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ある ふうふの ねがい


 死なない。

 違う。

 死ねない。

 それは呪いじゃないか。






 ああ、そうだ、と実に軽い調子で『神』はつけ加えた。

 ――様式美、というのがあったな。

 ――付加(オプション)をつけるか?

 それは何、と彼女は尋ねる。

 ――特別な力。お前の好きなように。願えば全て叶う。

 ――代わりに。お前が連れて行く人間の。

 ――幸運が、お前の力となる。

  彼女は首を傾げ、そして笑った。

 ――皆の力を借りるのね! いいわ、お願い、皆、あたしに力を貸して!

 止めて。

 それは搾取だ。

 幸運を、失う? それってどういうこと。

 どうなるの?

 幸運を失ったら。

 その真逆は?

 不幸じゃないの?

 ――誰よりも綺麗で、ええと儚くって守りたくなるような容姿にして。黒髪でストレート、身長は155センチくらいがいい! 

 ――皆を守れる力。人を癒せる力がほしい! あと、守護とか、結界とか、えっとそれから浄化の力!!

 ――えっと、ロマンスも欲しいなっ、王子様と結ばれるの。あ、あたしだけを守ってくれる騎士様とか。

 ――聖なる獣とかに好かれて、私だけになついてくれるの!

 ――大親友がいて。

 彼女は楽しそうに、具体的に、そしてこれでもかと願う。

 止めて。

 止めろ。

 お前が願っただけ。

 誰から奪われるの?

 私は、何を失っていくの?

 この子、こいつ、頭がおかしいよ! 何なの。

 想像力がないの? 

 ああ、逆ハーレムですね。分かります。ああ、チートですね。分かります。俺TUEEEEですね、わかります。

 私もたくさん読み漁った。私オタクだもの。

 でも、それは。紙面で、自分に関係なくて。

 だからよかった。

 でも、これは!

 代わりに、私達は代わりに。

 失う。

 そして襲い掛かるだろう不幸は。災いは。

 いかほどのものになるの?

 ――いいとも。全て叶えよう。全て(まかな)われる。

 笑い含みに『神』は請け負う。

 まかなうのは、私達だ。私達から失われていく、搾取されていく!

 止めろ!!

 止めろ!!!!

 止めて!!!!!

 たくさんの悲鳴が聞こえてくる。

 皆、分からないなりに異常だと理解して、これから恐ろしいことが起こると本能で察して。

 必死に制止の声を上げる。

 だが、彼女には、聞こえない。

 聞こうともしない。

 だって彼女は想像力なんてない。

 誰かが幸運を手にした分だけ、誰かが不幸になる。

 お前が願った分だけ、私達が不幸になる。

 そして、私達は。

 彼女の絶大な幸運と引き換えに、たくさんの不幸を背負って、この世界へと。

 時代も。

 場所も。

 生まれも。

 何もかもばらばらに。

 切り刻まれて。

 心も体も記憶もぐちゃぐちゃにされて。 

 生まれなおした。

 あるいは。

 肉体はそのままに。

 突然投げ出され、悲惨の限りの目に合う。

 死にたい。死ねない。時が来るまでは!

 誰がどれだけの不幸を背負うかなんて。

 それこそ『神』のみぞしる。

 そして、その呪いは。

 恐ろしいその呪いを、知っているか?

 彼女へ、幸運を供し続けるために、『神』は一つの呪いをかけた。

 彼女が現れるまで、誰も死ぬことはできない。

 だって、彼女は、一番最後に現れる。

 それまで、私達は。

 苦しまなければならない。

 その幸運に見合うだけの不幸を。

 業を。

 捧げなければ、ならない。

 どうして忘れていたの。

 そう。

 だっておとうさんとおかあさんが。

 忘れさせてくれたの。

 あのひとたちは。

 わたしが あまりにも おそろしい ほしの もとに うまれたと なげいて。

 たくさんの ぎせいを はらって。

 わたしを まもって くれました。

 おうちから でては だめ。

 しんで しまう かもしれない。

 いいえ、しぬことも できない おそろしさ。

 なんて かわいそうな こ。

 わたしたちの ちから で。

 おまえを まもって あげよう。

 ながくは もたない けれど。

 わたしたちの いのちを ささげる。ふうふ ふたりの いのちを もって、うんめいの めがみ よ。

 めいかいの じょおう よ。

 まもってくれ。

 だから このこ を。

 さあ、おまえは。

 この うち から でたい だなんて おもわない。

 この むら から でたい だなんて おもわない。

 でるときは おまえを まもって くれる ひとと ともに。

 かわいい むすめ よ。

 かまってやれなくて ごめん ね。

 あいして いるよ。

 おまえの ことを 

 あいして 



◆◆◆



 自分の子供の悲鳴を我慢できる親なんているの?


 いいえ、私は我慢できない。



 これは十年以上も前のトンレミ村の話。フレデリカ・ウィルドは、紙のように白く青ざめた頬を絶望で濡らし、我が子をかき抱く。

 その我が子は。

 その我が子の両手の先は。

 ない。

 どこにもない。

 すっぱりと切断されて、血が止まらない。

「止めて。お、おねが、この、こ。を。たすけ、て。ねえ。たすけて。おねがい。おねがいぃぃぃぃいいいいいいいいい」

 フレデリカ・ウィルド。

 冒険者時代の二つ名は、鬼女フレデリカ。

 その彼女をして、豊かな黒髪をふり乱すにまかせ、これほど悲痛な声を出させた者は、その娘以外になかっただろう。

「あなた、あなたあああああ」

 フレデリカは泣く。泣いて、神官の夫を探す。

 彼女の夫は言葉を交わす間も惜しく、切断された娘の手を拾ってきて、ぴたりと切断面にくっつけると、必死に祈った。

「神よ、我が神よ。お願いです。お願いです。私達の娘をお救いください」

 必死に祈る。

 だが、その甲斐もむなしく。

「お、かあさん。おか……あ……。さ……ん」

 娘は虚ろな目でひたすらに母を呼ぶ。

 フレデリカは、必死に娘の張り付く髪をかきわけて、なでてやる。

「私はここよ。私はここにいるわ」

 それでも、娘は必死に母を呼ぶ。どこにも母親がいないと、すでに見えていない目で母を探す。あるはずのない両手でその袖を握ろうとする。

 フレデリカはわっと涙を流した。

「酷いっ、こんなの酷いっ、この娘が何をしたの!? どうして普通に暮らせないの? 守っているのに! 守っているのに! 目を離したら、ちょっとだけ目を離したら! 両手がっ なくなっ……うああああああああ!」

 初めてのことではない。

 娘が言葉を喋りだすか出さない頃から、ウィルド一家を災厄が襲った。

 落下するはずのないものが落下し、作動するはずのないものが作動し、彼らの娘は怪我を負い、そして、

 死んだ。

 苦痛を味わい、必死にもがき、死ぬ。

 それなのに。

「あああああ、こんなことってこんなことってないわ!」

 死んでも、息を吹き返す。

 その時、想像を絶する痛みが、娘の身体を襲う。その悲鳴は、その悲鳴は! はたで見ていられない。聞いているのが辛い。それでも目をそらさず、せめてそばにいるしかない。

 せめて私が代われたら! 

「駄目だ! やはり、祝福を受けつけない! この世界の神の加護がないとしか思えない! なぜ! なぜだ!」

 温厚なはずの夫が地面に拳を叩きつけて、悔し涙で頬を濡らす。

「業が……業の数値が、振り切れて測れないなんて。こんな幼子がなぜ? (むご)い、神よ、あまりにも酷すぎます!」

 彼らは、何の手も出せない。

 娘の身体が、自力で再生していくのを見守るしかできない。

「ジャック……あなた。やはり、邪法を使うしかないわ」

 フレデリカは血の気を失った顔で、それでも無理やりぎこちない笑みを浮かべて夫を見上げる。

「フレデリカ。奇遇だな。僕も同じことを考えていたのさ」

 生真面目なはずの夫は、にやりと笑って答えてみせた。

 私達って、なんて気のあう夫婦なのかしら、とフレデリカは乱れ髪のまま肩を震わせる。

「アズール・ココ。冥界と取引した邪法の魔法使いについて、トリエステに禁書があると聞いたわ。彼にならい、冥界と取引しましょう」

「僕のフレデリカ。同じことを考えていた。でも、もう一つ、手段がある。神と人の距離は遠い。願いが聞き届けられるか分からない。でも、亜神なら?」

 はっとフレデリカは娘の額を撫でていた手を止める。

「人から神へ至る中途の者なら……そうよ、業について適任の亜神がおられる。そうよ、カーシム・シルターン」

 その目に希望と絶望、半々がせめぎ合う。

「とても、年若い亜神だ。そして、業徳(カルマ)専門家(エキスパート)だ。その功績を認められて、亜神に末席を連ねることを許されたという。そして、とてもとても情に弱い人だったときくよ。だからこそ、未熟な僕の声を拾い上げてくれるかもしれない」

「ええ。あなた。なんでも試しましょう。できうる限りのことをしましょう」

「それでこそ、僕のフレデリカだ」

 夫婦は泣きながら、笑った。



 結果として。

 彼らの声は年若い亜神に届く。

 しかし、その亜神は困った顔でこう告げた。

 ――すまんね、俺ってむしろ人間に近いのさ。たった百歳ぽっちの亜神家業でね。

 ――だが、見捨ててはおけんよ。上司にお願いしてくる。とはいえ、冥界の領分だと思うし、きっと君らには、命を代価にしてもらわないといけないだろうなあ。お二人さん、覚悟はあるかい?

「ええ、覚悟なんて!」

「お願いです、娘を!!」

 ――困っちまうね。俺ってば元もと優柔不断な遊び人なんだよ。気ぃ弱いんだよ。そんでもできるだけのことはするからさ。まあ期待半々しててくれ。

 ――あとなあ、俺の見立てでは、その娘は、不自然に業をしょってるなあ。まあどんなヤブが見ても不自然か。

 ――いちばんいいのは、リセットさ。プラスとマイナスをなかったことにするのさ。

 ――お、上司から連絡きたぞ。ああ、やっぱりそうか。ごめんよ。申し訳ないが、やっぱりお二人さんの命がいるよ、すまんなあ。 

「いいえ、いいえっ 叶うなら!」

 ――いやー、いまどき見上げたご夫婦だなあ。軽くてごめんな。死んでも神様になっても性格は変わらんのよ。俺まだ半分人間だし。

 ――お二人さんよ、俺を挟んでもらったからには、ちょっとでもいいようにしてやりたいよ。まずは準備しておくれ。

 ――不自然な業と徳をゼロに戻そう。そして、その状態を固定する。ただし、永遠には無理だ。


「そんな……いいえ、かまいません。それでもいい、少しでも、少しの間でも」

 ――悪いなあ。この娘の業がはかりきれないのは、常に業が加算されているからだ。その加算も、とても大きな異界からの力で、手が出せない。

 ――その分を減らす法則を作ってやらなければならないが、死ぬまでなんていう期限のない固定は、新たに法則を乱す。異界の力で捻じ曲げられたものを更に捻じ曲げては何が起こるかわからない。

 ――とりあえず、条件つけで法則を誤魔化そう。期間を区切れば、なんとかなるはずだ。

 ――あとは、大人になったお嬢ちゃんに賭けておくれ。

「ええ。私達の娘ですもの」

「ああ」

 夫婦二人は手を握り合い、うなずく。

 ――この村を固定の器とする。期限はきっかり二十年。その年、来る時、来るべき者が来て、全てを再び『リセット』する。再び業は加算され、加速していくだろう。

「来るべき者とは? この娘はその時どうなります?」

 ――なあに、代わりに、もっと凄いのがやって来るさ。そいつが、君らの娘さんを助けてくれるよう、俺がそう運命を導こう。おっと、俺は人の心をいじくるのは嫌いなのさ。運命なんてものも実は嫌いなのさ。だから、来るべき者が、その機会を間違えぬよう、後押ししてやるだけだ。間に合わなかった、すれ違って、伝えるべきことを伝えられなかった、そんな後悔がないように、ちょっとだけ力を貸すだけさ。

 ――これでも奇運の亜神。カーシム・シルターン様だ。

 そんでもって、お嬢ちゃんの辛い記憶も代価としてもらっていこう。

「――ああっ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 ――止めてくれ。記憶はいずれ戻す。『リセット』されれば、あるべきところへな。あと、あのな、こんなこといっちゃなんだが、これも上司命令だよ。

「それはいったい」

 ――この世界の本来の古き神々は、大体今ぶち切れてるのさ。神々の代理戦争とは別に、異界の神が好き勝手ちょっかいかけてきたようでさ。過去も未来も運命が捻じ曲がってるらしい。それを正常に戻そうとそのお仕事の一環さ。恩に着る必要はないよ。

「いいえ、いいえ! あなたは必要以上によくしてくださいました」

「私達は、あなたに感謝しております」

 ――うわあ、止めてくれよ。俺もまあ、その娘の先輩だからさ、あ、これ独り言な。うん。

 ――それじゃあ、君らに『叡智』と『預言』を残していくから、君らの運命の日まで力を尽くしておくれ。

 ――人の世は人のもの。神は神。お互い節度を守って、自分の力で精一杯生きるんだ。そんでもって、辛いときは弱音を吐いて助けてくれって叫ぶがいいさ。そしたら、きっと人でも神でも誰かが気づいてくれるのさ。そんな生き方が俺は好きだよ。

 ――ま、意見を押しつける気はないよ。あ、これだけは言っておく。祈る時は、俺じゃなくて、運命の女神様にな。俺の上司なんで! でないと俺……うん、頼むよ。じゃあ、また会う日まで!






   *******







 あの時、と鈴木が口を開く。

「あの時、たくさんの、無数の人間がいました。そして、きっと、時代も、場所も、ばらばらに、ぐちゃぐちゃに、この世界に投げ込まれたのだと思います」

 アリアは息をつめ、手元を穴があくほど凝視しながら、ぐつぐつと煮え立つ頭で反芻した。

 時代も。

 場所も。

 ばらばらに。

 投げ込まれて。

「つまり、各地に残る日本文化の痕跡が、その先人達によるものだと」

「まあ、そういうことですね。あと、私は実際に転生者に会うのは、あなたで三人目になります」

 思わず、面を跳ね上げた。鈴木は表情を変えもしない。

「そのうち一人は、自分の境遇を不幸だともなんとも思っていませんでした。むしろ、私は非難されましたね」

「――? どういう」

「これは完全に推測なんですが。たくさんの人間がこちらに投げ込まれるにあたって、全員が全員そのことを理不尽に感じたり、恨んだりしたわけではないようなんです」

 にわかには理解しがたかった。

 意味が分からない。

「ある転生者に言われましたよ。『彼女の志を尊いと思う。失われる命を救おうとすることは、けっして悪いことじゃないよ。むしろ僕は彼女を応援したいと思う』と、ね」

 爆発するかと思った。

 頭が、爆発して、言い表せない怒りで、目の前がスパークするような、声にならない。

「選別、がなされたと思います」

 鈴木は恬淡として感情を乱さぬ声で告げた。

「彼女に賛同するもの。彼女を怨んだ者。そもそも最初の生贄選別の段階からきっちり分けられていたのか、あの『神』との対話の場面で各々の反応を元に選別されたのかは分かりません。サンプルも少ない。間違っているかもしれない。でも、多分、おそらく」

 鈴木はいいよどみ、それでも言葉を続けた。

「もしかすると、我々は、彼女に幸運を提供し続ける生贄というだけではなく、『悪役』としてこの世界に連れてこられたのかもしれませんね」

 ざわっと、足元から脳天に突き抜けるそれを、アリアは言葉にできない。

 そう、私は。

 わたしは。

 思い出していた。

 インクが白い紙に滲んでいくように。

 なめらかに。

 なだらかに。

 なんの違和感もなく。

 幼かった私の情緒不安定は。

 そう。

 『死』

 繰り返される痛み。痛み! 

 泣き叫び、のた打ち回り、わけの分からないままに肉体が再生されていく激痛。

 あのひとたちは、アリアを抱きしめ、たくさんの犠牲を払って、それこそ文字通り命を犠牲にして、私に『普通』の暮らしをくれたのだと。

 今、ようやく。ようやっと、アリアは思い出していた。

 それが。それが! アリアがあの馬鹿を怨んだから? そんな理由で、アリアは業を背負い、代わりにこの世界の両親が全ての重荷を引き受けて、命を捧げたと。

 そんな理由で。ちくしょう、そんなくだらない理由で!

「まあ、この辺はかなり推測ですね。裏づけとしては、その転生者は不幸補正がかかっていなかったし、彼女に賛同していた、という点です。業徳ポイントについて、彼の場合徳の方が高くてですね。因果関係はそのくらいしか思い浮かばなかったんです」

 ただね、と彼女は壮絶な微笑を浮かべた。

「私は、自分が『生贄』だろうが、『供物』だろうが、『悪役』だろうが、どうでもいいんですよ。気に食わない奴は叩き潰す。力が足りなければ血反吐が出るほど努力すればいい。それでも駄目なら志を同じくする仲間を作ればいい」

 私は、諦めない。

 そう、不屈の意思で少女は笑う。

 決して。きれいな笑顔ではない。

 憎しみと。怒りと。怨みと。人間が持ちうる負の感情を煮詰めてなお凝縮したような醜いそれら。

 そして、一かけらの挫けぬ鋼の意思。

 アリアは、気がつくと涙を流していた。

 『私達』は、尊厳を踏みにじられた。未来を奪われた。

 でも、『自分自身』は決して奪われない。それは『私』だけのものだから。

 醜くても、汚くても、けっしてほめられたものではなくても。

 その悲しみは。憎しみは。怒りは。絶望は。大事な大事な思い出は。

 全て、『私』を私たらしめる。

 それだけは、奪われない。奪わせない!

 もういい年をして、それなのに子供のように涙が止まらない。

「力を、貸してくれますか」

 いつの間にか、鈴木が立ち上がり、いまだふらつくような足で私の目前に立つ。

「至らぬ私に、力を貸してくれませんか」

 三白眼で、無表情で、毒舌で、尊大な少女の声は、どこか不安そうな響きをわずかに帯びていた。

 至らないのも、なんの力もないのも、そのことに胡坐をかいていたのも、アリアだ。

 なんて強い子だろう。なんて子だろう。

 ありがとう。

 あなたが、今、ここに。

 私の前にいてくれて、本当にありがとう。

 アリアは、泣きながら、彼女の手をとり、しっかりと握り締めた。




 ――契約は、成された。

 ――今をもって、『リセット』とする。


 ――あなた。

 ――あのこは、大丈夫かしら。

 ――大丈夫さ。僕達の子なんだから!

 ――ええ。そうね。きっとそう。

 ――僕達のかわいい娘。どうか、

 ――お前の幸せを、

 ――ふたり祈っているよ。


 



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― 新着の感想 ―
[一言] この話は、数ある小説のなかでも絶対に忘れられないひとつ。 何度か消えたり復活したりしてるみたいなのですが、完結後にまた読み返せる日が来ることを切望しています。
[良い点] アリアさんのご両親の愛情の深さに泣けます。
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