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Star Override  作者: ふみん
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星海町ミッドナイトPart.2

「あんた何時だと思ってるの!朝よ!」

いつもの朝がやってきた。昨日の出来事が嘘だったみたいに。

あの時死んでいたら母親ともお別れだったんだろうな。

一瞬そう思ったが朝のイライラに押しつぶされ、不機嫌に支度を始めた。

今日から授業が始まる。昨晩買ったノートはしっかり持って帰っていた。

支度を済ませ家を出る。昨夜の吹雪は嘘だったかのように止んでいた。


あれだけ道路に積もっていた雪も左右に避けられていた。

スニーカーが雪を踏むたびに小気味の良い音を鳴らす・・・

なんてエモい想像も儚く散り、いつもの生活に戻っていた。


「おはよ、悠希。」

そこにはいつものように姫川凛子の姿があった。

俺は思わず笑顔が零れてしまった。

「なにいきなりキモいんだけど。」

「うるせぇ!」

昨日はあんな感じだったが凛子も朝は大体テンションが低い。

お互い朝は弱いことを知っているので特に気にせず会話を続けた。


「え、なにそれ。」

「俺だって分からねぇよ・・・」

昨日の出来事を凛子に話した。信じてもらおうとは思っていない。ただ聞いてほしかった。

「別に疑ってるわけじゃないけどさ、夢でも見たんじゃない?」

「いや、でもその時買ったノートは手元にあるんだよ。」

「はぁ、変な話だね~。」

凛子と話せる時間は駅から学校の僅か10分間。

そこで結論が導き出せるはずがなく、いつものように校門で凛子と別れた。


国語、算数、影、軍人

今日は一日中昨日の出来事が頭から離れずにいた。

そして気が付くと下校時刻になっていた。

教室から廊下に出ると凛子がいた。

「悠希、一緒に帰ろ!」

朝に比べるとだいぶテンションが上がっていた。

「うん、帰ろっか。」

凛子と一緒に帰るのは久しぶりだ。って言っても10分間だけだけど。

「今日の朝教えてくれた話なんだけどさ・・・」

凛子からこの話を切り出してくるとは正直意外だった。

「私もそれから色々考えてみたけど、結局よく分からなかったんだよね。」

凛子は苦笑いでそう言った。

「そっかぁ、そりゃそうだよなぁ」

考えてくれたっていう一言、それだけでとても心強かった。

「もう一回同じ場所に行けば分かるんじゃない?」

「いや怖すぎだよ!二度と行くもんか!」

確かにもう一度あの場所に行けば何か分かるかもしれない。

しかし、昨日あれだけ怖い思いをした身からするともう一度行くなんてできるはずがなかった。

夕焼けが僅かな雪に反射して輝いていた。そして凛子が思いがけない提案をした。

「じゃあさ、私も付いていく!それなら平気でしょ?」

「どうしたらそうなるんだよ!凛子が同じ目にあったらどうするんだよ!」

「きっと大丈夫だよ、まだ明るいし、今回は2人だよ?」

「お前のその自信どこから来るんだよ・・・」

「だって気になるし、悠希も気になるでしょ?」

押され気味に言われて思わず承諾してしまった。

そして俺はあの場所へもう一度足を運ぶことになった。



時を同じくして星海町のとある一角。

「新しい拠点、見つかって良かったですね!」


「ああ。しかし奴らがもうここまで来ていたなんて・・・」


「何かきっかけのようなものがあるのでしょうか?」


「分からない・・・だがそれを調べるためにこの町に来た。」


コートを着た軍人のような男と黒い髪を後ろで束ねた女は倉庫の中に消えていった。



「ここが悠希が襲われた場所?」

「ここだよ。俺は昨日ここで地獄を見た」

裏路地は昨夜に比べてまだ明るかったがそれでも禍々しい雰囲気を放っていた。

「じゃあ入ってみようか」

凛子は臆せず入ろうとする。

「なぁ本当に言ってるのか?凛子だって危ない目に合うかもしれないんだぞ?」

「その時は悠希が助けてね」

「勘弁してくれよ・・・」

「とりあえず危なそうだったらすぐに逃げよ!ね?」

凛子の溢れんばかりの好奇心はどこから生まれるのだろうか。

「・・・分かったよ。少しでも何か違和感があったら全力で逃げるぞ」

「うん!」

俺と凛子は裏路地に入って行った。


「今のところおかしい所は無いね」

「そうだな。」

悠希は鉄パイプを拾い上げた

「これは昨日の・・・」

「血はついてないっぽい?」

「怖いこというなよ!」

「もう少し探せば何か出てくるかもね」

凛子は周りを探り始めた。

しばらくして凛子が突然声をあげた。

「ねえ見て!凄いもの見つけちゃった!」

凛子の手に握られていたのは銃弾だった。

「これは、昨日の男が使っていた・・・」

昨夜の記憶がフラッシュバックする。俺、昨日死にかけたんだよな。

「もうそろそろ帰ったほうが・・・」

急に悪寒がしてきた。まるで背筋を誰かになぞられているようだ。

「ねえ、これどうしたらいい・・・?」

凛子の様子がおかしい。

「どうしたら良いってなんだよ!早く帰るぞ!」

「帰りたいよ・・・でも、足が動かないよぉ」

凛子が震えたような声で怯えている。

「おい、まさか・・・」

凛子の足元を見る。間違いなく昨夜の影だ。

「うおおおおおおおお!!」

鉄パイプで影を何度も叩きつける。が、全く効果がない。

凛子は連れ去られるように少しずつ沈んでいく。

「悠希・・・怖いよ・・・」

「絶対助かる!待ってろよ!」

俺は必死に影を叩きつけた。

同時に地面も叩きつけているのか、手がビリビリする。

しかしそんなことが気にならないくらい俺は全力で叩き続けた。

影のようなものは更に凛子を飲み込んでいき、腰にまで達していた。

「もうダメみたい・・・悠希だけ逃げて・・・」

凛子は蚊の鳴くような声で言った。

俺は何も言えなかった。正直助けられる自信が無くなっていた。

でもこんなところで逃げてたまるか。

俺は凛子の手を強く握った。手に何かが握らされた。

「何かのヒントになるかも・・・」

渡された銃弾。昨夜の記憶。

俺は咄嗟に鉄パイプの穴に銃弾をねじ込んだ。

偶然か必然か。丁度良くハマってくれたらしい。

「うおおおおおおおおお!」

銃弾付き鉄パイプを力いっぱい振りかぶった。

「絶対助けるからなあああああ!!」

渾身の力で足元の影を突き刺した。

すると影のようなものは凛子を離し、うめき声をあげながら消えていった。


「はぁ、はぁ。怖かった・・・」

「凛子大丈夫か?怪我してないか?」

「悠希ってばお母さんみたい・・・うぅ・・・」

「うるせぇよ・・・本当に良かった。」

おどけたような態度を取る凛子。

しかし身体はまだ怯えているのだろうか。ひざをついてしまい立てなくなっていた。

「凛子、立てるか?この場所から早く離れた方がいい」

「そうだね・・・早くここから出ないと・・・」


凛子がようやく落ち着いて裏路地から抜け出そうとした時、声が聞こえた。

「お前達、何をやっている!」


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