ」

「……聖女様?」

「男だけれどね」


 王太子がわめき散らす。


「その顔なら、男でも我慢してやったのに!」

「わが同族はお前のような(やから)(もてあそ)ばれたのか」


 聖女(?)様が、国王陛下の王笏(おうしゃく)を破壊した。これで長年続いてきた召喚の儀式もおしまいだ。


「復讐に意味はないと言うが、やられたままというのは性に合わぬ」


 彼とともに、(下半身で)(物事を)(考える男)の下肢を氷漬けにする。見事な雪だるまの完成だ。運が良ければ、()()()もなく助かるだろう。


 愚かな王族の治める国は終わり、新しい時代がやってくる。けれどそれを見届けるのは、私の役割ではない。


「ヴェロニカ。妻として、わたしとともに来てくれるかい」

「喜んで」


 強く美しい理想の男。彼と見る未来はどんな色をしているのか。差し出された手を取り微笑んだ。

【王国】

100年ごとに、聖女召喚を行っている。基本的に見目麗しい女性が召喚され、王太子の妻に召し上げられる。もちろん望んで来ているわけではないため、聖女たちが穏やかに一生を過ごすことはない。今回の騒動の後革命が起き、政治体制と民衆の意識が大きく変化した。



【ヒロイン】

真面目で地味な伯爵令嬢。氷魔法が得意。魔力量が高い。


今年は召喚の年にあたるため、聖女召喚の後は婚約を解消されることがわかっていた。それでも王太子に婚約者が不在というのは外聞がよくないということで用意された繋ぎの婚約者が彼女である。女性側にはあまりメリットがないため、爵位がほどほど、かつ魔力量が高い彼女に押しつけられた。


形式上は王太子の婚約者なので、しっかりお妃教育なども施されている。


公にはなっていないが、聖女召喚が失敗した場合には、やり直しの儀式を行うための贄になることが決まっている。断罪を受け、王国に愛想が尽きた。


もともと召喚そのものに疑問を抱いており、召喚された聖女がまだ幼い子どもだったことで、絶対に彼女を守り抜くと決めていた。


いきなり子どもだと思っていた雪だるまが美青年に変化したのでびっくりしたが、聖女が死ぬよりは100万倍いいと喜んでいる。なお、理想のイケメンだったので、誘いには即答した。


駆け落ち後は、新しい国で楽しく過ごしている。召喚を行っていた国出身ということで、嫌われることも覚悟していたが、ヒーローとともに王家に立ち向かった勇者として歓迎されている。



【ヒーロー】

中性的な美人。怒るととても怖い。

雪の精霊。


精霊の国で行方不明事件が定期的に起こっていたため、各種族の精霊たちと協力して調査していた。魔法のレベルはピカイチ。行方不明事件の発生頻度から、次に召喚が行われる日時を予測。召喚元の国を滅ぼすために、召喚の儀式を逆手にとり、主人公の住む王国にもぐり込んだ。


召喚された精霊(女性)と無理矢理入れ替わったため、魔力を予定以上に失い、幼生の姿になる。そのため女のフリをして、王太子をたらしこむという作戦ができなくなった。(召喚された聖女たちは幼生までは退行しなかったが、魔力を失い、人間と同じように暮らすしかなかった)


王国全部を壊滅させるつもりだったが、主人公に保護されたため翻意。王家の威信を地に落としたあと、主人公を妻として自国に戻った。


主人公にベタぼれ。主人公は、周囲がみんな美人なので、地味顔が逆に新鮮なのだろうと考えていることが、少しはがゆい。



【王太子】

絶世の美女を獲得できると信じて、ただひたすらそれをご褒美に努力していた。ところが召喚された聖女が、美女どころか雪だるまだったため、ショックでたががはずれた。


今まで理性(他のひとより弱め)で抑えていた欲望(他のひとより強め)その他が漏れだしてしまったため、雪だるまに対しての言動はただのクズ。ヒロインからの一撃及びその後のもろもろでやっと反省したが遅かった。

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