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45:エリザベス女王杯 直後

『各馬ゲートに納まりました。係り員がゲートを離れ、スタートしました。4番ファニーファニー好スタート、先頭に立ちます。6番フルーツパーラーやや出遅れたか、14番ミニマイスマイルも好スタート、手綱が動いて先頭を伺う勢いだ。3番手にはミナミベレディーそのすぐ後ろにはタンポポチャ、タンポポチャは今日は前よりからのレース・・・・・・。


 先頭は変わらず4番ファニーファニー、14番ミニマイスマイルが競い合っている。1000m通過タイムは59秒3、これは早いタイムだ、2200mこれで保つのか!そのすぐ後ろに6番フルーツパーラー、ここから2馬身離れて7番ミナミベレディー、そのすぐ後ろに8番タンポポチャ、そこから1馬身離れて2番シーザーサラダは此処にいました・・・・・・。

 

 3コーナー入った所で後方より16番プリンセスフラウが早くも前に上がっていきます。それに釣られたかの様に各馬が次第に詰まっていく。


 おっとここで7番ミナミベレディー4コーナー入った所で一気に速度を上げた! 前を走る3頭を追撃体勢に入った。8番タンポポチャはまだ動かない。先頭が直線に入って外ミナミベレディー一気に前に迫っていく。ここで8番タンポポチャに鞭が入った! 前を行くフルーツパーラーを交わし4番ファニーファニーに追い付いた! 


 14番ミニマイスマイル先頭、まだ粘り続ける。4番ファニーファニーも譲らない! しかし最後の直線は長い、大外7番ミナミベレディー、最内8番タンポポチャ4頭並んだ中、頭ひとつ抜けたか! 16番プリンセスフラウ、11番プロミネンスアローも伸びてきたが外を回った分届かないか! ここで内からは2番シーザーサラダが伸びてきた!

 先頭は外ミナミベレディーか! 内タンポポチャか! 秋華賞の再現だ! 近年まれに見る大接戦。2頭離れた位置のままゴール! 判定は写真判定になりました! どちらが勝ったのか!

 おお、これは凄い! 1着から5着まですべて写真判定の文字が灯ります。勝ったのは7番ミナミベレディーか、8番タンポポチャか、また3着はどの馬が入ったのか! 第※※回エリザベス女王杯は大混戦となりました! 勝ち時計は2分11秒9 コースレコードに・・・・・』


 大南辺は実況を聞き、ただ静かに息を止めてVTRの再生を見ている。


 そして、パタパタとまずは3着に14番が、そのすぐ後4着に2番が、続いて5着に16番の番号が点灯する。その後、更に数分ほど過ぎ漸く1着に7番、2着に8番の文字が点灯した。


「おおおおお! 勝った! 勝ってしまったぞ!」


 馬主席でまさかのベレディー勝利に大南辺は呆然とエリザベス女王杯の着順を見ていた。

 最後の直線、思わず立ち上がりかけた夫の腕を強引に押さえつけ、立ち上がる事を防いだ妻の道子は夫の様子に溜息を吐きたくなる。


「貴方、いくら何でも勝ってしまったぞは無いでしょう」


 そもそも勝てると少しでも思ったから出走させたのでは無いのだろうか? 今一つそこら辺の感覚が判らない道子ではあるが、1着にならなくても上位に入ればそこそこの賞金が貰えたんだったかと考えを改める。


「さあ、お馬さんと鈴村さんを労いに行きましょう。北川さんの所の桜花ちゃんは大騒ぎしているんじゃないかしら?」


 以前に桜花ちゃんと同じ名前のレースで勝った時も大騒ぎしていたわね。


 そんな事を思いながら夫の腕を引く。すると、周囲にいる馬主仲間達から祝福の声が掛けられた。

 その声に夫ともども挨拶を交わしながら、道子はふと疑問に思った事を尋ねる。


「ねぇ、そういえばあのお馬さんで幾らくらい儲かったの?」


「ん? 今回の賞金か?」


「それもあるけど、今までのトータルよ。大体で良いわ」


 当たり前の事だが、獲得したお金には税金が掛かる。公営ギャンブルだからと言って無税になるほど税務署は甘くはない。昨年はともかく、今年に入って大きなレースを2個勝っているし、それ以外のレースでも賞金は入っている。それであるならば税金対策をしておかないとと道子は気が付いたのだった。


「確か、馬主と調教師、騎手、厩務員で賞金を分配するから北川さんの所には賞金は入らないのよね?」


「ん? いや生産牧場賞と、繁殖牝馬所有者賞だったかな? 別枠で送られているはずだよ」


 夫の思いもしない言葉に道子は吃驚する。賞金とは別枠があるとは思っても居なかったのだ。


「えっと、今日のレースで1着だと1千万円くらい貰えるの?」


 GⅠと呼ばれる大きなレースに勝つ馬の数は決して多くは無いと聞いている。それ故に道子はそれくらいの報酬は出るのだと思った。ただ、これまた夫の返事は予想外だった。


「詳しくはないが、両方合わせて100万円強じゃなかったかな?」


「えええ! そんなに少ないの!」


 自分の予想した金額より思いっきり0の数が一つ少ない。


「まあGⅠ以外のレースにおいても5着までは同様に出るからな。もっとも金額は少ないが」


「どうせなら貴方からも感謝金とかで出しなさいよ、あのお馬さんの御蔭ですごい儲かっているんでしょ? どうせ税金でごっそり取られるだけだし、経費計上を考えたら? 今までリンゴとかを送ってたのは知ってたけど」


 妻の言葉に、昨年はベレディー他の購入資金などで賞金はほぼ相殺されたが、今年は億単位で勝ち越している。大南辺は競馬関係の取り決め等を思い出しながら、問題となるかどうかを考える。競馬界の暗黙の取り決めなどもあり、あとで周りから白い目で見られるのも怖い。


「わかった、そうだな、何か考えよう」


 妻との会話で何となくGⅠ2勝目の感動が何処かへ消えていってしまった気がする大南辺は、妻の冷静な部分はありがたいが、どうせなら一緒に喜んでほしいのになぁとちょっと残念に思うのだった。


◆◆◆


「きゃ~~~~~! やったよ! トッコが勝ったよ! GⅠ2勝目だよ!」


 掲示板をじっと睨み付けていた桜花は、1着に7番の文字が点灯したと同時に喜びを爆発させた。

 決まるまでの時間は前の桜花賞の倍近い時間がかかり、その間にどんどんと期待が膨らんでいった。もしこれで2着だったら落ち込みも凄いことになっていたかもしれない。


 そんな観客席で大喜びをする桜花に対し、隣に座っている父親の峰尾の反応はまたもや無反応。

 その無反応に気がついた桜花は、それまでの喜び具合を一転させ、慌てて鞄を漁りビニール袋を取り出した。


「お父さん、吐くなら・・・・・・あれ?」


 てっきり前と同様に顔を真っ青にして、胃を押さえている父を想定していた桜花。ただ、その視線の先には青を通り越して白と言ってよい顔色に油汗を滴らせている父の姿があった。


「お父さん? えっと・・・・・・大丈夫?」


 父の異様な様子に慌てた桜花は、様子を窺うように腕を引く。

 すると、焦点の合わない眼差しでまるでゾンビか何かのようにゆっくりと父は桜花を見る。


「あ、駄目だ、やばいわこれ」


 あまりに長い時間の緊張に、小心な父の胃は持たなかったのだろう。

 桜花はとりあえず手にした袋を父に持たせる。


「お父さん、吐くときはここに吐いてね。ゆっくり立てる? まずはトイレに行こうか」


 コクコクと頷く父を介助しながら、次は絶対にお母さんと来る! そう心に誓う桜花だった。 

時間がなくて短くなっちゃいました><

外出から戻っての当日執筆、間に合いませんでした! 2分遅れ・・・・・・

明日は日曜日なので、お休みです。

その間に書き溜めしないと・・・・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実況大好きです♡(*´ω`*) しかしこのエリザベス女王杯は3歳牝馬が強いような プリンセスフラウさんやプロミネンスアローさんが割と上位にいらっしゃる やはりタンポポチャ・ミナミベレディー…
[一言] もう10回くらい読み返してて思い出しましたが 昔読んだ本によると2000年代くらいまではG1を勝つと生産牧場の馬を1頭高値で買うのが慣例だったそうですね 逆に値切ったりすると馬産地全体に悪…
[一言] 流石に2勝目になると歓喜のあまりに人目も憚らず抱きしめなかったか… そして即お金の話に行けるあたりやはり馬主出来る程度に成功者な馬主さん&嫁さん そしてまたなパパ上ェ…
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