82:トッコと妹ちゃんと姪っ子ちゃん
療養中に厩務員さん達のお話で、お馬さんでも入れる温泉の話が出ました。
「キュフフフン」(温泉いいなぁ、ゆっくりしたいなぁ)
馬房に来た調教師のおじさんに、思いっきり上目遣いにお願いしてみました。
※トッコは寝藁で寝転んでいます。
「ん? よしよし元気が出て来たな。だいぶ体重が回復して今日は飼葉も少し増やしておくか」
「キュフフン」(違うの~温泉なの~)
調教師のおじさんにおねだりしているんですが、全然言葉が通じません。むぅ、露天風呂とか行った事無いんですよね。お猿さんが来る温泉とかあんな感じかな? でも、お馬さんが入ったらお湯がドバーって出ちゃいません? そうなると、沸かしてたら大変だから天然かけ流しの可能性が大ですよね!
天然温泉に思いを馳せていたのですが、残念ながら私の願いは届かずに予定通りに北川牧場へ明日移動する事となりました。
「ブフフフン」(桜花ちゃんに会えるから別にいいもん!)
天然温泉への思いを、桜花ちゃんに出会える気持ちで何とか抑え込みました。
ちなみに、今日は明日ご一緒に北川牧場へと帰る妹と事前の面会だそうです。久しぶりの御対面かな?
でも、お母さんが怖くて妹ちゃんとは殆ど交流出来てないんですよね。牧場で一緒に遊んだヒカリお姉さんの子供は、栗東の方にいるそうです。
「ブフフフン」(引綱でのお散歩ですね)
私がお散歩コースへと向かうと、ヒヨリのところのおじさんがお馬さんを引いて待っていました。
「ブルルルン」(妹ちゃんかな?)
私がトコトコ歩いていくと、ちょっと妹ちゃんが警戒しているような気配がします。
「お手数をお掛けしますな。サクラハキレイの産駒のサクラフィナーレです」
「うん、何となくベレディーが来た頃に似ていますね。確かにまだ幼い感じですね」
おじさん達が話をしています。
私はすぐに近づくことなく、妹ちゃんが少し落ち着くのを待ちます。何となく繊細な感じ? ヒヨリはどちらかと言うと勝気な感じだから全然違うなぁ。お馬さんでも色々ですね。
「キュヒュン」
「ブフフフン」(お姉さんですよ~)
怯えさせないようにゆっくりと近付いて、お互いにお鼻を合わせてフンフンしてご挨拶です。その後、何となく落ち着いた雰囲気を見せる妹ちゃんに、首の辺りをハムハムしてあげます。
「ほう、フィナーレは緊張しているようだがグルーミングを受け入れたなら大丈夫そうだ」
「やはり馬でも姉妹という事もあるのですかね? まあベレディーがおっとりしていますから、余程警戒されない限り大丈夫かと思っていましたが」
「母馬とベレディーの匂いが似ているのかもしれませんね。北川牧場ではヒヨリが母馬にべったりだそうです」
なんと! ヒヨリはお母さんと一緒にのんびり出来ているようです。寂しがり屋なので、お母さんが受け入れてくれたのであれば一安心ですね。
一通りハムハムして、途中から妹ちゃんもハムハムして来て、ご挨拶が終わったので一緒にお散歩です。
その後、私の後にトコトコついてくる感じで一緒に並んでお散歩しました。
段々と私やうちの調教師のおじさんにも慣れて来たようで、最後の方は楽しそうに歩いていましたから、明日の移動での心配は無さそうですね。
牧場でもヒヨリがお母さんと仲良くしているみたいですし、妹ちゃんと変に争ったりは無さそうかな? 一抹の不安はあるのですが、とにかく明日は久しぶりに北川牧場へと向かうのです。
「ブルルルン」(途中で温泉寄っても良いのよ?)
北川牧場への帰り道の途中にあるそうなんですよね~温泉。ゆったり温泉に浸かって、美味しいリンゴを食べながら景色を楽しむとか、良さそうなんだけどなぁ。
◆◆◆
栗東にある太田厩舎を経営する太田調教師は、サクラハヒカリ産駒であるプリンセスミカミの調教状況を確認する為に北海道にある育成牧場まで脚を運んでいた。そこでプリンセスミカミの仕上がり具合を見ながら新馬戦の日程に悩んでいる。
「サクラハヒカリ産駒で重賞勝ちはいないんだが、サクラハキレイとカミカゼムテキの産駒評価が爆上がりだからなあ」
もっとも、プリンセスミカミを所有する三上氏は、そこの所は良く判ってくれている。その為、笑いながら焦らずにじっくり行こうと言ってくれたのだが。
「予想以上に仕上がりが悪くないよな。いくらか予定を早められそうだが」
「はい、馬体的にも、精神的にもまだまだひ弱な所はあります。ただ、全体的なバランスは悪く無いですね。坂路も嫌がりませんから、サクラハキレイの血統からするとトモの張りも悪くありませんね。意外に中団差しは行けると思います」
「そこは父のドレッドサインの血かな」
サクラハキレイ産駒の特徴でもある末脚の弱さを改善させる意図もあり、マイルチャンピオンシップを勝ったドレッドサインを種付けたようだ。
「牝馬としては芝1600mを走れなければ厳しいですからね。まあ思いっきりお嬢の叔母に例外はいますが」
そう言って笑う調教助手を軽く睨みながら、目の前を駆け抜けるプリンセスミカミを見る。
「悪く無いなぁ。これはひょっとするとひょっとするな」
「ただ、あのミナミベレディーとサクラヒヨリを見ていると、騎乗に癖がありますが?」
ミナミベレディーは最初から、そしてサクラヒヨリは途中からではあるが鞭を使用していない。
恐らく鞭を使うと走る気を無くすなどの癖があるのだろう。ただ、鞭を使用しなくなってサクラヒヨリは重賞を制覇していた。それ故に間違った選択ではなかったという事だ。
「調教していてどうだ? やはり鞭を嫌うか?」
「まあ嫌わない馬なんて稀でしょう。ただ、それで走る気を無くすという事は無いですね」
「ふむ。ちなみに、手鞭で走ると思うか?」
「試してみましたが、今ひとつでした」
調教助手の言葉に、太田は少し考える。しかし、何か良い方法が思いつくわけでもない。
「あとは、騎手をどうするか。もっとも、その前にデビュー戦を何時にするかだが。8月に札幌で走らせるか」
「8月第3週あたりですね。芝の1500mあたりなら、2000でも良いと思いますが」
「思い切って走らせるなら芝1500mだろうな。牡馬混合にはなるが、ゲートさえ失敗しなければ問題無いだろう」
プリンセスミカミはどちらかと言うと精神面でまだ幼さを残すが、晩成と言われるサクラハヒカリ産駒としては非常に仕上がりは早い。流石に6月デビューは論外だったが、今の感じでは8月中頃であれば問題なさそうだった。
「それこそ、GⅢくらいなら獲ってくれそうだな」
そう言って笑う太田調教師だが、これはミナミベレディー、サクラヒヨリの評価がGⅢなら獲るだろうがから来ている、ここ最近一部で流行っているジョークだった。
「そうですね、これで精神面さえ鍛えられれば。美浦にいるミナミベレディーの全妹はどうやら年内のデビューは難しそうですし、実際の所あちらの評価は結構厳しいみたいです」
ミナミベレディーの全妹と言う事で、競馬関係者の注目は当たり前ではあるがサクラフィナーレにも注がれている。ただ、その調教などを見た関係者たちは口をそろえて良くてオープンではとの評価だと聞く。
「まあ仕上がりが遅れるのは、サクラハキレイ産駒においては普通の事だからな。ここ2年がちょっとおかしかっただけだ。もっとも、プリンセスミカミで桜花賞を獲れたら、それこそサクラハキレイの血統は引く手あまたになるぞ?」
「そうなって欲しい物ですね。うちもここ数年GⅠ勝利から遠ざかっていますから」
太田厩舎では、過去に3回GⅠを勝利していた。ただし、3勝がヴィクトリアマイル、スプリンターズステークス、フェブラリーステークスと別々の馬での勝利。そして、クラシックなどにおいては残念ながら掲示板にすら載った事は無かった。
「まあプリンセスミカミで桜花賞はともかく、どこかの重賞くらいは獲らせてやりたいが」
「そうですね。まあ今だとオープンまで行けば繁殖には回れそうですが」
ミナミベレディー達の御蔭も有り、サクラハキレイの産駒達は今注目の血統の一つになっていた。ただ、それであっても重賞勝ちしているのとしていないのでは大きく違う。
「あとは騎手だよなぁ、誰に頼むか」
「そうですねぇ、悩みますね」
悩む二人の視線の先では、上機嫌にコースを走るプリンセスミカミの姿があった。
感想で温泉のお話があって思わず反応しちゃいましたw
ただ、温泉と言っても聞いて思ったのとはやっぱり違いました^^;
まあ当たり前なんですけどね。良く考えると、馬の肩まで浸かれる温泉何てねぇ。
あと、姪っ子ちゃんはやはり栗東におみえでした!
でも、仕上がりは早いみたい? 父親の差でしょうか?
ワクチン接種でご心配頂いてありがとうございましたm(_ _)m
ご心配をお掛けしました。2日目の今日は平熱に下がっています! 腕はまだ思いっきり痛いですがw
怠さ、肩凝りなどはあるんですが、これはいつもの事なので副反応の所為にしたら怒られそうですね!
登場人物表のご希望がありました、要りますよねぇ。私も欲しいです!(チョットマテ
今度のお休みに時間があれば・・・・・・期待せずにお待ちください><




