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10話・軍艦の一部と帆船が燃えました


「ただいま。クルズ」

「どうなさいました? お嬢さま。非常にお疲れのようですが、皇帝に何か無理強いでもされましたか?」

「それはそれで面倒なことになったけど、モコには参ったわ」

「モコですか?」

「モコの可愛さに女官達が群がってきて、陛下との謁見から下がって馬車に乗るまでに二時間もかかったのよ」

「二時間?」

「皆が抱っこさせてくれって言……」

「ああ。大体のことは察しました。馬鹿正直にあなたさまは一人一人にモコを貸したんですね?」


 クルズは最後まで言わせなかった。呆れたような目で見られる。


「そんなのは一々、応じなくてもいいんですよ。また次の機会にと、途中で切り上げれば良かったでしょうに。それより陛下の呼び出しは何だったのですか?」

「それがね、どうも宵闇の海賊を名乗ってドイア王国行きの商船を襲っている輩がいるらしいの」

「……!」


 以前、クルズ達が名乗っていた「宵闇の海賊」を騙っている者がいると聞き、クルズの顔が曇った。


「陛下からは事の真相を明らかにするようにと命を受けたわ。皇太子殿下からは気を付けるように言われた。もしかしたら狂言かも知れないって」

「狂言ですか?」

「どうもね、イディア公国の公子が、ドイア王国の商船を宵闇の海賊から救う為、討伐に向かうと宣伝していたそうよ」

「何でアイギス公子が?」

「さあね。どこからか聞きつけたのかも。イディア公国はドイア王国の輸入に頼っているから、王国に恩を売りたいのかもね」

「どうも匂いますね」


 クルズ達はアイギス公子のことをあまり良く思っていない。ヴィナールの許婚でありながら、コブリナにちょっかい出されてコロリと靡いた公子との、婚約解消を未だ彼らも納得していなかった。


「さっそく皆に伝えてくれる?」

「どうしたって?」


 ヴィナールがクルズに指示を出していると、赤毛に緑色の瞳を持つ日焼けした中年男のサイガが、ノックもせずに入室してきた。


「サイガ。ノックくらいなさい」

「ああ。嬢ちゃん、悪い、悪い」


 口で言うほど悪いとは思ってない相手の様子に、ため息がこぼれる。指摘されたサイガは、ヴィナールと目が合い、慌てて開けたドアをノックするが意味がないと思う。


「で、何の用?」

「あのな、怒らないで聞いてくれよな」


 まず怒らないで聞いてくれという前提の話では、すでに何か起きていることを示していると思う。内容次第によってはヴィナールが怒るのは当たり前だろう。


「内容によるわ。何かしら? あなたには今日、皆と軍艦の整備をお願いしていたわよね?」


 整備に不備があったのだろうか? と、思っていると、サイガが言いにくそうに言ってきた。


「実はテクちゃんが港に現れて、軍艦の一部と側にあった帆船を全て焼いてしまった」

「はああ?」


 テクちゃんとは、羽なしヒポグリフのことだ。ヴィナールのペットその3で、大きさは馬ぐらい。顔は鷲、胴体は馬の姿をしている。普段は森に住んでいるが、たまに港に集っているサイガ達に会いにやって来る。皆、ヴィナールにならい「テクちゃん」と、愛称で呼んでいた。


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