光るモノ
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「こんばんは!田中のおねーさん。」
「あら、誠君こんばんは。」
「グアムおあばちゃん!こんばんは!」
「いらっしゃいマコト、今日は一人?」
「うん優はまだ家で宿題やってるよ。」
ここは異世界生物研究所。
異世界の生物は便宜上モンスターと呼ばれているが何も敵対勢力というわけでもなく研究に協力してくれるくらいには安全な者も多かった。そのためモンスターの細胞などを利用して様々な研究が行われている。現在ここの職員は博士と助手の二人のみ。
博士はアメリカ人と日本人のハーフでどちらの国籍も持っている。髪は薄みがかった茶髪で初老に入ったばかりという感じ。助手の方は純粋な日本人で黒髪に丸眼鏡で助手
「モンスター届いた?」
「ええ、今日はスライム幼生よ。顕微鏡は田中さんが合わせてくれたわ。どうぞ——」
スライムはモンスターの中でも弱い部類で地球には餌となる魔力も少ないため環境破壊も無いモンスターで研究によく多用されていた。
「うおお〰〰〰〰!すっげえ……!むっちゃうねってるーっ。」
アメーバ以上に動き続けて脈動する小さくも強大な生命の活動。それが闊歩するのが異世界。
その予感を増幅させるには十分過ぎる程の感動。
「おばあちゃん」
「何、マコト?」
「俺さ異世界で未知のモンスターを解明するとか言っちゃたんだけど…………やっぱりまずは身近なモンスターを解明したいんだよね」
「どうしてなの?」
「だってさ身近にあるモノを解明させるには異世界にこの設備を持ってこないといけない気がするんだ。現地でここと同じくらいかそれ以上の設備を建てられたらこのスライムだって遥かに研究が進むっておばあちゃん言ってたよね。」
「言ったね。」
「だからこの設備を作るために異世界渡航者になるよ。」
思わず涙が出そうになったグアム。だがそれをぐっとこらえて笑顔のままでいた。彼女には子どもがおらず息子のように思っていた少年にその言葉を言われて感動していた。
「英語はおばあちゃんに習ってるから、後は建築関係の資格と自然科学系の大学を出て博士号をとったりすればいいらしいんだ。」
「そこまで調べたんだ。なんだか気が早いような気もするけれどマコトらしいかもね。」
「これだけは優に負けたくはないからね。」
誠の視線はより真剣なモノになり自分が成し遂げたいことを認知している大人のように感じられた。
「優より先に異世界に言って『グアム式異世界顕微鏡』を建てるよ。」
少し誠の言葉に驚いてしまっただけれどもここで私の言う言葉はこれしかないだろう。
「わかったわ。楽しみに待ってる。」
…
先ほどの博士が時の流れを楽しむように写真を見ていた。あれから15年はは立っていた。誠は異世界渡航者になっていないが優は有言を実行していた。けれども誠が準備をしていたことは知っていた。口では諦めていたがきちんと自然科学系の大学を出て博士号まで取っていた。だからいつかきっとまた目指してくれると解っていた。
それが現在再び目指そうとする彼が居た。これを喜ばしいと言わずして何というのか。それ以外の表現が見当たらない。自然と顔がほころぶ。
そうだ試しに彼らと演奏したCDを流してみよう。
「グアムおばあちゃーんこんばんは——!」
どうやら彼が来たようだ。
「おばあちゃーん、来たよー……」
さて今日はどんなことを話そうか。
…
私は、次の試験を受けるのかどうにも悩ましくてある恩師の元を訪ねることにした。
恩師と言ってもどちらかというと親戚のおばあちゃんに近い感じだ。偶々日本異世界ゲート研究開発機構に居た時に知り合った人だ。
「おお懐かしいな。『グアム式顕微鏡』!」
スッとその中身を見るとスライムの幼体が居た。
「おお〰〰〰っ」
「合わせておいたわよ。」
「………おばあちゃん……」
「いらっしゃいマコト。今日は一人?」
「……ああ優はDWAWで訓練中だよ。」
DWAWとはDifferent World Answer World、異世界の答えを世界のためにという意思のもとに生まれたアメリカの日本異世界ゲート研究開発機構のようなものでこっちの方が数段上を行っていて異世界渡航者になるにはまずここにまで登らなければならない場所だ。
他にもロシアに似たような組織はあるが日本にパイプが無い。
「お、なんか懐かしい曲が……」
「誠と優の演奏よこれ、あなたが久しぶりに来るっていうから懐かしくなって聴いてたのよ。」
曲は情熱大陸
バイオリンとピアノが印象的な曲だ。
「今お茶を淹れるわね。」
「それじゃあお茶を淹れる前に一つ話そうか。日本異世界ゲート研究開発機構の書類選考6666人中401人の中の一人になったんだ。」
「すごいじゃないそれに通るなんて!」
「……いや…俺は何もしてないんだけどね。」
「マコトの実力なら通るってわかっていたのねスグルは。」
「…………」
確実に優がかーちゃんに頼んでやったことだとは思う。けれど俺は迷っていた。
「じゃあ次は一次審査か……とても難しいわね。」
「…………受けないつもりなんだ。」
ポチャ
カップに紅茶が注ぎ終わる音がした。
「………どうしてなの……?」
気まずさが心を支配したが自分の意見を述べる。
「こう……砂糖みたいのサラサラ——っとね。俺程度の人間は振るい落とされるってわかってるから。残りの401人中2人か3人だよ。渡航者になれるのなんて、無理だよ。」
砂糖をカップに戻しながら私は言った。
弟・優の気持ちは正直すんごい嬉しかったけど……
このまま行くと兄貴の俺がお前の足を引っ張りかねない、いや違う引っ張てしまうんだ。
そのまま無言で紅茶を飲んだ。
「ねえ久しぶりにセッションしてみよっか。」
グアムはそんな提案をしてきたのだ。だけど私は
「ン〰〰〰……もう忘れちゃったよ。」
「ねえマコト、『ここにヴァイオリンがあります』
ヴァイオリンに目を向け
『ピアノもあります』
今度はピアノ
『リコーダーも太鼓も』
次々と目を向けていく
『ハーモニカもあります』
そしてグアムの言いたいことがようやくわかった。
『どれをやってみたい?』」
幼少時代の再現だ。
確かあの時私は
「全部!」
「ええ——全部やるの?」
「だって全部やってみなきゃ決められない。」
そんな記憶が蘇った。
「……」
「昔 マコトに聞いたら全部って言って全部の音を鳴らしていったのは覚えてるかしら?1時間かけてそれでその中でなぜかヴァイオリンを選んだのよ。どうして?って訊いたら。」
「この中で一番音が下手になりやすい。」
「そう昔のあなたってそんな子だったわ。なんにでもどんどん挑戦して難しいことを選んだ。」
「そうだったけどなんか光るモノが見えた気がしたんだよな。」
「それならそれでいいわ。今のあなたにとって光るモノは何?」
悟らせてくれたよグアムは
「さあヴァイオリンを持って音を出して。」
いつもそうだ。自分の出した言葉を見逃さずにいい意味の揚げ足を取ってくれる。
「上手くなくてもいいし間違っててもいい。だけれどもメロディーの元となる音を出さなくっちゃ音楽は始まらないのよ。」
全くその通りだよ。
そう思いながらヴァイオリンを手に取った。
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