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18話

「──ん……」


 ──結局、【気配感知“広域”】に反応があったモンスターの気配は、全てゴブリン系統のモンスターだった。

 普通のゴブリンやホブゴブリンを統括しているゴブリンリーダーにも遭遇したが、難なく討伐できた。

 やはり、この層にいるモンスターは全てゴブリンなのだろうか。


「なんだ……この感じ……?」


 【気配感知】に、先ほどまでとは比べ物にならない気配が引っ掛かった。

 ……ゴブリンリーダー……? いや違う……もっと強い……オーガと同等……もしくはそれ以上の強者の気配──?


「……ここ以外は行き止まりだったから……この先に、次の層への階段があるのか……?」


 尋常ならざる気配の周りにも、モンスターを気配がある。

 相手は一匹だけではない……気を引き締め、聡太は迷宮の角から顔を出した。

 ──扉がある。それも、間違いなく人の手で作られた扉だ。

 だが──


「ブォォ……ォォォォォ……」


 ──扉の前に、両手に1本ずつ大剣を持った、デカくてゴツいゴブリンがいる。

 そのデカイゴブリンを守るようにして、ゴブリンリーダーやらホブゴブリンやらが待機している。

 あのデカイゴブリンは……確か……そうだ。ゴブリンロードだ。

 全てのゴブリンの頂点に君臨するモンスター。ゴブリンリーダーの最上位個体。

 かなり稀少な個体で、その実力はドラゴンとも並び立つとか。

 1対1なら勝てるかも知れないが……周りにいるゴブリンリーダーやホブゴブリンが厄介だ。


「やっぱ、こういう時は──」


 ──不意討ちに限る。


「“燃えろ炎。(われ)が望むは炎の槍”──」

「ブォォ──ォォォォォオオオオオオッッ!!」


 虚空に赤い魔法陣が浮かび上がった──瞬間、ゴブリンロードが雄叫びを上げた。

 その瞬間──バッ、と。その場にいたゴブリンの視線が、聡太の方に向けられた。

 ──気づかれた?! だが、俺が魔法を放つ方が速い──!


「──『ファイア・ランス』ッ!」

「ギャァ──ォォォアアアアアッッ!!」

「シャァァアアアアアアアアッッ!!」

「ギャギャアアアアアアアアアアッッ!!」


 炎の槍を放った──瞬間、普通のゴブリンが炎槍に向かって駆け出した。

 ──バカか、死ぬ気か?!


「アォッ──」

「グギッ──」


 次々と地面に沈むゴブリン──と、その死体を踏み越え、ホブゴブリンとゴブリンリーダーが聡太へと迫る。

 小さく舌打ちし、聡太は『桜花』を抜いた。


「しィ──ッ!」

「ギガッ──ッ?!」

「“隆起せよ大地──」


 ホブゴブリンの首を跳ね飛ばしながら、詠唱を続ける。


「──我が望むは土の壁”」


 詠唱を済ませ、近づいてくるゴブリンリーダーに手を向け──叫んだ。


「──『アースド・ウォール』ッ!」

「ブギッ──?!」

「ァゴッ──?!」


 ゴブリンリーダーの群れの足元が盛り上がり──床と天井に挟まれて、ゴブリンリーダーが一気に潰れ、圧死した。

 天井から降りしきる血の雨を浴びながら、聡太は口の端を笑みの形に吊り上げる。


「生き物ってのは弱いよなぁ……こんな簡単に死ぬんだから……なぁ、お前もそう思うだろ?」


 言葉が通じるかわからない相手に、通じるかわからない言葉を投げ掛ける。


「プゴッ、プギゴォォォッッ!!」

「アォォ……ォォォォォオオオオオオオオオッッ!!」

「グギャアアアアアアアアアアアッッ!!」


 雄叫びを上げるゴブリンロード。

 その声は、普通の者が聞けばメチャクチャな大声にしか聞こえないが──聡太には、意味のある言語にしか聞こえない。


『隊列を組んで、一気に攻め込めッッ!!』

『クソッ……うぉおおおおおおおおおおッッ!!』

『うらぁあああああああああッッ!!』


 ──【言語理解“極致”】。

 どんなモンスターの声だろうと、聡太には言葉にしか聞こえない。

 隊列を組むのなら、こちらも隊列を組んで迎撃すればいいだけの話だ──!


「“燃えろ炎。我が望むは炎の槍”『ファイア・ランス』」


 規則正しく並んだ赤い魔法陣から、無数の炎槍が放たれる。

 的確にゴブリンの群れの胸部を貫き、あるいは焼き尽くし……圧倒的な力を見て、ゴブリンロードが怯えたように低く唸った。


「おいおいおい、何ビビってんだ? 戦闘の実力なら、ドラゴンと同等程度って言われてんだろ? ……来いよ、ゴブリンの王様」


 ニイッと挑発的に笑い、刀の切っ先をゴブリンロードに向けた。

 ……配下のゴブリンは全滅した。これでもう、コイツは1対1で戦うしかない。


「ォォォォォ……ブギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 3メートルを(ゆう)に超える巨体から、大剣が振り下ろされる。

 対する聡太は──1歩も動かなかった。

 ──回避は不可能。直撃だ。

 勝利を確信したゴブリンロードは──ふと、聡太の表情が目に入った。

 その顔には全く変化がなく──ただ、邪悪な笑顔が貼り付いている。


「──その程度か?」


 振り下ろされる大剣に、聡太は刀の先を向けた。

 たったそれだけの動作で──大剣の軌道が逸らされ、聡太の真横に振り下ろされた。

 聡太の笑顔に気圧(けお)されたように、ゴブリンロードが数歩後退(あとずさ)る。

 それに合わせ、聡太が一気にゴブリンロードに向かって駆け出した。


「“隆起せよ大地。我が望むは土の壁”『アースド・ウォール』」

「プギ──ゴプッッ?!」


 迫る聡太を迎撃せんと、ゴブリンロードが大剣を構えた──瞬間、地面から斜めに盛り上がってきた土の壁が、ゴブリンロードの顎を打ち上げた。

 唐突の衝撃に、ゴブリンロードが一瞬だけ聡太から視線を外し──


「目を逸らしていいのか?」


 ──足首付近に激痛。

 何が起こったのか理解する前に、ゴブリンロードが仰向けに倒れ込んだ。


「いくらモンスターでも、アキレス腱を斬ったら倒れるんだな」

「プギゴッ──」

「うるさい、死んどけ」


 顔の横に立つ聡太を殺そうと、ゴブリンロードが大剣を離して拳を放つが──それより、聡太が喉元を斬り裂く方が早い。

 ビクンッ! と痙攣したかと思うと……ゴブリンロードが動かなくなった。


「……ま、こんなもんか」


 赤い布で刀身に付いた血を拭き取り、聡太は扉に目を向けた。

 ……見た感じ、(トラップ)とかはなさそうだ。


「さてさて……どこに繋がってるのか……」


 口の端を笑みに歪めたまま、聡太は扉を開いた。

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