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68話

「ふぅ──『蒼熱線』ッ!」

「『赤竜の光線(ドラゴ・レイズ)』ッ!」


 聡太がハルバルドに手を向け──蒼色の魔法陣が浮かび上がる。

 火鈴の口から炎が漏れ出し──炎が圧縮され、炎球へと変化。

 直後──聡太が蒼い熱線を放ち、火鈴が紅い光線を放った。

 空気を焼きながら迫る両者の攻撃は──だが簡単に回避され、熱線と光線が空の彼方へと消えて行く。


「う〜ん……人の姿だと、そこまで威力が出ないな〜……」

「────ッ!」


 ハルバルドが大きく嘶き──角の先端に雷が集束し始める。

 バチバチと放電をしていた雷は──やがて、小さな雷球へと変化した。


「──────ッッ!!」

「『第四重(フィーア・)絶対(アブソリュート)結界(・シルド)』っ!」


 ハルバルドの角から、雷の槍が放たれる。

 それに反応し、ミリアが黄色の結界を展開。

 雷槍と結界が衝突し合い──辺りに凄まじい轟音が響いた。


「くそ──ミリア!」

「数秒ほどしか持ちません! その間に、攻撃の準備を!」


 名前を呼ばれるだけで、聡太の聞きたい事を察したのか、結界を維持するミリアが声を上げる。


「火鈴! ハピィ! 時間稼ぎを頼む!」

「うん!」

「おー!」

「結界破壊まで……3、2、1、0──!」


 カウントが0になるのと同時、ミリアの【守護魔法】が粉々に砕け散った。


「【竜人化】ッ!」

「【瞬歩】──!」


 火鈴の皮膚が赤い竜鱗に覆われ──頭からは白く濁った角が、指先からは鎌のように鋭い剛爪が、背中からは竜の翼が生える。

 ハルピュイアの姿がブレ──ハルバルドの前に移動し、高々と足を振り上げた。


「【豪脚】、【硬質化】っ!」

「────ッ!」


 ハルピュイアの踵落としと、ハルバルドの角が正面からぶつかり合い──ドズゥンッッ!! と重々しい打撃音が響き渡る。

 だが──ハルバルドの角には、ヒビすら入らない。


「はぁ──!」


 火鈴が翼を打ち、ハルバルドの横腹を(えぐ)らんと剛爪を構えた。


「────ッ! ──────ッッ!!」

「きゃ──?!」

「うわ──?!」


 ハルバルドの体が強く輝き──その体から、白雷が放出される。

 ハルバルドの攻撃をまともに食らった二人は、苦痛に顔を歪めながら浮遊大陸へと着地した。

 ──そこでようやく、ハルバルドは聡太へと視線を向けた。


 ──緋色の刀身に白い雷が宿り、バチバチと放電をしている。

 続いて黒い炎が刀身を覆い──白い雷と黒い炎が混ざり合い、黒い雷へと変化した。

 《魔物を従える魔獣(ポーフィ)》との戦いの時に見せた、『付属獄炎』の能力を持つ『雷斬』だ。


「合体魔法──『裁きの黒雷斬撃(ジャッジメント)』ッ!」


 禍々しく邪悪な斬撃が、ハルバルドに向けて放たれる。

 当たれば即死の一撃は──だが寸前で躱され、聡太が鋭く舌打ちをした。


「チッ……! 早さが足りないか……!」


 ハルバルドの動きの前では、あらゆる攻撃が致命的に遅い。

 強い一撃ではなく、素早い攻撃を意識した方が良いか──そう判断し、聡太はハルピュイアに声を掛けた。


「ハピィ」

「お、おー?」

「フェキサーと戦った時に言った事、覚えてるか?」

「おー……動き回って攻撃するってやつだよねー?」

「ああ。今回の『十二魔獣』は、今まで出会った中で一番早い魔獣だ。いつも通り攻撃しようとしたら……簡単に避けられるぞ」


 刀を正面に構える聡太が──空いている方の手に、緑色の魔法陣を浮かべた。


「──『聖天』」


 新たに覚えた【特殊魔法】を使用し──火鈴とハルピュイアの体が、緑色の淡い光に包まれる。


「これは……?」

「新しく覚えた、回復効果のある【特殊魔法】だ。つっても応急処置程度の回復しかできないから、あんまり重い攻撃は食らうなよ」

「────ッッ!!」


 ハルバルドの体が眩く輝き──聡太に向かって駆け出した。

 近くにいたミリアを突き飛ばし──聡太は、瞬間的に怒りを呼び起こす。

 ──ドッグンッ!

 一瞬で聡太の全身に赤黒い紋様が浮かび上がり、背中に刻まれる『大罪人』の模様が明るく輝き始めた。


「はぁ──『三重詠唱・剛力』ッ!」


 【憤怒に燃えし愚か者】を発動し、三重強化による『剛力』を使用。

 光の速さで迫るハルバルドの顔面に、聡太は『紅角』を振り下ろした。


 ──ドギャオオオオオオンンッッ!!


 尋常ならざる衝撃を受け、浮遊大陸が大きく傾いた。


「う、くっ──舐めんなぁあああああああああああああッッ!!」


 刀を横に振り抜き──ハルバルドの突っ込む軌道を横へと逸らした。

 力任せに突っ込む道を逸らされたハルバルドは、だがその速度を落とす事なく、空を駆けて行く。

 ぐるりと空を駆け──再び、ハルバルドがこちらに角を向けた。

 ──また突っ込んでくる。それも、先ほどよりも助走距離が長い。


「チッ……! 『剛力』解除──『三重詠唱・黒重』ッッ!!」

「────ッッ?!」


 不可視の重力がハルバルドに襲い掛かり──ハルバルドの進行方向が、無理矢理下へ向けられる。


「ハピィ! ミリアを頼む!」

「おー!」

「火鈴!」

「うん!」


 ハルピュイアの鳥足がミリアを掴み、『迷子の浮遊大陸』を飛び降りた。

 火鈴が聡太の手を握り、翼を打って大空へと飛び立った。


「ぐ、くっ……!」


 ──三重強化の維持は、なかなかしんどい。

 数秒だけならば、簡単に三重強化を使う事ができるのだが──それを長時間維持するとなると、並み外れた集中力が必要となる。


「──ん……聡ちゃん」

「……なんだ、ここ……?」


 下へと降りながら──火鈴が、眉を寄せながら聡太に声を掛けた。

 『浮遊大陸』の真下──そこに、国があった。

 だが……建物は壊れ、かなり荒れている。


「『吸血国 アーデルフィード』……《死を運ぶ魔獣(ヘルムート)》が滅ぼした、『吸血族(ヴァンパイア)』の暮らしていた国です」

「おー……なんか、すっごくボロボロー」


 『吸血国』に着地し──地面に押し潰される、ハルバルドへと視線を向ける。

 

「────……ッ! ──────ッッ!!」


 力任せに立ち上がり、ハルバルドが大きく(いなな)いた。

 ……三重強化の『黒重』では、ハルバルドを殺す事はできない。

 しかも──


「『赤竜の光線(ドラゴ・レイズ)』──っ!」


 火鈴の光線がハルバルドに迫るが──『黒重』の影響を受け、地面に押し潰される。

 ……このままでは、こちらの攻撃も通用しない。

 それに、三重強化を維持する集中力も切れてきた……仕方がない──!


「『黒重』を解除するぞ! 攻撃準備だッ!」


 聡太が『黒重』を解除した──瞬間、ハルバルドが素早く四人から距離を取った。

 全身から眩い雷光を放ち始め──ハルバルドの体が、バチバチと放電し始める。


「──────ッッッ!!!」


 ハルバルドが力強く地面を踏み込み──雷が放たれる。

 美しい弧を描きながら、電光が聡太たちに迫り──


「舐めんなよ──『引球』ッ!」


 聡太が大声で詠唱し──聡太とハルバルドの間に、黒色の球体が現れた。

 あれはなんだ? と思った──次の瞬間、聡太の体が黒球に引き寄せられる。

 いや……聡太だけではない。火鈴も、ミリアも、ハルピュイアも、黒球に引き寄せられている。

 慌てて踏ん張り、引き寄せられないように堪え──ハルバルドの放った電光が、黒球に吸い込まれた。

 まるで、全てを呑み込むブラックホールのような──そんな事を考えている内に、『引球』が全ての電光を呑み込み、消滅させた。


「い、『引球』解除ッ!」


 このままでは、聡太たちにも被害が出る──そう判断し、聡太は『引球』を解除した。

 ……普通に使用して、この影響力。

 これを三重強化したら……一体どうなるんだ?


「ふぅ──『二重詠唱・剛力』ッ、『付属獄炎』ッ!」

「はぁ──ッ!」

「【硬質化】、【瞬歩】っ!」

「『全てを燃やす蒼龍(バーン・ドラグーン)』っ!」


 聡太と火鈴が腰を落とし──ハルバルドに襲い掛かる。

 ハルピュイアが【瞬歩】で距離を詰め、ハルバルドの顔面を蹴り飛ばそうと──するが、ハルバルドの角で弾かれた。


「ま、だまだ──【豪脚】っ!」


 ハルピュイアが地面に着地した──次の瞬間、ハルバルドの真横に現れる。

 放電し、ハルピュイアを吹き飛ばそうとするが──その時には、ハルピュイアの姿はなかった。

 と思ったら、ハルバルドの正面に現れ、その顔面を蹴り飛ばした。


「────……ッ!」


 ハルバルドがハルピュイアを睨み付ける──と、聡太と火鈴がハルバルドの目の前に移動し、刀と剛爪を振るう。

 慌ててその場を離れたハルバルド──しかし、その後を追い掛けるように蒼炎の巨龍が顎門を開いた。


「──────ッッッ!!!」


 電光の軌跡を描きながらその場を飛び退いた──瞬間、先ほどまでハルバルドのいた所に、蒼龍が噛み付いた。


「ふー! ふー!」

「いい動きだな、ハピィ」

「お、おー! ハピィのせいでここに移動しちゃったからねー! もっと頑張るよー!」


 どうやら、勝手に転移の魔法陣に乗った事に責任を感じていたらしい。

 いつになく真面目な顔のハルピュイアを見て──聡太が吹き出した。


「そ、ソーター? なんで笑ってるのー?」

「ああいや……お前が責任感じてるなんて珍しいな、って思ってな」

「は、ハピィだって悪いなーって思う事はあるよー!」

「……ったく……今さらそんなの気にすんな。お前が変な責任を感じて、無理して戦う方が怒るぞ」


 ハルピュイアの頭を撫で、聡太がお面の下で優しい笑みを浮かべる。


「……おー……」

「火鈴、ミリア。俺とハピィが早さで撹乱するから、機会を見て強力な一撃を頼む」

「うん!」

「はい!」

「──────ッッッ!!!」


 刀を構える聡太が、ハルピュイアと共にハルバルドへ飛び掛かろうと──して、グルンッ! と視線を別方向に向けた。


「──『紅弾(バレット)』」

「チッ──『魔反射』ッ!」


 突如、別の場所から詠唱が聞こえた。

 虚空に紅色の魔法陣が浮かび上がり──そこから、紅色の結晶で作られた弾丸が放たれる。

 狙いは──聡太たちと、ハルバルドだ。

 詠唱が聞こえた瞬間、聡太が『魔反射』を発動し──半透明な壁が、紅色の弾丸を跳ね返した。

 残る弾丸がハルバルドに迫るが──その場を飛び退き、ハルバルドが弾丸を回避する。


「……お前、何者だ?」


 突然の乱入者に、聡太が冷え切った声で家の残骸の陰に言葉を投げた。


「──はぁ……まさか、避けられるとは思ってなかったですよぉ」


 家の残骸の陰から姿を現したソイツを見て、聡太たちは驚愕に目を見開いた。

 ──血のように真っ赤な瞳に、美しい濃い青色の髪。口元からは鋭い牙が覗いており、背中からは蝙蝠(こうもり)のような黒色の翼が生えている。


「お、前……まさか……」


 聡太たちだけでなく、ハルバルドも現れたソイツを見て驚愕しているように見える。

 そんな四人と一匹を冷たく一瞥(いちべつ)し──現れたソイツは、名乗りを上げた。


「ボクの名前はアルマクス・エクスプロード。滅ぼされた『吸血族(ヴァンパイア)』の生き残りにして、誇り高き『紅眼吸血族(ヴァンパイア・ロード)』ですよぉ……アナタたち、ボクの国で何をしているんですぅ?」


 ──絶滅したはずの『吸血族(ヴァンパイア)』が、底知れぬ憎悪を宿した声でそう言った。

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