死ぬことも許されない
「お前は生きてくれ」
そう言って私を突き放した瞬間彼の体は長く鋭い刃に貫かれていた。
嘘でしょ。なんで私を置いていくの?なんで一緒に死なせてはくれないの「姫様早く」おいすがろうとする私の体を無理矢理引っ張る手をふりほどきたかった。でも、長年姫として過ごしてきたこの体にはそれに抗うだけの力なんてなくみっともなく泣きすがりながら担がれていくしかなかった。
「姫様さえ生きていたらまだ希望はあります」
代々受け継がれてきた隠れ家に身をよせる私に彼は言った。
国を復権させるのだと。民にいいようにされればこの国はいずれ滅びると。
けど、もうどうでもいい。私を愛してくれた家族も。私を愛してくれた彼もいなくなったというのに。国にいる民に殺されたというのに私は何故生き延びなければならなかったのか。
長年圧政をひき民を苦しめてきたのは父だった。それを変えたくて兄上達と手を取り合って頑張ってきた。その助けをしてくれる彼に出会ったのは色々と頑張ってた私達をすぐに結果が出せずにいた怒れる民達に虐げられてる最中だった。
「姫達はこの国の為に頑張ってるというのに何故認めぬ。こんな幼き子らを虐めるそなた達の為に必死に頑張る小さな命を何故虐げる」
偽善者と彼は罵られながらも私達姉弟を庇ってくれた。
力不足なのは分かっていた。悪の道をつきすすむ父上を諌めることもできずに数少ない私達を慕ってくれる家臣とともにこの圧政をどうにかしようともがき苦しんでいた。そんな私達を支えてくれた彼は私達の力不足のせいで暴徒とかした民達に殺されてしまった。
父上も殺された。弟も殺された!仕方ない事だでも我等一族のせいだから。
でも、彼は違う。一家臣にすぎなかった。
それなのに何故?父上に殺されそうになりながら民達の事を思い必死に働いてきた彼を何故殺さなければならなかったのか。
彼のもとに行きたいと何度も願った。そう思うたびに命を繋がれた。
彼よりいらぬ命だ。父上の権力に甘んじ悪役令嬢と蔑まれたこの命。
繋ぐ意味などこれっぽっちもないというのに
「姫様、お願いです奴の最後の望みです。生きて下さい」
私を助けたのは彼の一番の親友だった。最後まで彼と共に戦いたかっただろうに彼に託され私の命を救う役割にまわってくれた。
そんな事私は望んでいなかったのに。彼と共に逝きたかったのに。
いいだろう。私は許さぬ。私の大切な家族を、彼をうばった民達を私は許しはしない。
それから私は死にものぐるいで頑張った。国を建て直す。何年もかかった。未だ我等一族を憎む者達にも何も口を挟ませぬよう実りある国に建て直した。民達は掌を返したように私を崇める。
幸せになったであろう民達は私の大切な人達を奪ったことを忘れたように微笑んでいた。
それも今日で終わる。
幸せの最中に地獄に落ちる苦しみを味わえばよい。
隣国の密偵に情報は流してある。この国の命ももう終わりだ。
最後の晩餐は弟の好きだったかぼちゃのスープに彼の好きだった薬草のサラダだ。
最後の最後に彼との婚姻の義の時に飲もうととってあった酒に毒を混じえた。
やっとあなたのもとにいける。
喉の奥が熱く燃えたと同時に私の意識はなくなった