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普通の恋愛

作者: 天原睦月

人と一緒になるって何だろう?俺はずっと考えていた。といっても考えているだけで、何もしないのだけど

「どうしたの和人(かずと)?ボッーとして?何か考えてたの?」

「…何でもないよ。早く帰ろう。…(ゆい)、今日は何が食べたい?」

「うーん…和食で」

「和食って…色々あるけど、何か具体的なメニューで頼むよ」

俺達は他愛ない話をしながら、自分達の家路に向かった。俺達二人は付き合ってからもう五年経つ。出会いも本当に普通で同じ会社の同じ部署に勤めて、一緒に仕事をするうちにお互いに意識して付き合った。どこにでもある話の恋愛だ。そんな普通に過ごしているうちに五年経った。その間色々あったけど、まぁ至って普通だった。そんな生活をしていたある日、同じ部署の同期からいきなりこんな風に言われた。

「お前らさ…いい加減結婚して、籍入れるとかしないのか?いくらなんでもそんなに付き合ってたら、普通そんな話にならないのか?」

と、言われた。言われてみれば確かにそうかと感じた。平均的な結婚までの時間とかは知らないけど、五年間と言うのは改めて考えると結構長い時間だ。そんな間、結婚については確かに考えた事がなかった。願望が無いわけではないが、実感がなかった。なんと言うか、既にそんな感じがしている気分になっていたという感じなのだ。しかし、端から見たら

「何で?」

と言われるのも不思議ではない。実際俺はそんな風に感じていたからだ。でもって、結はどう思っているのだろう。そんな話を一度もしたことがなかったし、聞いてみようとも思ったことがなかった。

「おーい!料理作る手が止まっているぞ~」

「あ…悪い。もう少しで出来るから、テーブルと皿の準備してくれ」

色々考えて調理が止まっていた俺に、結は最初の頃と同じ感じで晩飯の催促をしてきた。俺はハッと現実に戻り、調理を再開する。結は慣れた動きで晩飯環境の準備をしてくれた。

「出来たぞ。今日は鮭がメインの定食だぞ」

「やった!鮭好き~」

俺は結に頼まれていた和食に沿って、好きな食材を詰め込んだ料理を作った。結はとてもご満悦の様だ。

「じゃあ早速…いただきます!」

しっかりと手を合わせて、俺達は食事を始めた。ずっとしている何気無い日常。でも、さっきまで考えていた事が頭から離れず、俺はあまり箸を進めることが出来なかった。

「…あのね、今日三咲(みさき)ちゃんからね話されて、いつになったら結婚するんですかって」

「えっ…?」

俺はいきなり話された内容に動揺を隠せなかった。

「そう言われてさ…あぁ~そう言われるまで何も考えなかったなぁ…って、思っちゃった。…和人はさ、考えたことある?

「いや…実はさ、俺もこの間同じこと言われてさ…結はどう思っているのかなって考えてたんだ」

結の話をきっかけに俺も考えていた事を伝えた。そしたら、結が笑って

「あはは!な~んだ、だから帰り道テンション下がってたんだ。すぐに言ってくれたらよかったのに」

「あぁ…なんつーか、恥ずかしいかなって」

俺は自分が感じていた独り善がりな恥ずかしい考えを言ったら、結はもっと笑ってきた。

「今更そんなので恥ずかしいがってどうするの?何年一緒にいるのよ」

「わかってるけどさ…やっぱり、恥ずかしいのは恥ずかしいんだよ」

俺は結の言葉に少し俯きながら答えた。実際に恥ずかしいものは恥ずかしい。それをそのまま言った。

「変なの!」

結はずっと笑っていて少し腹が立ってしまったが、こんなやり取りもずっとやってきたなって思った。そう思うと、何となく面白くなった。そのせいで、俺も笑ってしまった。

「確かに!…なぁ、結婚したいって言ったら…結婚してくれるか?」

笑った勢いでかなり軽い調子で言ってしまった。その言葉を聞いた結は

「いいよ。…て言うか、言ってくれるの遅すぎ」

と、少し呆れた感じで言われた。

「確かにさ、三咲ちゃんに言われて、あぁ…ってなったけど…付き合って二年前からずっと思っていたよ?…でも、結婚の話はさ和人に言って欲しかったから、待ってたんだよ」

結はご飯を食べながらそう言った。俺は逆に口を開けてポカーンとしてしまった。

「え?…まじで?」

「まじで」

その返答でまたもポカーンと口を開けた。

「…ごめん。なんか、そういうの考えなかった…」

ようやく口に出た言葉がそれだった。何とも情けなかった。

「本当にね…そう思うなら、もう一度ちゃんと言ってもらうことを望みます」

結はそう言った。結はいつも俺に対して、茶化す様に頼み事をする。でも、今回はいつもと違う気がする。多分本当に俺にしてほしい事を願っている。だから俺も真剣に言った。

「…今まで、待たせてごめん。これからはもっと真剣に二人の先の事を考えるから、…だから、俺と結婚してくれ」

俺は真摯な気持ちで素直に伝えた。それを聞いた結は、今までも見せてくれた、でも、今までより一番嬉しそうな顔で

「うん。…これからもよろしくね」

応えてくれた。俺は今までないくらいに嬉しいかった。多分今まであったどんな事より嬉しかった。

「こちらこそよろしく」

これから先は今日の様な情けない事は出来ない。でも、それは難しい。だから、結と一緒に乗り越えないといけない。今までもしてきたことだけど、今後はより一層考えなければいけない。辛いこと、悲しいこと色々あるだろう。でも、それ以上に楽しいことが待っているはずだ。いや、しなければならない。しかし、これは世界中にいる皆がする事なのだろう。かっこよく考えているけど、普通の事なのだ。でも、やっぱり特別なものだと痛感した。だから頑張れる。だから一緒に生きていくのだろう。

 俺達の今日の出来事は、世界のほんの一瞬。そして、些細なエピソード。でも、どこにもない最高の1日。

 皆さんは今幸せですか?俺はとても幸せです。

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