【エープリール企画?】トッコが〇〇〇になっちゃった まさかの4話目
ヒヨリと一緒に食堂でデザートを食べていたら、鈴村さんの強襲を受けてしまいました。その為、せっかく普段は絶対に食べる事の出来ないリンゴとバナナとラズベリーの蜂蜜掛けを食べたのに楽しめなかったんです。
そして、目の前に残るはメロンさん!
食べる事が出来ないかもしれない。そう思うとお口の中に涎が溢れてきました。
「……」
私の視線はもうメロン様から離れません。
「はあ、わかったから! 食べていいから!」
鈴村さんが大きな溜息を吐いて私の向かい席に腰を下ろしました。私は、上目使いにチラチラと鈴村さんを見ながら、そっとメロン様の載ったお皿を手元に寄せて一片を口に入れます。
「むふ~~~」
久しぶりに口にするメロン様! 芳醇な香りと甘さが口いっぱいに広がり思わず声が出ちゃいました。
「はあ、それ食べ終わったら訓練開始するからね」
目の前で肘を着いて私を見る鈴村さんを恐る恐る見上げます。でも、そこには薄っすらと微笑んで私を見ている姿があり、ちょっとホッとしました。
「キュフフフン」
「うんうん、ヒヨリも一緒に頑張ろうね。べレディーと一緒なら嬉しいよね?」
「キュヒヒン」
鈴村さんとヒヨリが会話? をしています。でも、お互いに話している内容が理解できているのでしょうか? 私はヒヨリの言葉が解らないのですが鈴村さんは解るのでしょうか?
最後のメロン一欠けらを口に入れ、じっくりと味わいながら思案します。鈴村さんは私が食べ終わった事に逸早く気が付くと、すぐに立ち上がって私を促しました。
「べレディー、食べ終わったら早く移動するよ! 訓練コースの予約時間だってあるんだから!」
「訓練? えっと、うん、わかった~~」
「キュフフン」
「ヒヨリは、まず武藤厩舎に戻る! 準備があるからね」
「キュヒン」
ヒヨリは自分でタッタカ走っていきました。そして、私は鈴村さんに急かされて移動を開始するんです。けど、この姿で訓練ですか? えっと、轡とか、鞍とかどうするんでしょうか? 今更ですけど鈴村さんを背負って走るって難しそうですよ?
流されるままに移動しているんですけど、根本的な疑問が頭の中で溢れちゃっています?
そして、連れられて来たのは普通に砂のコースです。そして渡されるメンコというか、ゴーグルですか? えっと、皆さんこれを着けて走ってます……2本足で!
「うんっと、えっと」
「べレディー、どうしたの? ほら、あっちで準備するよ」
もしかすると4本足で走るのかと思っていましたけど、皆さん普通に2本足で走っています。頭の上でお耳がピコピコしているので人間ではなくお馬さん? だという事は分かります。
「はら、これ着けてね。しっかり固定するからね」
ゴーグルみたいなのを着けて、頭の後ろでしっかりと固定されました。そして、鈴村さんもゴーグルのような物を着けていますが、こちらは前も塞がっていますね。
「うん、しっかり映像も見えてる。どうかな? べレディー、指示が伝わってる?」
ゴーグルを着けた鈴村さんが、手に例のゲームのコントローラーみたいなのを持って何か操作をします。すると、何か右方向に行くの? って感じの変な感覚が来ました。自然と体が右方向へと動きます。すると、今度は左方向へと引っ張られて、体が左方向へと動きました。
「うんうん、ちゃんと伝わってるね」
「なんか変な感じなの~」
「ん? 変? 違和感ある? いつもと同じタイプだから変わらないはずなんだけど?」
私に着けられたゴーグルを外して、首を傾げながら鈴村さんが確認しています。でも、特に異常がないみたいなんですけど、そもそもゴーグルが変なんですよ?
「んんん? べレディーどうしたの? これが気になる? いつものだよ?」
「んっと、何時もの?」
「ええ、異常は無さそうなんだけど、時間が無いから走ってみようか。そこで違和感があったら調整しよう」
再度ゴーグルを着けて砂のコースへと入りました。
「う~ん、相変わらず走りにくいなあ」
お馬さんの時にも思ったんですが、砂に足がとられて走りにくいです。4本足で走っていた時以上に2本足だと走り難い?
軽く走ってみたんですが、きゃっぱりピョンピョンしちゃいますね。
「べレディー、遊んでないで走りなさい!」
私がピョンピョンしていると、突然耳元で鈴村さんの声が聞こえて本当に飛び跳ねちゃいました。
「ビックリした~~~、鈴村さんどこ?」
周りを見回すとコースを見渡せる台の上に鈴村さんの姿が小さく見えました。でも、あそこから私が見えるのでしょうか?
「ベレディー? どうしたの? 走るよ~~~」
う~ん、鈴村さんの声が頭の中に響く感じで聞こえてきます。状況は相変わらず分かっていませんが兎に角走ってみましょう。
コースに沿って走り始めますが、うん、とても不思議です。昔人間だった頃と比較して凄い速さで走れている気がします。ただですね、何と言いますか違和感が凄い? 何と言っても少し前までは4本足で走っていましたから、何となく2本足で走る事に違和感を感じます。
実はですね、何やら先程から首下で手綱を扱く様な不思議な感覚が続いています。これも違和感と言えば違和感何ですが、カーブを曲がる時にはちゃんと曲がる方向に引っ張られる感覚も有ったり。どれもお馬さんの時の感覚とは違うんですが、何となく意図は伝わります。
「べレディー、ほら、頑張って! 真面目に走って!」
鈴村さんの声が聞こえてくるんですけど、えっと、一応頑張って走ってますよ? 頑張って走っている最中なので会話も出来ませんよ?
そんな感じでコースをぐるっと回って鈴村さんが居る台の前に戻ってきました。
「相変わらず練習ではベレディーは走りませんねぇ」
「全然集中している感じが無かったです。一応指示に反応はしていましたが、心あらずって感じでした」
「不味いですね。この後、サクラヒヨリと併せ馬をするので、そこで改善してくれると良いのですが」
う~んと、何か鈴村さんが話していますね。お相手は調教師のおじさんですね。一応指示通りに走ったんですよ? ただ、何時もとは勝手が違うと言いますか、そもそも2本足で走っています。久しく2本足で走った事が無いですからね。
「べレディー、どうしたの? 反応もワンテンポ遅れてたよ? ちょっと集中できてない?」
「んっとね、良くわかんない? そもそも、2本足で走ったの久しぶりだし、あと耳元で声が聞こえたの吃驚した。あ、あとね、何か手綱の感覚も不思議」
「器具の不具合か? 調査した方が良いな」
調教師のおじさんが私の着けているゴーグルを外して確認します。どうやらこのゴーグルが指示を出していたみたいですね。それよりも、今更ながらに私の言葉が鈴村さんにも調教師のおじさんにも伝わっているのが驚きです。
こ、これは待遇改善の絶大なチャンスではないでしょうか? ほら、毎日おやつが欲しいとか、リンゴも良いですけど偶にはメロンが食べたいとか。
「あとは、蜂蜜も外せませんし、さっきのバナナジュースも良かったですねぇ……」
私が交渉内容を考えていると、鈴村さんの声が耳に入りました。
「あ、ヒヨリが来ましたね」
鈴村さんの視線を辿ると、ヒヨリとおじさんがこっちへと歩いてくるのが見えます。そして、私と同じようなゴーグルを着けているのが判りました。
「まずはサクラヒヨリと併せ馬をしてみよう」
「べレディーもヒヨリとなら真剣に走ってくれると思います」
再度ゴーグルを着けられてコースへと戻りました。そして、そんな私を追いかける様にヒヨリもコースへと入ってきます。
「キュヒヒヒン」
「ヒヨリは元気ですね」
ヒヨリが頭をグリグリ擦り付けて来るので、宥める様に頭を撫でてあげます。う~ん、相変わらずヒヨリの言葉は解らないんですが鈴村さん達は解っているのでしょうか? これも後で聞かないと駄目ですね。
ヒヨリの頭を撫でていると、クイッ、クイッと手綱が引かれるような感覚が?
「なんでしょう?」
私が違和感を感じていると、鈴村さんの声が聞こえました。
「べレディー、走るよ! ほら、コースに向き直って!」
成程、頭の向きを変えようとしたのですね。私に並んでヒヨリも向きを変えます。
「でも、手綱と違って無視しようとすれば出来ちゃいそうですねぇ」
無視したからと言って良い事って無いんでしょうけどね。ただ、このままヒヨリと走って勝てるんでしょうか? 姉の威厳がピンチな気がしますよ?
エープリルフールの4回目です。書こうか悩んだんですが、悩んでるくらいなら書いちゃおうとw
改めまして、まだ生存しております!
本年も、宜しくお願い致します。m(_ _)m
(え! 今頃! もう4月ですよ!)
果たして、トッコさんはヒヨリとの併せ馬でどうなるのでしょうか?
結果は……来年? (ぇ




