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短いです

 


 私は、夢を見ている。

 ――『私』たちは、繰り返し憎悪する。

 夢の中の私もまた、滑稽で醜悪な憎悪にとりつかれていた。



 認めない。こんな世界など。気持ちが悪い。ここは私の世界じゃない。

 あの日、あの運命の日、母親と進路のことで喧嘩してしまった。

「大嫌い」と捨て台詞を言い、家を飛び出してしまった。全部自分が悪いとは思わない。お母さんは、カチカチ頭だ。石頭過ぎる。

 私の人生は私の人生だ。家族だろうと、支配されたくなかった。私は、お母さんの延長じゃない。私は私なのだから、譲れないことがある。

 とことんやってやるつもりだった。

 どうしても話が平行線なら、きっと、家を出ていくことだってあったかもしれない。

 でも、それは、自分が選択するはずのことだった。

 理不尽に、選択を奪われていいことでは、ないはずだった。

 でも、その日、私は殺された。

 ……

 ごめんなさい。

 大嫌いと言ってごめんなさい。

 大嫌いと言ったまま、二度と撤回できなくてごめんなさい。

 自分のせいじゃないけれど、それでも、親より先に死んでしまってごめんなさい。

 お父さん。お母さん。お兄ちゃん。真人。雪江。美登里。みんな。もう会えない。

『みんなを救いたいから』

 あの声は言う。

『あなたたちの力が必要なの』

 あの声は当然のように、傲慢を傲慢とも思わぬそれで訴える。

『私が守ってみせるから』

 だから私の人生を捧げよと。

 救う? 何様のつもり? それは、私の、私たちの人生を捧げるに足るの? 

 こんな終わり方ってあるの? こんなの私じゃない。私の顔じゃない!

 気持ち悪い。私の手じゃない。私の足じゃない。視界が違う。

 声が違う。何もかも違う。

 私なものか。

 わたしなものか。

 このせかいはちがう。

 許せない。

 こんな世界認めない。

 会いたい。帰りたい。ごめんなさい。ごめんなさい。大嫌いといってごめんなさい。

 嘘なの。

 本当は大好き。会いたいよ。お母さん。おかあさん。

 お父さん、お兄ちゃん、助けてよ。この世界はいやだ。

 赤の他人が私の家族だという。小さな子供たちが、私の友人だと名乗る。

 違う!

 私のお父さんとお母さんは、お兄ちゃんは、妹は、家族はたった一つだ!

 お前らなんか知らない! 偽物のくせに。かえして! 皆を、私を、かえして!

 あの女。絶対許さない。

 帰りたい。かえりたいよお。

 嫌だ。

 ゆるさない。

 憎い。

 絶対、ゆるさない!

 嘘。

 謝るから。

 だから。許して。

 助けて。かえして。 

 お願い、かえしてよ!

 かえしてよ――!!!!!





 ――ある転生者の少女の独白。


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