7
短いです
私は、夢を見ている。
――『私』たちは、繰り返し憎悪する。
夢の中の私もまた、滑稽で醜悪な憎悪にとりつかれていた。
認めない。こんな世界など。気持ちが悪い。ここは私の世界じゃない。
あの日、あの運命の日、母親と進路のことで喧嘩してしまった。
「大嫌い」と捨て台詞を言い、家を飛び出してしまった。全部自分が悪いとは思わない。お母さんは、カチカチ頭だ。石頭過ぎる。
私の人生は私の人生だ。家族だろうと、支配されたくなかった。私は、お母さんの延長じゃない。私は私なのだから、譲れないことがある。
とことんやってやるつもりだった。
どうしても話が平行線なら、きっと、家を出ていくことだってあったかもしれない。
でも、それは、自分が選択するはずのことだった。
理不尽に、選択を奪われていいことでは、ないはずだった。
でも、その日、私は殺された。
……
ごめんなさい。
大嫌いと言ってごめんなさい。
大嫌いと言ったまま、二度と撤回できなくてごめんなさい。
自分のせいじゃないけれど、それでも、親より先に死んでしまってごめんなさい。
お父さん。お母さん。お兄ちゃん。真人。雪江。美登里。みんな。もう会えない。
『みんなを救いたいから』
あの声は言う。
『あなたたちの力が必要なの』
あの声は当然のように、傲慢を傲慢とも思わぬそれで訴える。
『私が守ってみせるから』
だから私の人生を捧げよと。
救う? 何様のつもり? それは、私の、私たちの人生を捧げるに足るの?
こんな終わり方ってあるの? こんなの私じゃない。私の顔じゃない!
気持ち悪い。私の手じゃない。私の足じゃない。視界が違う。
声が違う。何もかも違う。
私なものか。
わたしなものか。
このせかいはちがう。
許せない。
こんな世界認めない。
会いたい。帰りたい。ごめんなさい。ごめんなさい。大嫌いといってごめんなさい。
嘘なの。
本当は大好き。会いたいよ。お母さん。おかあさん。
お父さん、お兄ちゃん、助けてよ。この世界はいやだ。
赤の他人が私の家族だという。小さな子供たちが、私の友人だと名乗る。
違う!
私のお父さんとお母さんは、お兄ちゃんは、妹は、家族はたった一つだ!
お前らなんか知らない! 偽物のくせに。かえして! 皆を、私を、かえして!
あの女。絶対許さない。
帰りたい。かえりたいよお。
嫌だ。
ゆるさない。
憎い。
絶対、ゆるさない!
嘘。
謝るから。
だから。許して。
助けて。かえして。
お願い、かえしてよ!
かえしてよ――!!!!!
――ある転生者の少女の独白。