19話・良く似た二人?
ヴィナールは、この船を商船に見せかけることにした。海賊達が獲物だと思ってかかってきたところを、捕まえようという作戦だった。それが簡単に上手く行きすぎて驚いたくらいだ。まさか「宵闇の海賊」を騙っている者が、その辺の素行不良の青年の集まりと思わなかったからだ。彼らは思っていたよりも弱すぎた。
サイガ達が動いたおかげで、ヴィナールの出番はなかった。最後にばあんと派手な登場を演出する気でいたのに全然、出番なしでがっかりだ。
ヴィナールはそれでも、サイガ達を取りしきる立場として、後ろ手に縛られ、配下の者に肩を押さえつけられて身動きの取れない彼らの前に進み出た。
彼らはポカンとした顔をしてこちらを見ている。間抜け顔ね。と、思ったヴィナールだが、その中で一人の若者が気になった。この素行不良の若者のリーダーらしき男だ。その男を良く見る為に近づいて、自分達のことを教えてあげることにした。
「わたし達はハヤスタン帝国の海軍よ」
「やっぱり帝国の海軍?」
「わたし達のことを知っているとは光栄だわ。宵闇の海賊の皆さま」」
ヴィナールがそう言えば、リーダー格の若者は「畜生。こんなはずじゃなかった」と、悪態をついていた。所詮、自分達の敵じゃない。敵にもならないと呆れ果てた。
──こいつらゴミだわ。どうしようかしら?
そう思いながらも見知った顔に近づき、ステッキの先で彼の顎を押し上げてマジマジと顔を見た。
「見れば見るほど良く似ているわね」
「ヴィヴィもそう思うか?」
サイガが隣に並んだ。皆も同じように思っているはずだった。この宵闇の海賊の騙り者のリーダーが自分達の仲間に良く似ているのだ。
「その割には派手に殴り付けたものね? 躊躇はなかったの?」
「全然。そいつは偽者だからな」
ヴィナールはサイガと顔を見合わせクスクス笑った。周囲にも笑いが起こる。
「驚いたわ。他人の空似ってあるのね。ちょっとこっち来て。クルズ」
「はい」
ヴィナールは、自分の背後に影のように控えていたクルズを呼び寄せた。クルズは皆の笑いの意味も分からず前に進み出て、騙り者のリーダーを見て瞠目した。
「私に似ている?」
「オレに似ている?」
クルズと騙り者のリーダーが発した言葉が被る。二人は気持ち悪いほど外見が良く似ていた。騙り者のメンバー達も驚いていた。
「コルビンと同じ顔?」
「コルビンがもう一人いる」
「なんだ。これ? 気持ち悪い」
「ドッペルペンガー現象か?」
「縁起でもないことを言うな」
二人は顔も背丈も同じ。ただ、違うといえば、片方は悪党で、もう片方はそれを捕まえた側と言うことだ。
「先ほど、興味深いことを言っていたわね? あなたは大公の息子だとか? 大公と言えばイディア公国のかしら? 公国には公子さまがいらしたと思うけど、あなたは大公さまとどのような繋がりがあるの?」
「それは──」
仲間にコルビンと呼ばれていたリーダー格の若者は言い淀む。仲間達もさすがにここまで来れば、自分達がしでかした事の大きさに気がついたようで黙っていた。
もしかしたら大公の息子というのも、騙りなのではないかとヴィナールが疑いかけたところに脇から声が上がった。




