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43話・単なる憂さ晴らし?

 ヴィナールは、モコと一緒に船底にいた。見張りとしてクルズが立てられている。この船は完全にヴァハグンの支配下に置かれた。悲しいことに実は、ヴァハグンは海軍大佐の称号を持っている。縦社会で言えばヴィナールの上司。上司の命には従うしかない。

 ヴィナールは船底で大人しくしているように言い渡された。


「この船の指揮はこれから俺が執る。少佐、おまえは船底で大人しくしていろ」


 と、言い渡されて、お目付役としてクルズを付けられた。戦力外通告されて船底に追いやられた。あの父が嬉々として指揮を執る。皆も怖いくらいの満面の笑みを浮かべていた。何かが起ころうとしている。嫌な予感しかしなかった。


「ねぇ、クルズ。みんなこれから何をしようとしているの? 嫌な予感しかないんだけど」

「ヴァハグンさまがやる気になったんだからいいじゃないですか? ヴィヴィは働きすぎですよ。少し、休んだ方がいい」

「そうは言われても……」


 ヴィナールは、何かスッキリしない気持ちである。


「ヴァハグンさまのお手並み拝見と行こうじゃないですか? ヴィヴィはイディア公国の乗っ取りには気が進まなかったのでしょう?」

「そうだけど……。まさか親父達はそれを知っていて?」

「いやあ、単なる憂さ晴らしでしょうね」

「憂さ晴らし? ちょっと、あいつら何しようとしているの?」

「イディア公国との喧嘩ですかね」

「喧嘩ですって? 何しようというのよ?」


 船が大きく傾いた。


「奴さんも動き出したようですかね?」


 何かを知っている様子のクルズは天井を仰いだ。クルズは知っていた。ヴァハグンを始め、元海賊の皆は、イディア公国側に婚約破棄されてから、仕事人間になってしまっていたヴィナールのことを、痛ましく思っていた。

 今回、ヴァハグンが焚き付けたとは言え、皆の思いは一つだ。我らが姉貴を泣かせたイディア公国をぶちのめしてやりたいと。皇帝も暗黙の了解だ。


 でも公国民は関係ないので、被害は少なくしたい。しかも帝国海軍として動けば、ハヤスタン帝国VSイディア公国と大きなものになってしまう。

 そこでヴァハグンは皆に言った。「宵闇の海賊として暴れてやろうぜ」と。このことはヴィナールには内密で勧められていた計画だ。実はヴィナールが保護したアイギスを連れて宮殿に向かった日の晩、ヴァハグンが皆を訪ねてきた。


 そこで今回の計画がヴィナールには内緒で立てられた。ヴァハグン曰く、「ヴィヴィは真面目すぎるから俺達の計画を知ったら本気で止めようとするからな」と、言うことで船底に留め置くことに決まったのだ。

 ヴィナールが気付くのも時間の問題だろうと思っているクルズは、彼女が気づいた時には全てが終わっていることを必死に祈った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ぴょんぴょん跳ねる羊が、可愛い〜〜♪ [気になる点] 階級的には、大佐より少将の方が上なのですが。 [一言] 少尉以上が、士官クラス(幹部や幹部候補クラス)で、尉<佐<将の順に偉くなります…
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