129:トッコさんとフィナーレと姪っ子ちゃん
「ブフフフン」(放牧は良いですねぇ)
まだ放牧に出されて日数はそれ程経っていませんよ。それでも、自分のリズムでのんびり出来るのが嬉しいです。うん、こんなまったりした生活が続くと良いですね。
モグモグ、モグモグ
今日はお日様の日差しが暖かいので、牧場の牧草を食べながらまったりしています。
タンポポチャさんは引退したそうですし、もしかすると牧場でこんな風にマッタリしているのでしょうか? そうだとしたら羨ましすぎませんか? あ、でも食べ物とか変わるんでしょうか? レースで活躍しないとリンゴとか減らされるとするとすっごく悲しいです。
ご飯を取るか、のんびり牧場生活を取るか、非常に難しい選択です。
タンポポチャさんを羨ましがりながらも、私は先程までフィナーレを追い立てるように走らせていました。フィナーレも頑張らないと馬肉にされちゃったら可哀そうですから。
でもあの子は疲れてくるとキュンキュン鳴いて来るので、どうしても手加減しちゃうのですよね。中々ヒヨリのようにビシバシとは出来ません。
フィナーレの将来を考えると、ヒヨリみたいにしないと駄目なんだと思うのですが、あの眼差しでキュンキュン鳴かれると・・・・・・。
「ブヒヒヒヒン」(もう少し頑張らないと駄目ですよ?)
「キュフフフン」
私はフィナーレを諭すのですが、フィナーレは私が声を掛けると構って貰えるのが嬉しいのか尻尾をブンブンさせながら私に頭をスリスリしてきます。
これはどうしたものかと途方に暮れていたのですが、そんな時に牧場に1頭のお馬さんが連れて来られるのが見えました。
「ブルルルン」(珍しいですね)
放牧を始める時期としてはちょっとズレている気がします。もっとも、レースを走って疲れが出ての放牧と考えればそう可笑しい事では無いのかもしれません。ただ、お馬さんを連れているおじさんと一緒に、なぜか私も知っている人が居ました。
「ベレディー」
「ブフフン」(何でしょう? 氷砂糖でも貰えるかな?)
呼ばれたのですから、慌てなくても何か貰えると思うので、特に慌てずにトットコと向かいます。
一応、柵を挟んでの散歩道におじさん達と新しいお馬さんがいます。多分ですが相性が悪そうな場合の対策でしょうか?
フィナーレも私を追いかけて来ますが、ちょっと人見知りな子なので新しいお馬さんにちょっと警戒気味かな?
「ブルルルルルン」(氷砂糖が欲しいですよ。リンゴでもいいです)
私は調教師のおじさんの匂いをフンフンと嗅ぎながら、食べ物を探します。
でも、リンゴやニンジンは持っていないようです。氷砂糖一択でしょうか?
「ミナミベレディーですか、話に聞いてはいましたが人懐っこいですね」
「ええ、ただこれは食べ物を強請っているんですけどね」
調教師のおじさんがポケットから氷砂糖を出してくれます。
「ブフフフン」(わ~~い、氷砂糖です!)
出された氷砂糖をお口の中でコロコロさせ味わいながら、新しく来たお馬さんを見るのです。
「キュフン、キュフン」
「キュヒヒヒヒン」
新しく来たお馬さんは、見た感じフィナーレと同い年くらいかな? ただ先程から私に向かってキュフンキュフンと鳴いています。
「ブフフフン」(何処かでお会いしました?)
何となく知っているような気はするんですが、流石に匂いを嗅いで相手を思い出すとか無理なんです。
そもそも、何となくヒヨリやフィナーレを見ていると私と匂いの感じ方が違うような気がするんですよね。
このお馬さんの様子だと過去にお会いしているっぽい?
私が一応フンフンとお馬さんの匂いを嗅ぎますが・・・・・・判らないですねえ。何か思い出すとかしそうなものですが、まったくです。
「ブヒヒヒン」
「ブフフン」(フィナーレ?)
何でしょうか? フィナーレが新しいお馬さんを警戒している感じなんですが、新しいお馬さんはフィナーレではなく私に顔を寄せようと知らないおじさんが持っている引綱を引っ張っています。
「どうやらプリンセスミカミはミナミベレディーを覚えているみたいですな」
「ええ、ただベレディーは覚えていないようですね。穏やかな馬なので特に問題は無さそうですが、フィナーレが逆に警戒していますか」
プリンセスミカミですか、うん、知らない子ですね。でも、覚えてないという事は面識はあるのでしょうか? 私が知っているお馬さんとすると、北川牧場の仔です?
「キュフフフン」
「ブルルルン」(えっと、お久しぶりです?)
余程に特徴が無いとお馬さんのお顔って覚えられないですよね?
必死に自己弁護しながらご挨拶のお顔スリスリをします。でも、やっぱり馬語が判らないのでご挨拶されていても判らないですね。
「ふむ、ベレディーは思い出したのかな?」
「母馬のサクラハヒカリと匂いが似ているのですかな?」
おおお、そういえば桜花ちゃんの所の牧場でヒカリお姉さんの子供と遊びましたね。
私の繁殖牝馬疑惑の時でしたっけ? 違いましたっけ? フィナーレとはお母さんが遊ばせてくれなかったので、ヒカリお姉さんの産んだ仔馬と遊んでいた記憶はあります。
「ブルルルン」(大きくなりましたね)
思わず母親目線になっちゃいます。
「キュフフン」
あの時と同じで人懐っこいですね。うん、だんだん思い出してきました。
「キュヒヒヒヒン」
私が懐かしく思っていたら、フィナーレが私のお腹辺りに頭をスリスリしてきます。そして、私の意識がフィナーレに向くと、首の辺りをハムハムとしだしました。
「フィナーレが必死にベレディーの気を引こうとしていますね。フィナーレもベレディーにべったりですから」
「なるほど、そうするとフィナーレと一緒では拙いかもですね」
「どうでしょうか? ただ、ベレディーがいますから喧嘩はしないと思いますが」
「ブフフフン」(みんな良い子ですよ?)
フィナーレもちょっと甘えん坊ですが、ヒヨリのしごきにも頑張ってついていく子です。姪っ子ちゃんも牧場では私の後について一生懸命走っていました。頑張り屋さんですし、きっと仲良く出来ると思うのです。
そんな私の思いを余所に、フィナーレは私より前に出て来ませんし、姪っ子ちゃんは柵の向こうから私にスリスリしますがそれ以外は見ていません。
う~ん、柵越しだからでしょうか? ほら、犬なんかも柵越しだと強気で吠えても柵が無くなると大人しくなりますよね。
とにかく姪っ子ちゃんを牧場内に入れて貰わないと始まりませんね。
「いやあ、しかしミナミベレディーは流石GⅠ馬ですな。非常に落ち着いていますし、馬体もトモの張りも凄いですね」
「ええ、特に坂路での練習が好きで、それに付き合わされてサクラヒヨリも馬体が良くなったと武藤調教師も話していました」
「ブヒヒヒヒヒン」(のんびり話をしてないで中に入れてあげて)
調教師のおじさん達が私達を見ながら動く気配が無いので、お口の中の氷砂糖も消えたのでせっつく事にしました。フィナーレと仲良くなってくれれば私がいなくても一緒に駆けっことかしますよね?
上手くいけば私は牧草を食べながら見ていれば良いだけになるかな? そんな期待を胸に姪っ子ちゃん達を見ますが・・・・・・お互いに目も合わせませんね。
「ベレディーがプリンセスミカミを中に入れろと言っているっぽいですが、フィナーレの様子が気になる所ですので、武藤厩舎の調教助手が来てからにしますか。何かあってからでは遅いですから」
「ここで焦る事もありませんな」
「ブフン」(あれ?)
結局、離れるのを嫌がる姪っ子ちゃんを引っ張っておじさん達は行っちゃいました。
「キュフフフフン」
うん、何かフィナーレが勝鬨みたいな嘶きをしていますが、別にあなたは勝っていませんよ?
「ブルルルン」(ヒヨリが来てくれませんかねえ)
そういえば、ヒヨリはそろそろレースに出るのでしたっけ? 大丈夫でしょうか、勝利をお祈りしておくことにします。
「ブフフフン」(ヒヨリ頑張るんですよ~)
「キュヒヒヒン」
フィナーレもヒヨリを応援してくれるみたいですね。
遅くなっていて申し訳ありません。
日常は落ち着いて来たんですが、気力が思いっきり目減りしてました><
毎日は無理ですが、少しずつ投稿ペースを回復していくつもりです。
気長にお待ちください(ぇ




