蛇足2
「ブフフフフン」(仔馬って凄いですね)
私の周りを、私が産んだ仔馬ちゃんがトコトコと小走り? といった感じで歩いています。
生まれてから2週間くらいしか過ぎていないのですが、それでも私が歩くのに合わせて、後ろをついて回ります。その姿が無性に可愛くて、ついついハムハムとグルーミングをしてあげちゃいますよ。
「キュフフン」
「ブルルルルルン」(大丈夫ですよ。お母さんが居ますからね)
何でしょうか、これが母性と言う物でしょうか? まだ固形のご飯が食べられない仔馬ちゃんです。その為に、小まめに私のお乳を飲んでいます。これが又、母性を呼び覚ましちゃいました。
もう、何と言っても可愛いのです。やっぱり、自分の子供は別格ですね! 何をしていても可愛いのですが、私が牧場をのんびりと歩いていても、私の後をチョコチョコとついてくるんです。少しでも離れると、慌てて追いかけて来るんです。
「ブヒヒヒヒン」(絶対に、お肉に何てさせないからね)
「キュヒヒン」
子供を見ていると、その将来に使命感のようなものが湧いてきちゃいます。
お姉さん達の産んだ仔馬さんも放牧地にはいて、此処最近は仔馬同士で遊び始めたりしています。それでも、まだまだ母馬である私の周囲で遊んでいるので、私も安心して牧草を食べたりしています。
でも、遠くに居ても我が子の区別は付くと思います。それくらい、我が子は特別ですね!
でも、そこで問題なのは、やっぱり子供が何を言っているか判らないんです。私も馬語を覚えようとしているんですよ? でも、その私の前に立ちはだかる壁は、予想以上に高いのです!
「ブルルルン」(お母さんって言ってみて)
「キュフフフン」
うん、まずは此処からですよね?
「ブヒヒヒン」(お腹空いたって言ってみて)
「キュフフフン」
駄目ですね。違いがまったく聞き分けられません。同じに聞こえちゃうのです!
そして、私はしばらくして気がついちゃいました! 生まれたばかりの子供に、馬語を教えてもらうのは間違ってないでしょうか? 子供に言葉を教えるのは親の役目ですよね?
と、言う事で、方針を大幅に変更しました。
「ブルルルン」(お母さんですよ)
「キュフフン」
「ブルルルルン」(お母さんですよ〜)
「キュヒヒン」
駄目ですね。意図がまったく伝わってない気がします。
私が話す馬語を、仔馬に教える事が出来れば良いんじゃないって思ったんです。ですが、我が子からは全然違う嘶きが返って来ますし、そもそも自分の嘶きの差が判らないかも?
「ブヒヒヒン」(私はお母さんですよ)
「ブルルルン」(メロンは御馳走なんですよ)
「ブルルルン」(リンゴが食べたいんですよ)
自分で自分の嘶きを聞きますが、結構微妙なんです。食べ物絡みは似てる? 偶々? 今まではどうでしたっけ?
自分の嘶きに、疑問を持つ馬っているのでしょうか。
我が子が、クリクリお目々で私を見て来るので、思わずハムハムしちゃいます。言葉なんて、何となくで伝わりますよね? ほら、以心伝心って言いますから。
そんな感じで、我が子とコミュニケーションをとります。でも、さっきから熱い視線を感じているんです。
なんと! 昨年で引退したヒヨリが、私の周りをウロウロとしているんです。ヒヨリも、私の産んだ子供だと理解しているみたいで、嫉妬して仔馬に悪さをしたりとかはしないんです。どちらかと言うと、可愛がってくれてます。時々、ハムハムとグルーミングまでしてくれます。
「ブフフフン」(ヒヨリ、おいで)
「キュフン」
私がヒヨリに声を掛けると、ヒヨリは喜んで近寄って来ます。ヒヨリも、相変わらず甘えん坊さんですね。我が子が生まれるまでは、ヒヨリと一日中一緒にいました。その為か、前以上に甘えん坊になっちゃった気がします。
ハムハムハム、ハムハムハム
近づいて来たヒヨリをハムハムしてあげます。我が子は、グルーミングが終わったので、せっせとお乳を飲み始めています。
ずっと、こんな感じでのんびりとしていたいですねぇ。
そんな事を思っていると、ふと一つの疑問が沸き上がりました。
「ブルルルン」(ヒヨリは仔馬ちゃんと会話出来るの?)
「キュフフン」
お返事してくれるのですが、やはり何を言っているのか判りません。我が子は、ヒヨリの嘶き何て全然気にせずお乳を飲んでいます。
「ブフフフン」(やっぱり会話は成り立ってないのかも?)
ヒヨリと我が子で、会話が成り立っている様には見えません。お馬さん達は、どうやって会話をしているのでしょうか?
「キュフフン」
「キュヒヒヒン」
そんな事を考えていると、お乳を飲み終わった我が子がヒヨリに何か訴えます。すると、グルーミングを終えたヒヨリが、牧草を食べる為に移動します。そして、何故か我が子がヒヨリにひっついて移動していきます。
「ブルルルン」(何処へ行くの?)
「キュフン」
「キュヒヒヒン」
駄目ですね。何を言っているのか判りません。
ただ、ヒヨリは我が子を気にしないと言うか、受け入れています? あれ? ヒヨリ、貴方はまだ仔馬を産んだ事無いですよね?
何故かヒヨリに懐いて追いかける我が子ですが、何かですね、ちょっとショックなのです。
「ブルルルン」(ヒヨリはお乳は出ませんよ?)
我が子にそう話しかけます。
出ませんよね? まだ子供を産んでないですし、でも、ヒヨリだから根性で母乳くらい出しそうですよね? 何かちょっと複雑な気持ちですが、我が子が気になるので後を追いかけます。
でも、生まれた時から馬語が話せるとすると、私は何で話せないのでしょう? 謎ですね。
何となく書いちゃったので、投稿します。
トッコさんは馬語が話せるようになるのでしょうか?




