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22話・実は婚約破棄を望まれていました

 このまま何事もなく帰還になるかと思われたが、しばらくして執務室の壁に取り付けてある連絡用魔石がパッパと光った。それは甲板の監視塔と執務室を繋ぐ連絡用魔石で、遠くにいる者と会話が出来る優れものだ。


「少佐っ。大変です。イディア公国軍の船が追って来ました」

「何ですって? イディア公国軍? 全力で振り切れないかしら?」

「もう、すぐそこまで来ています。あちらからは停止を求められています」


 ヴィナールは、逃げるべきか、あちらの言うとおりに停止するか。数秒考えて答えを決めた。


「仕方ないわ。あちらの言うとおり従いましょう。この辺りはまだイディア公国側の領域だから、向こうに求められたら従うしかないわ」

「了解」


 通信を切ると、ヴィナールはため息を漏らした。執務室にはヴィナールだけではなく、サイガとクルズがいた。ヴィナールはあちらの目的は、コルビン達の引き渡しだろうと睨んでいた。そうなると、コルビンと良く似たクルズを、あちらと引き合わせるのは都合が悪いような気がした。


「クルズ。今回、あなたは身を隠していて。一応、アイギス公子の前に姿を見せない方がいい気がするわ」

「そんなことを言われても、公子とは3年前に屋敷で顔を合せています。不自然では?」


 訝るクルズに、サイガが言った。


「コルビンとか言う奴にクルズが似ているのが気になるのか? ヴィヴィ」

「そうよ。何も無ければ良いのだけど、あの彼らのリーダーに帝国海軍の一員が似ていたことで、痛くもない腹を探られて難癖つけられるのも嫌でしょう?」

「あー。ヴィヴィは、あの公子を信用してないって事か?」

「まあ、そうね。婚約破棄の時だって、わたしが皇女コブリナを虐めていたとかで一方的に責められたのよね」


 普通は上に立つ者は、両方の意見を聞いて公平に見るべきじゃない? それをあの公子は、コブリナだけの意見を聞いて決めつけたのよねとヴィナールは愚痴った。


「それって婚約解消だったのでは?」 


 ヴィナールの言葉をクルズが訂正しようとする。「婚約破棄」と「婚約解消」は似ているようで、中身は全然違う。「婚約破棄」は婚約している相手に何か問題がおき、賠償金もしくは慰謝料が発生するが、「婚約解消」はもとからこの婚約はなかったことにしましょう。と、言うことで、婚約破棄より言い渡される側は衝撃が少ない。

 クルズが円満に婚約解消となったのでは? と、聞いてきたのを、ヴィナールは「結果的にはそうなったけど……」と、横に首を振った。


「前に話したことあったと思うけど、社交界デビューの日、わたしは公子に恥をかかされたわ」

「あの日のことなら、公子は許婚だったあなたをエスコートせずに、先に会場入りしたのを伝えたのは、私ですから覚えていますよ」

「あの日、公子が皆の前で望んだのは婚約解消ではなく、婚約破棄だったのよ」

「「……!!」」

「それを伯父さまが……、陛下が婚約解消にするとその場で言い切ってくれたの。陛下は先代皇帝の残した見かけとは違い、性に奔放で皇家の問題児である彼女と縁を切る事を決断されたように思うわ。物言いは丁寧だったけど、明日にはこの国から立ち去る事を望むと二人に告げられていたから」

「なんと。そのような裏話があったとは……」

「だからね、陛下はイディア公国にしてやられるのは面白くないと思うわ。それはわたしも同じだけど」


 相手に弱みを握られたくないのよと、ヴィナールは言った。


「まあ、取りあえず相手に会って言い分を聞きましょう」


 相手が何と言ってくるか聞いてやろうじゃない。と、早くもヴィナールは喧嘩腰になっていた。


「ヴィヴィ。落ち着けよ」

「分かっているわ」


 サイガが呆れたように言ってきた。



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